第345話 普通列車

理沙がお部屋に戻ってから、由香は「なんで、一緒に行こうって言わないの?」


と、優しく尋ねる。平らなパンケーキを、なにもつけずにかじっている。


友里恵は「うん。理沙ちゃんは運転するんだもん。ちょっとの間でも休みたいんじゃ

ないかなーって。」



ともちゃんはにっこり「やさしーね」


友里恵は「うん、あたしも帰ったら乗務員だし」



さかまゆちゃんは「お気遣い、ありがとうございます」と。


パティは「そっかー。わたしは休みだからいいけど」


友里恵は「CAだと運転しないし」



それもあるねー、と。パティは笑った。



ゆっくり、ゆっくりごはんを食べる友里恵は


ともちゃんと、さかまゆちゃんに合わせてるみたい。


うすーいクレープに、生クリームがついている。

それを、お箸で持って。ひょい。



由香は「お箸だと食べやすいね」



友里恵は「うん。原宿なんかだと手で持ってるもんね」






ともちゃんは「原宿って、行ったことないなー。」



友里恵「うん。あたしも」



みんな、楽しそうに笑う。







その頃・・・・肥薩線上り特急「あそ」に乗務しているまゆまゆちゃん。

自由席のお客さんの検札。


端っこから。


デッキのドアのところで、お客さんに向かって、お辞儀。


緑の腕章は、左腕。



 乗客案内

STEWARDESS


と。


黒いスーツ。スラックス。

気持も凛々しく。



お客さんは、まばら。



人吉から行くのは、急ぎの用事がある人くらい。



窓の外は、緑の川。球磨川が、水一杯で。なみなみ。




「失礼します」と、ひとりひとり、乗車券を見て。

特急券にスタンプを押す。


挟むタイプのスタンプで。


人吉車掌区

ありがとうございます


と、ある、まるいスタンプが

かわいくて好きだったり。する(^^)。



真ん中へんの、川沿いの窓際に乗っているおばあちゃんに・・・。


まゆまゆちゃんはお辞儀をして。


おばあちゃんは、ぽわー・・・と。切符を渡してくれたけれど


特急券が無かった(^^;



まゆまゆちゃんは「あのー、特急券は・・お持ちですか?」


おばあちゃんは、おミミが遠いみたいで「へ、お餅?ああ、あるよ。はい」



風呂敷の包み、お膝に置いて。包みを解いて


「はい、ひとつあげる」



こんがり焼けた、磯辺焼。海苔がついてて。



まゆまゆちゃんは「ありがとね。おばあちゃん」


おばあちゃんは「ふふ」と、にっこり。にこにこ。





「まあ、いっか」(^^)と。


お餅を持って・・・・乗務員室に戻る、まゆまゆちゃんだった。



「まだ、あったかいな・・・・」(^^)。







同じ頃・・・・恵は

鹿児島本線下り、普通列車の車掌。


検札はないが、ひと駅、ひと駅。


停止位置。

ドア扱い。

客扱い。

信号確認。

安全確認。

時刻確認。

乗降確認。

ドア、閉。

安全確認。


これを繰り返す。



結構、忍耐である。


駅によって、ホームの長さも形も違う。

信号の位置も違う。


その他に、乗客案内。


難しいのはドア扱い。


閉じようとすると、人が乗り降りしたり。



「こら!やめろ!」と、怒鳴りたくもなるが(笑)。


忍耐忍耐。


止めろと言われるとやりたくなるのだ(笑)。




♪止めろって言われてもー♪


と、踊りたくもなるが。



「いいなぁ、CAの方が」なーんて思う恵。


まあ、いつかは運転士になるのだろう、けれど・・・・それまでのガマン。

ふつう、3年くらいの修行であるから・・・・。


「23で運転士かー」順当にいけば、であるが。


その日を夢見る、恵であった。



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