第241話 2761D,立野、定発!

CTC司令室に行ってみると・・・。まあ、ディスプレイを見る分には

遠くから解る。


構内の地図のようなものが、ディスプレイに映っていて。

どの列車がどこにいるか。

今はGPSもあるので、解り易い。

カーナビの大きいようなものだ。


それを遠くから見てきた恵は

帰ってきて。


「貨物列車はもう着いて、出たみたいね。」と、静かな表情。


真由美ちゃんは「じゃ、お兄ちゃんは機関区にいるのかなぁ」と・・・。


司令室の前にいると、真由美ちゃんを知っている職員が


「なに?どうかした?。あ、お兄ちゃんか?・・・・。ちょっと待って、聞いてあげる。」

と、優しいおじさん。


そこにあった電話で。「あー、わたし、機関区?あのさ、日光くんは帰ってきた?・・・。

あ、そう。そうかー。うん。解った。ありがと。」


おじさんは、済まなそうに「ごめんねー、お兄ちゃん、明日出勤になっちゃったんだって。

それで、ちょっと行路の確認してるらしい。いつもと違う仕業だから。超勤。ごめんねー。」


と、おじさんが悪いわけでもないのに。


真由美ちゃんは「ありがとうございます」と、丁寧にお礼を述べて。


でも、がっかり・・・。


恵は「ざんねんだねー。でもサ、あたし、温泉行くから!一緒に行って?ね」

と。真由美ちゃんを気遣って。


真由美ちゃんは「すみません。わたしの為に」と。その心遣いが嬉しい。

ので、淋しがってちゃいけないな、と・・・・。


恵は「真由美ちゃんの為じゃないのよ、私が温泉行きたいの。」(^^)「じゃ、着替えてくる


からー。」と、少女のように。


ロッカー・ルームへ向かう。真由美ちゃんも一緒に。



携行品は車掌区ロッカーに置いてきたので、私物バッグだけ。身軽になった。



女子更衣室はフロアが別なので、階段で2階へ。


ドアーは引き戸で、最近の傾向でバリアフリーよろしく大きい、ステンレスの持ち手が付い


たから、開けやすい。



「荷物持ってると、足で開けられるのよ」と、恵はおどける。



うふ、と、真由美ちゃんも笑顔になる。

明るい気持になる。





クリーム色のカーテンが下がっていて、中が見えないような工夫がある。

まあ、見えるところで着替える人はいないけれど(^^)。


恵は、中に入って右手の、奥の方にある自分のロッカーの鍵を開けて。

事務的なロッカーより、ちょっと広いのは制服が入るからで・・・。


ロッカー室の入り口の左手に、大きな籠があって

制服をクリーニングに出せるようになっていて

乗務員の負担を減らせるような気遣いがある。


下着も出せそうだが、出す人はいない(^^)。


さっさと着替えて、髪を解くと

優しい感じの印象になる。


「さ、行きましょ?」と、恵は

自分のランドリー・バッグに制服を入れて。

籠に置いた。



「はい」と、真由美ちゃん。


薄緑のフロア、壁。

どことなく、電車の内装に似ている。

その辺りも好ましいと、真由美ちゃんは思ったりしながら

廊下を歩いて、1階に下りた。


事務室から駅構内に出て、鹿児島本線ホームへ。


下り列車に乗って、人吉へ・・・。





ノラ猫と一緒に、高森線単行は

立野を発車する。


駅員が、ホーム安全確認。と言っても、一両だから確実である。



ぴーぃっ。と、笛を吹いて。

一応、カンテラを上げる。

明るいホームだから、見えるけれど。


運転士は、ドア・スイッチを下ろす。


ぷしゅー・・・・。と、空気シリンダの音がして

ばたり、と。

バスのような折り戸が閉じる。


運転士は、笑顔で駅員に挙手をして。

駅員も挙手。



ぷあん、と

昔の国電のようなクラクションを鳴らして。

運転士はブレーキ・ハンドルを緩める。左に戻すのだ。


ギアは、先ほどから変速段に入っている。


エンジンが、がらがらがら・・・・と。音が大きくなる。

ブルドーザーかな、と思うような音。


車両は割りと軽いらしく、軽快に動き出した。


ごーぉ、と回転が一定になり・・・。

上り坂を、ゆっくりゆっくり・・・。


ごっとん、ごっとん・・・・。レールを踏み締め、踏みしめ。


古い枕木が沈む。レールが撓む。

その継ぎ目を、味わうかのように車輪が乗り越えていく。


結構な上り坂を、ディーゼル・カーは進む。


猫は、のんびりと寝ている。ヘッドライトがあるので

温かいらしい。




  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る