第267話 高森駅に

「まだスイカは獲れんのぉ」とは運転手さん。


のどかーな。農家のおじさん、と言う感じ。


友里絵は「そうだよねー。西瓜ドロボーなんて出る?」



おじさんは「んにゃ、ぎょうさんあるからのー。わからん」



と、ドアを閉めて「走るよ」(^^)。


あ、はいはい、と。友里絵たちは席についた。




由香「お金払ったっけ?」


友里絵「忘れた」



運転手さんは「あー、いい、いい、そんなん。町営じゃきーの。

ボランティアじゃ」



愛紗は「運転手さん、大分ですか?」



運転手さん「よーわかったの」



愛紗は「はい。言葉が、なんとなく」



運転手さん「あんたは宮崎じゃろ?」



愛紗「はい」


運転手さん「なんとなくな、話し方がそうじゃと。。ハハハ」と。


KKR南阿蘇が、遠ざかっていく。

友里絵は、振り返って「また、来るからね」と、つぶやく。


菜由は「いいとこだったね」


由香「うん。のんびりしてて。静かだし」



ここは国立公園の中なので、民家がない。

そういう辺りもあって、夜は無音。灯りもない。



リゾート、と言う言葉によく似合う。


下り坂をしばらく下って、高原道路に入った。

左折して、昨日とは反対側に向かう。


昨日は右側から来たのだが。


牧場があったり。運動公園があったり。

公共施設はあるけれど、民間の施設がない。



「さすが、国立公園」である。




しばらくはしって、左カーブを逸れて

細い道に入る。



前はなかった、この高原道路。

細い道をゆっくり、バスは走って

あのKKRに向かったのだった。



交差点、昨日見かけた三叉路を右に曲がると

結構な急坂。


時間が半端なのもあって、乗降客はほとんど居ない。

高森駅の少し前、お肉屋さんの前を曲がって

ふれあいセンター、と言う公民館のような所で

転回。おばあちゃんが2人、乗る。


雨はほとんど上がっている。

ぱらぱら。



「はい、到着」と、おじさんが言い、前扉を開けた。


ぷしゅ、と・・。空気シリンダの音がして

かわいいバスの前扉が開いた。



「あ、着いたね」と、友里絵。


ありがとうございました、と、由香。



おじさん、にっこり。



菜由も、ありがとうございます。



愛紗も、お辞儀。ありがとうございます。


で。「わたし免許あるんですけど、使ってもらえますか?」



おじさんはびっくり「あんたが?いやいやー、勿体無いねぇ。

あんただったらガイドの方が」と言うと、菜由が


「この子、ガイドだったの。で、免許とったからドライバーに」



おじさんは「あー、女の子だったらいいかもなぁ。町営だけだと

給料安いけど、なぁ。パートタイムくらいで。

会社に電話したら。使ってくれるよきっと」と、にこにこ。



友里絵は「よかったね」と、にこにこ。



ほんじゃ、と、ドアを閉めて。


おじさんのバスは、駅前のSLがある広場で

ぐるっと転回、また、元来た道を戻って

役場の方へ行くのだろう。



菜由は「ここだったらセクハラもなさそうだし。いいんじゃない?」

と、和やかに話す。


愛紗「うん。」と、にっこり。ドライバーを続けるなら、と言う前提だけど。


ここは違う会社だから、東山は辞めなくちゃならないけど。


今まで世話になった大岡山の人たちの思いに、添わなくては、と

思ったりすると・・・

なんて考えたり。



小雨、ぱらぱら。


高森駅の中に入る。


昨日と同じで、お菓子とか、お土産がいっぱいあって。



友里絵、にこにこ。


由香「昨日買ったろ」



友里絵は・・・待合所のところにいた、大きなゴールデンちゃんに


「よしよし」


お座りして、ながーい舌だして。息が へっへっ・・・。


楽しそう。


立ち上がると大きいので、友里絵のほっぺを、ながーい舌で、ぺろり。



友里絵は「きゃ、これ、やめれ」


ゴールデンちゃんと戯れている。



菜由は「友里絵は犬かいな」



由香「ネコ派だって言ってたけど、犬に好かれるね」



愛紗「たまちゃんは?」



菜由「ああ、猫の?・・・どこだろ」



駅のどこかにいるのか・・・でかけているのか。



由香「あ、いたいた。 たま、たまー。」と、呼ぶと


にゃんこの たま、 は・・・。


のーんびり歩いて、友里絵の側に来た。


けど、ゴールデンちゃんも別に、吠えたりしない。



「仲良しの猫もいるんだね」と、菜由。



由香「ウマがあうって言うけどね。犬か、こりゃ」



と。


みんな、笑った。


駅のアナウンスが。「10時35分、立野行きは駅舎の前、1番線です」



と・・・言うか。

折り返しなので、1番線しかない。



由香「ほれ、友里絵、乗るぞ」


友里絵「うん。じゃ、ゴールデンちゃん。ばいばい」と。


ゴールデンちゃん、よしよし。として


ホームの方へ。


たまちゃんも一緒に。



霧に煙る鋸岳は、少し晴れて来たみたい。



高森駅は改札がないので、そのまま乗る。

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