第369話 9001列車、豊後森、定時! 1300
その、ベテランドライバー佐藤は
市民病院までの回送ルートをゆっくり北上。
すれ違うバス。表示は「回送」。
左手を上げる。
いすゞエルガミオ、4053号。
新人らしき女子ドライバーが運転している
指導は・・・森だった。
森は、料金箱のところに屈んで、何かを話している。
佐藤は、微笑む「森さんも熱心だなぁ」
4053号が営業所に入ってきて・・・・野田は、窓越にそれを見た。
有馬に「また、女の子ですね。大丈夫ですか?」
有馬は「あー、うー、まあな。男よりいいと思う。今は」
野田は「そーですねぇ、男ってダメだな。ずるいことばかり考えていて。
まあ、タマと同期の奴らでもそうだけど。
ああいうのは、出て行って欲しいよ」
それは世相である。
ずるい人が得する世の中だから、ずるく生きる。そういう世の中になった。
だけど、バスはそれじゃダメだ。
安全は避けて通れない。
有馬は「あー、うん、女の子の方が立派だな、そこは。
まあ、深夜は出来ないが。」
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豊後森駅の1番線。
待機しているディーゼル機関車、DE10 1205に
理沙は乗り込む。
友里恵に「後についてきて」
友里恵は「ハイ」
理沙は、ランボードにステップから登る。
ホームからだと楽だ。
機関車の後ろ。
梯子2段。ひょい、と登って。
機関室のドアを開けて「こっちに座って」と。右側。
結構狭い、きっちり機械が詰まっている間に
横向きに緑のモケットが張られた椅子がある。
目の前には、操作用の操縦桿みたいなものが。
機関車の前、後ろに向かって窓。
円の形に、窓がくりぬかれているように見える。
友里恵は「これ、なに?」
理沙は「ワイパー」
友里恵は「へー。クルマのは棒だけど。」
理沙は「これも棒だよ、動くとこは」
よーく見ると・・・そんな感じ。
友里恵は「結構見づらいね」
理沙はにっこり「じゃ、あたしはしたくするね」と・・・
反対の運転席に。
エンジンは既に掛かっていて、アイドリング。
ごー・・・・と。61L、12気筒エンジンが
長いボンネットの中で回っている。
ゆらゆら・・・と、車体が揺れる。
そろそろ、時刻である。
出発信号機は、青だ。
信号、よし!。
左手で確認。
機関士なので、軍手でいい(^^)。
結構、汚れることもある。
ブレーキ・ハンドルがふたつ。
機関車単弁は上、左に出ている。
編成は、下、右。
トロッコ客車では、既に乗降は終了していて
小さなドアを閉じ、車掌、洋子は
白い手袋で、手をあげて。駅長に合図。
ホームに出ている駅長は、列車無線で
「9001列車、発車」
理沙は「9001列車、発車」
と、ダイヤを指差し確認。13時。
警笛を鳴らす。
ちょっと悲しげな響きの空気笛。ふぃー・・・。
クラッチを接続。
編成ブレーキ解放、機関車単弁を、少し送らせて解放。
ノッチ、1。
再度、確認。
出発、進行。 9001列車、豊後森、定時、13:00。
エンジンが、ごーぉ・・・・と回る。
制限、45!
DE10 1205は、ゆっくり走り始める。
ノッチ2.
ノッチ3.
ノッチ4.
燃料が増加する。回転がゆっくり上がる。
ぐい、と・・・足もとから引き出される。
すぐに、ノッチ1へ戻す。
重みがあるので、慣性がついて
トロッコ編成と、乗客を乗せて・・・味覚トロッコ列車は
ゆっくり、ゆっくり。
理沙は、後部を振り返り「後部よし!」
信号を超える。
かたこん、かたこん・・・客車は静かである。
トロッコ車両は、もともと貨物車なので・・・
結構、硬い乗り心地。
人が乗っている程度では、バネが沈まないようだ(^^)。
レールの継ぎ目を、どん、どん・・・と、乗り越えていく。
景色はいいけれど。
ゆーっくり、走るくらいがせいぜい。
菜由は「けっこう、腰に来るね」
立っている洋子は「客車の方が、乗り心地はいいです」
立っているとそうでもないらしい。
文子は、「こちらへどうぞ」と・・・客車へと
菜由を招いた。
客車の、デッキドアを開くと・・・・
普通の列車で。「ああ、これなら・・・楽」と、菜由。
かたん、かたん・・・と。レールの音も遠く響く。
愛紗は、ビールとお菓子、菜由の分も持ってきて
「こっちにする?」と、にこにこ。
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