第380話 新人女子運転士

友里恵も、同じようにしてランボードへ。

プラットホームは駅舎側である。

普段、1番線はあまり使わない面白い駅で


島式のホーム、2・3番線を主に使っている。

臨時列車だし、機関車の入れ替えもあるから

頻繁に列車が発着する番線には停めなかったらしい。


駅は、蒸気時代のままの字体の案内看板や


シンプルな[1]と言う行灯のホーム表示。



理沙も、故郷、弘前の駅を思い出して懐かしい。


愛紗は、客車から菜由たちが降りてくると思っていたが・・・。


車掌の洋子が乗客扱いをしているのを見て 




客車に入ってみると・・菜由と由香が寝ていた(笑)。



愛紗は「あー・・・・」と、口あけて。



友里恵も、由香が寝てるのを見て「飲んだか」と、笑う。



理沙は、後ろからデッキに入ってきて「ああ、んじゃ、このまま寝かしておこう。

あたし回送するから。この後。」と。



友里恵は「ごめんなさーい」と(^^;



愛紗は、日田観光しようと思ってたけど。まあ、いっか。また来れば。

そう思いなおして「すみません。お願いします」



友里恵は「すぐ出発?」



理沙はかぶりを振って「入れ替えしてもらうから、その後。30分かな・・・・。」

と、仕業表を確かめて。



「そう、14時35分。帰りは普通の速度で走れるから。豊後森についてからお昼ね。

今、なんか食べてもいいけど」と。



愛紗は、その、ダイヤにあわせる感じを

路線バスみたいだ、と連想したりする・・・・・・。








東京駅からバス・プールに向かう美和は、12mの車体を振りながら右折。

新橋方面に500mくらいのところにバスプールがある。

そこで3時まで休憩で・・・3時半に東京駅から大岡山へ帰るダイヤである。


7時くらいには車庫に帰れるので、楽だ。



12m車は乗り心地がいいので、ふんわり、ゆったり。

雲に乗っているようだ。



アクセルを踏んでも、車体は反応せず、ゆーっくり加速。

船のようである。

ブレーキも同じだから、先の先を呼んで走らないといけない。




ひとつ先の信号が赤になるタイミングも読んでおかないと、ふんわりとは走れないし

急ブレーキ踏んだって停まらない。



「あの子、大丈夫かな・・・・」と、美和が思ったのは


大岡山に入った新人女子ドライバー、瀬川千秋のこと。


愛紗の代わり・・・ではないのだけれども、交替要員が多い方が楽である。

女子ダイヤには、余裕がなかったりする。






その千秋は、青いつなぎ姿で運転訓練を受けていた。

青い帽子。


小柄で愛らしい子。黒い髪は長くて、左で分けて。

今は、後ろで纏めている。


免許をとったばかりで・・・やはり、ガイドからの転身組。



森は「うん、上手い上手い。勘がいいねキミは」と、日焼けして

てかてかしているおでこで。


笑顔。


千秋も笑顔で「はい!」元気である。


いすゞエルガミオ、3472号。だいぶ古くなった。



車庫から、右折して・・・・回送ルートを市民病院に向けて加速。

急加速にはならない。

3472号はクラッチが減っているので、いきなりつながるが

その癖を上手く回避している。



次の信号は左折・・・・まだ、青であるが

横断歩道の信号が点滅しているので

千秋は加速をせず、停まる準備。



森は「そうそう。無理はしなくていい」


千秋は「はい!」と、にっこり。



黄色の信号になり、アクセルを戻す。

排気ブレーキを左手で。



しゅー・・・・。と、減速し

停止線のそばで停まる。



森は「キミも、やっぱり・・・・ガイドの仕事がなくなりそうだから

ドライバーになったの?」



千秋は、サイドブレーキを止める。

インパネなので、ひっぱりロック。


ぷしゅ。


ニューマティックである。



千秋は「いえ、なんか、乗ってみたくて。ドライバー不足だし。」



と、にっこり。森の方を見て。



森は「そうか」と・・・つい、少し前に同じような言葉を聴いたような

そんな気がして、愛紗のことを思い出した。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る