第347話 ももちゃんとクレープ

お馬さんが、馬車の支度をするので・・・。


かっぽ、かっぽ。

太い足。おおきなひづめで

馬車のところへ歩いていった。



友里恵は、お馬さんに「あとでねー」


と言って。


おとなりの、ももちゃんのお家へ。



ももちゃんは、呼ばなくても



ももちゃんのおうち


と、書いてある小屋の前に立って。



みじかいしっぽを振っていた「わん!」



小柄、真っ白。細身。


短い毛。



元気。



ひもが首輪についているので、ひっぱられて立っている。



友里恵は、とととと・・・と駆けて行って。


「はい!」



クレープ。生クリームが巻いてあって。



ももちゃんは、最初・・・・



じーっ・・・と、クレープを見て。おはなで、ふんふん。


なんでしょ?と、首をかしげている。




「おいしーよ」と、友里恵が言うと。



ぱく



クレープをかじって。


はぐはぐ。


ぺろり。



「わん!」



友里恵は「よしよし」と、ももちゃんを撫でて。「おいしかったー?」


にこにこ。



「わん!」






そかそか。今朝は、これだけー。またねー。と。



堤防にあがって。



ももちゃんは「わんわん!」と、お見送り・・・・。




由香は「イヌ年だろ、オマエ」



友里恵「そーだったかなあ」



由香「ハハハ」



友里恵「ゆかとおんなじじゃん」



由香「あれ?何年だっけ」



友里恵「由香はサル年だろ」



由香「オマエと一緒だって」



友里恵「じゃ、イヌ年だ」




由香「そーだったかなー」


堤防の上を歩いて、KKRの裏から入る。



友里恵は「今日は、どこ行くのかなー」



由香「さあ・・・ツアこん愛紗が張り切ってるんじゃない?

遊ぶぞー、って」



友里恵「なんか、想像できないなぁ」



由香「ホント。初めからなんとなく・・・背負ってる感じだったもんね」







その愛紗は「そうね。きょうは、トロッコ列車添乗で日田だから。

日田を見て回ろうか」


菜由「来るとき、素通りだったものね。古い町があるんでしょ?」



愛紗は「そう。巡回バスでね。丘の上のビール園も行けるし。

川沿いを歩いたり。鄙びたいい町よね」



と、楽しそう。



菜由は、その様子を見て


・・・良かったな。



と、思った。






深町は、その頃・・・・。


東京駅で新幹線を降りて、山手線に乗り換えていた。

西日暮里で、地下鉄に乗換え。

それで、本郷3丁目まで。



どの道混んではいるけれど、乗車時間が短いし

意外と、東京駅から山手線で上野方面に行く人は少ないから

いつも座れた。


この日も。時間が早いのもあるが。


中央線で、御茶ノ水まで乗り・・・

新御茶ノ水で乗り換える方法もあった。


いくつかのルートを知っておかないと事故の時に困る。


東京は、日常的に事故があるのだ。

比較的安全なのは、山手線だった。




電車に揺られながら、思う。



研究は面白い。

しかし、人間関係とか・・・・諸々があって


バス・ドライバーのような、ひとりでする仕事の方が楽しいな、と

思う事もあった。




「いまの研究が終わったら、戻ろうかな」なんて思ったりもする。





回想する。



担当のバス、いすゞLR。

8000ccOHC、6気筒。145psの低い排気音。

低速でよく粘るエンジン。


リーフ・スプリングなのに、エアサスのような乗り心地。



大きなステアリング、ゆらゆら。


シフト・レバーはフロアから生えていて、ぷらぷら。



軽いクラッチを踏んで、左に寄せて 2 にシフト。

もっと左に寄せると1だ。



アイドリングでクラッチを離す。


すぅ、と走り出す強力なトルク。



「客が乗っていなかったら楽しいドライブだけどな」と・・・。

実際、昼間の郊外便はそういう感じだった。



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