第270話 友里絵のアイコラ

お兄ちゃんは、と言うと・・・。

福岡貨物ターミナルについて、愛機ED76を下車した。

勿論、列車はこのまま本州に向かうので、運転の交替。


「異状なし」と、笑顔で言いあい。敬礼。

儀式である。


知ってる機関士なので「日光君、ブルトレ回送だってね」


お兄ちゃんは「そうなんだよ。客車は初めて」



彼は「特急に回るのかな」



貨物の機関士でも、旅客列車を牽引する事もある。

電車とは、違うから。




お兄ちゃんは「なーんだかなー」と、お笑いみたいな事を言って。


携行品を持って、降りた。


ひょい、と軽快に。

ここはターミナルなので、ホームがある。


ホームがないときは、道床、砂利が敷いてあるそこに

梯子で降りるので

結構大変だ。



なので・・・貨物の運転は比較的若手の仕事で

年を取ると、自然に旅客の方に回されたりした。


寝台特急「はやぶさ」「なは」等々。


鹿児島ー門司なので、昼間だから楽である。



普通は老練の機関士が担当するが、年齢が行くと

健康の問題で、突然、欠乗、なんて事になったときの用心に

若手の養成。それも必要である。



空車回送なら、どうと言う事はない。



「荷物の軽い貨物だな」と、お兄ちゃんは軽い足取りで

客レ回送。その前に中間点呼である。


機関区に向かった。





「27列車、日光、到着致しました」と、機関区で。


区長は、にっこり「ごくろうさん」。


午前のこの時間は、ひと休み、と言う感じ。

貨物列車は皆出かけていて、午後から明日の準備。そんな時間だから

運転指令も、交替でお昼休み、そんな時間帯。



区長は「あ、帰りだね。ブルトレ回送ね」


とはいえ、列車番号は客車ではなく貨物の列車番号なところから

貨物扱いであるらしい。


「貸切の返却かな」なんて、お兄ちゃんは思う。



帰りは132列車である。



お兄ちゃんは「132列車・・・は折り返しですね。」



折り返し休憩である。


機関士は2時間交代、休憩を挟むことになっている。



これはバスも同じだが、折り返し待機も休憩扱いであるところが異なる。

待機だと、車両についていないとならないからだ。



転動防止と言って、車両が動かないように見張る。


それで、バスの運転手は

おかずパンとか、そんな食事を取ったりする。




「あー・・・」。お兄ちゃんはノビ、をして。

駅にある休憩所に向かった。


「なんか食うかな」食堂もあるので、一休みしてお昼だ。






高森線の友里絵は「そっか、真由美ちゃん、淋しいね」

と、ケータイの画面をみながら。


列車は揺れる。かたこん、かたこん・・・・。



由香は「友里絵のお兄ちゃんに縁談があったらどう?」

と、優しげに。



友里絵は「あー、出てってくれるとせいせいする」

笑う。


菜由は笑って「ふつう、そうだよね。あたしも弟に言われたもの」




愛紗「大岡山に来るときね」



菜由「そうそう。」




友里絵「じゃ!真由美ちゃんの為に工作しよう!」



由香「破壊工作か」と、笑う。



菜由「どうするの?」



友里絵「お兄ちゃんには恋人が居るって、ニセ恋人を作る」



由香「えー?どうやって?」



友里絵「かんたんかんたん」と、友里絵は、愛紗の写真を探して。



「これ、この人がコイビトーって。やれば。愛紗もさ、そういえば

おとーさんに結婚させられないで済むよ。一石二鳥」



ウェディングドレスの写真に、愛紗の顔をくっつけて「アイコラ」なんて。


由香「うまいなー。オマエ。アイコラで稼いでたろ」



友里絵「そんなことするくらいならコンビニでバイトなんかするか」


由香「そりゃそうだ」



愛紗は「なんであたしなの?」と、笑う。



友里絵「この中じゃ、一番お父さんウケしそうだから」



菜由「なるほど・・・・・。」




かたこん、かたこん・・・高森線ディーゼル・カーは

阿蘇下田駅に着く。



♪おてもやーん♪ の、オルゴール。

テープが伸びてて、なんかユーモラス。



ーー間もなく、阿蘇下田、阿蘇下田ですーーー。

と、にこやかな女声のアナウンスで。



お城みたいな駅。



温泉があるんだけど、きょうはちょっとパス。




しゅー、しゅ、しゅ。


運転手さんがブレーキを掛けて。列車は停まる。



友里絵は、真由美ちゃんに写真メールを送って「この人がコイビト」って事にすれば(^^)


と、半分冗談でメールを送った。


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