第298話 夢見る天使さん

でも・・・まゆまゆの空想する「未来のお婿さん」と言うか


ボーイ・フレンドも、よくイメージできない。




「なんでだろ?」と、思いながらも・・・。




列車は進む(^^)。




鹿児島本線、下り。


夕方の熊本駅を、急行「球磨川4号」は、走って行く・・・。


ダイヤ通りなら、6時過ぎには人吉に着くだろう。








「裕子さんは、人吉から折り返しですか?」




と、まゆまゆ。






裕子は「そう。これの折り返し」




殆どカラに近い、上りだが。




そういう乗務は、楽だ(^^)。






「運転に行くんですか?」




と、まゆまゆ。なんとなく。






裕子は「そう。だって、車掌よりいいよー。客扱いしなくていいし。


鉄道だから事故はまあないし」






と、平然と言う。








まゆまゆは「そうかな・・・」と思うけど


そうかもしれない、なんて思ったりもした。






お兄ちゃんみたいになれるかもしれない。


そんな思いも少しは、あったかも(^^)。

















特急「ゆふDX」は、大分駅を定刻に発車。


5番線ホームには、先刻着いた赤い客車列車。


ディーゼル機関車が引いていて。




来るときに乗った、と友里絵が言って、喜んでいた。






愛紗にとっては懐かしい、客車列車だけど


神奈川ではまあ、見ることはない。




寝台特急は通るけど、普通列車で客車、と言うのは。




とても珍しかった。






すれ違うように6番線から。


右手には、留置線。沢山の電車や客車が一杯。




その中には、これから東京へ行くブルー・トレイン「富士」の付属編成もあった。


鹿児島からくる本編成7両の後ろに、この7両を連結するのだった。


☆のマークの個室寝台。




愛紗は「ああ、帰る時が近づいたんだな」と・・・・旅愁に駆られる。




不思議なもので、まだ2日もあるのに。




2泊三日の旅なら、これから始まるくらいのスケジュール。




帰る旅って、どうして淋しいんだろな。






そんなことを思いながら。スレートの機関庫の横を通り過ぎた。




DE10や、ED76が姿を見せている。


工事用のディーゼルカーが、黄色く塗られて留置されている。






右カーブを、ゆっくり揺れながら「ゆふDX」は、私鉄のような狭い線路脇を


すり抜けるように走っていく。






制限45!






と、運転士は二階の、見晴らしのよい運転台で、標識を指差し確認している。










友里絵が「さかまゆちゃんの妹もバレー部なんだって」と、パティに。




パティは「うん、知ってるよー。」と、にこにこ「国鉄に入ったらバレー部だな」






さかまゆちゃんは「奈緒美は来ないでしょう。国鉄向きじゃないもの」と。






ともちゃん「賢い子だもんね。大学行くんじゃない?」






友里絵「じゃ、大卒=>国鉄で、バレー部のエースふたり!」






菜由「アタック25!」




由香「それはクイズだよーん」






ハハハ、とみんな笑って。




愛紗が「ナンバー1でしょ」




友里絵が「**X攻撃!」




由香「**を付けるなって」




友里絵「ハハハ。」




菜由「それは、違う番組だってば」




さかまゆちゃん「いなずまサーブ!!!って、わたしも中学の時に


やりました。」




友里絵は「うん、上手かったもの、さっき」






ともちゃん「ホントにいなづまになるの?」






さかまゆちゃん「なんないなんない」と、首振って。






「ゆふDX」は、少しづつ市街地を離れて。




賀来、なんていう駅を通り過ぎる。




大きな博物館のような建物が見えて。






パティは、静かにおねむ・・・・。






友里絵は「あ、寝てる」






白い肌、ブロンドの髪、ふわふわ。


長いまつげ。


すっきりした、おはな。




きゅっとした唇。






思わず、唇を寄せたくなる。






由香は「天使みたい」






友里絵は笑いそうになっちゃうけど、天使さんが起きちゃうので・・・




「しー。」










菜由は「朝、早いからなぁ・・・。」



















少し暗くなってきて・・・




「うー、さぶっ」と、恵は自室、タワーマンションの7階の部屋で


目が覚めた。




ひなたぼっこしてて、寝てしまったのだった(^^)。






♪これじゃ体にいいわけないよ♪(^^;とか歌いながら。






「なんか食うかな」と、冷蔵庫を見たり。








「・・・・・X。」






便所に駆け込んだ。






・・・・じょぼじょぼ、じょぼっ。(^^;






気楽である。






「ふー。やっぱいいね、ひとりは」






同棲、なんてメンドいものを


どうしてしたがるのか、理解不能な恵だった。






「結婚もそうだけどサ」






なりたくても、なれない車掌職。




なのだから、そんなメンドクサイものの為に


職を捨てる気にもなれなかった。






「それが本音・・・まあ、歳取って辛くなったら、働かないで食っていける


主婦もいいかもしれないけど・・・」




なんか、そんな日は来ないような気もしている。






それくらい、車掌の仕事は魅力があるのだ。




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