第409話 ただのいなかじゃー、なか

ららちゃんと、なおなおちゃんの乗った

高森線ディーゼルカーは、鉄橋を渡ると



♪おてもやーん♪


のチャイムが鳴って。



なおなおちゃんは、くすっ、と笑って「テープ、伸びてる」


ららちゃんは「テープなの?ホント?」



朗らかなお姉さんの声で


ーーまもなく、長陽に着きますーーお出口は左側です。



と、シンプルなアナウンス。



ディーゼルカーは、料金箱と、運賃表示が運転席の横についていて。

そこだけみると、バスみたい。



豊肥本線でも見慣れているけど。




なおなおちゃんは「すぐだね」


ららちゃん「うん」



ホームが見えてきて。


運転士さんは、ホームの安全確認。


人はいない。でも、ゆっくりゆっくり。


排気ブレーキを掛けたまま。



しゅー・・・・・と言う、排気の漏れる音がどこかから響く。



運転士さんが、ブレーキ・ハンドルを動かすと



しゅー・・・と、そこからは空気の漏れる音がする。




車体が少し、傾いで止まった。




停止位置、よし!



指を差して、確認。




ドア・スイッチを手前に引く。



ぷしゅー・・・・と、ドア・シリンダから空気が抜けて

折り戸になっているドアが開いた。





なおなおちゃんは「あー、着いた」と、運転手さんに切符を渡して。

ららちゃんは定期を見せて。




すこし低くなっている、コンクリートのままのホームに下りた。


夕方にはちょっと遠いような、明るさ。




のどかな駅。周りは畑がいっぱい。

改札口は、昔のままの木の枠があって。


待合室には、近所のおばちゃんたちが「ららちゃん、おかえりー、おともだち?」と。

にこにこ。


手ぬぐいほっかむり、だったり。

麦わら帽子だったり。


野良着のまま。



ららちゃんは「ただいまー。うん、学校のね。クラスメート。奈緒美ちゃん」



なおなおちゃんは、ぺこり。「坂倉奈緒美です」


おばちゃんのひとり「おっきな子だねー、かわいい」と(^^)。



ららちゃんは「前にも来た事あるよ」


もうひとりのおばちゃん「そうだっけ・・・?そうかもね」



ららちゃんは「あの時は小さかったのかな」




さっきのおばちゃん「このくらい?」と、ひとさしゆびとおやゆびで。



ららちゃんは「そんなにちいさくなーい」と、にこにこ。



「さ、いこ?なおなお」と、ららちゃん。




なおなおちゃんは「うん、しつれいしまーす」



さっきのおばちゃんは「ゆっくりしといねー」



ららちゃんは「ふふ(^^)」



なおなおちゃんは「あの、ポスターみたいね」




ららちゃんは「ただのいなかじゃーなか?」



なおなおちゃんは、頷く。



ららちゃん「ただのいなかだよ」(^^)。


なおなおちゃん「(^^)」




畑の道を、とっとこ歩いて・・・・ごまたんのもとへ。




大きな木が、揺れている。

すこし風があるみたい。







友里恵たちは・・・その頃

杉河内駅に戻って、ふたたび。

豊後森ゆきに乗った。



今度は、黄色いディーゼルカー。



夕方だけど、まだ、都市から遠いので

空いている。



「愛紗たちに追いつく?」と、友里恵。



由香「どーだろ・・・。パティ、解る?」


パティは「どーだろ・・・・、友里恵、わかる?」



友里恵は「キミは乗務員だろ」と、笑う。



パティ「非番デース」




由香「そりゃそうだ。たぶん・・・無理じゃない?だってさ、1時間開いたんだから。

もう、大分行きだったら、出ちゃってる」



友里恵「出ちゃったの?」



由香「そっちへ持ってくな」



友里恵「ハハハ」


パティは「そっち?」



由香「いいのー。湘南の方言」



パティ「ハテ?」



友里恵「あそこは湘南かねぇ」



由香「まあ、どっちかと言うと相模かも」


友里恵「どすこーい」



由香「それは相撲」



友里恵「似てるじゃん」



パティ「似てますね。お相撲さん、おおきい」


友里恵「あれってさー、便器がお風呂サイズなんだって」



由香「キタネー話をするな」



友里恵「ハハハ」



由香「恥じらいを忘れたら女は終わりだよ」


パティ「ハハハ、友里恵可愛い」


友里恵「かわいーかなぁ」



由香「まあ、犬系だな」


友里恵「ネコ派だってば」



パティ「わんこのナース」



友里恵「そうそう。免許あるよ」



パティ「由香はメンキョ取りに行く?」



由香「ああ、バスのね」



パティ「愛紗も電車のメンキョ取りたいんでしょね」



友里恵「免許って言うか・・・・乗りたいだけみたいね」



由香「男の子みたいだね」


友里恵「乗りたがる」


由香「そっちへ持ってくな」



友里恵「ハハハ」



パティ「湘南の方言ですか?」



由香「・・・そうそう(^^;」



友里恵「湘南って、なんか平塚とかあっちのほうだよね普通」



由香「よくわかんない」



友里恵「ま、あんたが知ってるとは思わん」



由香「なら言うな」



友里恵「ハハハ」



友里恵「なんかサー、砂浜があって。夜になると族が一杯出てきて

ヴぉンヴぉン。ぱらぱらぱら・・・」




由香「オマエのイメージはなんか低俗」


友里恵「まあ、上品ぶっても仕方ない」



由香「そりゃそうだが」



楽しく話しながら・・・・・黄色いディーゼルカーは



かたこん、かたこん・・・・・のどかに

豊後森へと向かっている。


ゆーらゆら。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る