第286話 却下!

EF81-137の運転台で、お兄ちゃんは・・・

快調に鹿児島本線を下っていた。


久留米、通過! 定刻!



本線上は、特急列車も来るので

それほどゆっくりとは走らない。

ブルー・トレイン回送なので、荷は軽い。


本線、進行! 速度、110!


速度計は、110にぴたり。


空気圧計は、緑のゾーンを示している。

架線電圧計は20kv。


電動機電流計も低い位置で揺れている。



ブレーキハンドルを握りながら、ふと回想。


幼い日・・・そういえば。

いつも、真由美がついていたっけ。



夏休みだったか。


「いってきまーす!」と、麦藁帽子、ランニングシャツ。

出かける時。




「おにいちゃーん、あたしもいくー」と、ついてくる真由美だった。



ひまわり模様のワンピース。襟が白くて、大きくて。


夏帽子はふんわり。 赤いリボンが巻いてあって。



にこにこ。まんまる。




「おかあさーん、真由美がついてくるってー!」




母は「おにいちゃん、面倒見てあげて」




渋々(^^;



「しょーがないなー、じゃ、いっしょにいこう」と。


真由美はにっこり「うん!」と、こっくり。


手をとって、ゆっくり歩いて・・・。






そんな事もあった。






「年がちょっと離れてるからなぁ」

5つ違いって、微妙だった。



高校生になった頃、真由美ちゃんはかわいい盛りで。


そういう真由美を、妹とは言え可愛がっていると・・・

なんとなく、ステキな気持だった。



幼いんだけど、可愛いくて。

面倒見てあげないと・・・って思ってると情が移るし。



「なんたって、おしめ変えてたしな(笑)。」




妹と言うより娘みたいな気持、はんぶん。



「あいつが不幸にならなきゃ、いいけどな」


もう、真由美も大人である。いつまでも・・・このままじゃ。いけないよな。

可愛いけど。



マスター・コントロールを戻し0。


電流を絶つ。



回路オープン。滑らかに滑走する・・・24系25系、ブルー・トレイン編成である。






その頃もまゆまゆは、ご飯を食べてから・・・。

人吉駅に戻って。



事務室に入る「入りまーす」


駅長さんは「ああ、真由美ちゃん、お帰り」と、にこにこ。

父とも兄とも顔見知りなので、安心。



「お兄ちゃんは、今頃・・・下りかな、鹿児島本線。137列車だね。」と、

駅長さんは調べてたり。


まゆまゆは、ちょっと恥ずかしい「ありがとうございます」と、お辞儀したけど

お兄ちゃん好きー、が。駅長さんにも知られていて(^^;




ちょっとはにかむ、まゆまゆちゃん。


駅長さんはにこにこ。可愛い真由美ちゃん、と、思う・・・。



「熊本で、待ってれば会えるかもね」と、にっこり。





宮地駅を発車した特急「あそ」3号は、坂道を下っていた。

運転士は直結2段にギアを固定し、排気ブレーキ。


床下でエンジンが、ごー、と唸る。



4号車、最後尾車両では・・・パティが「じゃ、お掛けください」と。

デッキから車室に案内。



木曜とあって、割りと空いている。6人って半端だけど。



真ん中へんの8席、廊下挟んで4つ、ふたつ。


友里絵は「よいしょっと」ペダル踏んで椅子を回す。


由香は「おじさんの頭にぶつけるなよ」



友里絵は「同じギャグはつかわなーい!」(^^)。



菜由「なはは」



結構な下り坂。大きな木が左側にあってカーブ。


綺麗な住宅が見えた。



深い森に進むよう。



さかまゆちゃん、ともちゃん。

南側の窓際。


廊下側に友里絵。「へっへー」と、にこにこ。


北側の窓際、愛紗、菜由。

由香は廊下側、友里絵の斜め前。


・・・・さて、由香は誰の隣でしょう?


・・・なーんて、数学の問題じゃないので(^^)そういう事は言いませんけど。






「じゃ、たーべよっか」と、友里絵。



特急なので、肘かけのところに引き出しテーブルがある。

引っ張り出して、くるり。

回すと、テーブルになる。



「どーなってんだろ、これ?」と、友里絵は裏側を覗いてみて。




由香「頭いい人が考えたんでしょ」



友里絵「ちげーねぇなぁ」



さかまゆちゃんは、にっこり笑って「時代劇みたいですね」


由香「好きなの、最近、友里絵。時代物」



菜由「桜吹雪が見えねーかぁ」


友里絵「同じネタは却下」



ともちゃん「おもしろーい」と、笑う。


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