第206話 bus stop

ただ、飲酒が良くないと言うわけでもないのだが

法律で禁止されている、と言うだけ。


大岡山でも、飲酒で解雇になったドライバーは居るが・・・

人柄がよければ、また復職できる。


そんなものである。


以前、大学線で

スクーターレースに巻き込まれて、貰い事故をした深町を救援に行った

ドライバー、和田もそうだった。


アルコールチェックに引っかかり、2度、謹慎、解雇になったが

また復職している(^^)。


人柄である。



しかし・・・・同じことをしても

狡猾なドライバーは復職できない。


そういう正義があるのが、この業界である。





真由美ちゃんは、食堂に入るなり「おばあちゃーん」と、ステンレス張りのカウンター、

キッチンとの境界で、上が食器棚になっているのか

よくある学生食堂みたいな、その空間から声を掛けた。



おばあちゃんは「おー、来たか。じゃ、出すね」




お料理を幾つか。


見栄えのするお料理ではなく、一品。ふつうの家庭料理だが

旅を続けていると、それが嬉しい。



かぼちゃの煮物であったり。

たけのこの煮物。


鯖の煮付け。

お味噌汁。

コロッケ。とんカツ。

お刺身。


ごはん。



きんぴらごぼう。

そういう、ふつうの家で食べるようなごはん。



友里絵「いいなぁ。なんとなく」


由香「お昼に、食べたご飯もこんなだったね」


愛紗も「旅すると、お茶漬けが食べたくなるとか・・・そんな感じ」


菜由「いろいろあるね。ほんと」



デザートなのか、夏みかんが剥いてあって

なつみかんの皮の上に載っている。


友里絵が「おばあちゃんが、よく、こうしてくれたっけ」


由香「うれしいね」


菜由「帰りたくなっちゃったなぁ」


愛紗「帰る?」


菜由「石川がかわいそう」



愛紗「そっか」



まゆみちゃんも、にこにこ「いただきまーす」


友里絵も「いただきまーす」


みんなで、いただきまーす。



食堂は、木のテーブル。たぶん、作りつけなのか・・・・

かなり年季が入っていて。


床も、しっかりした材木だ。


合板を貼るタイプではない。



友里絵は、コロッケをお箸で「コロッケさん、いただきます」と。

首をかくかく。


由香は「ロボットころっけさんか」


友里絵は、お箸を持つ手も、かくかく。


菜由「落っことすよ」


友里絵は、真面目な顔で。でも、コロッケは落っことさない。


島倉千代子の顔マネ。


真由美ちゃんが、笑顔「似てる似てる」


ついで、友里絵はお箸をマイクの代わりにして

左13度に傾いて。


五木ひろしの顔真似。



愛紗が「笑わさないで、ふふ」

お味噌汁を噴出しそうになる。



真由美ちゃんが「あ、コロッケさんか!」



友里絵は「コロッケさんを頂いちゃったから」


「今夜は、真由美ちゃんを頂いちゃうぞー。」


真由美ちゃん「イヤです」



友里絵は「ふっふっふ・・・処女の生き血・・・。」

と、変な顔。


由香が「いーかげんにしろ!」と、後ろ頭をはたく。



友里絵は「平らになったぞー。」と、振り返る。



バス停で待つ仕草。


由香「バス・ストップか。平浩二な。」


浴衣をめくり、太もも出して。


由香「セクシー・バスストップかい。オマエがセクシーか?」(^^;



愛紗「懐かしいね。えーと、誰だっけ。オリエント・エクスプレスだっけ」



真由美ちゃんは「そういう列車があるんでしょ?」



たくあん食べながら。


菜由「あ、なんか・・・日本にも来たみたいね。豪華列車ね。

ななつ星みたいな」


真由美ちゃん「そうなんですってね。見てみたかったな」


愛紗は、ごはんを頂きながら・・・。

「鉄道好き?」



真由美ちゃんは、たくあんを食べ終えて。こりこり。

「はい。なんとなく・・・家業でもありますし。詳しくはないですけど。

国鉄に入るんだろうな、って。ちいさい頃からそう思ってました。」





友里絵は、コロッケとごはんを食べていて。



「どんぶりみたいにすると、ダシが出ておいしー。」と、おしょうゆをちょっと掛けて。



由香は「関西人かいな」



友里絵「そなの?」



菜由「そうそう。なんだっけ、天ぷらうどんとご飯頼んで。

天丼+うどんにして食べるって。」



真由美ちゃんは「合理的かもしれない・・けど、野菜足りないかも。」



友里絵は「さすが。栄養まで考えて」


真由美ちゃん「えへへ」と、ちょっと恥ずかしげに。お味噌汁を。


お味噌汁は、麦味噌。

この辺りではよく麦がとれるらしい。


大分も、麦味噌が多かった。

白味噌で、甘みがあって。





愛紗は「ななつ星に乗務の機会とかあったら、乗る?」



真由美ちゃんは「いえ・・・・あの列車は、特別なので。私達とは違う

人たちが乗務しますけど・・・たぶん、乗らない。」




友里絵「疲れそうだもんね」


真由美ちゃん「素直に、そうですね」(^^;



由香「バスツアーでも、そういうお金持ちとか、企業のエライさんとか。

逃げたいね」




友里絵「まあ、あんまり大岡山には来ないけど・・・。」



菜由「あの、ほら。丘の上のあるコンピュータ会社とか。大学の先生とか」




愛紗「そ・・・れは、貸切はあんまりないけど。運転手さんが嫌だって言ってたね」




友里絵「そうそう!それでね。その大学の講師が、車内で騒ぐんで

運転手さんが注意して。トラブルになって。

その人は辞めちゃったんだけど」



由香「ああ、あの話」



真由美ちゃん「そういう事があるんですね。鉄道ではあまり聞きません」



友里絵は、でも笑顔で「その講師がね、タマちゃんのバスで騒ぐんで

タマちゃんは

「お静かにお願い致します」と言ったんだって。」



菜由「それで?」



友里絵は得意そうに「その講師が怒って

「生徒の前でそういう事を言わないでほしい」と言うので


タマちゃんは


「生徒の前で、悪い事をして開き直る方が良くないでしょう、教育上。

人の迷惑になってはいけない、と言う事を教えるのが教育なのでは?」






由香「いいね。」



愛紗「よく言ったね」



真由美ちゃん「私達も・・・いいたいことは時々ありますね」




菜由「それでどうなったワケ?」




友里絵「何も」



菜由「その講師、会社にクレーム入れなかったんだ。」



由香「一応、講師だから。そこまではアホじゃなかったらしい」



真由美ちゃんは「列車ですと、そこまでのことはないですね。

外から良く見えるし、駅を通りますから。

新幹線などの方がよくあるそうです。」



愛紗「なーるほど・・・車掌さんも大変だ。駅員がいいかな、やっぱり」




菜由は「ははは。そうかもね。逃げられるし」


ちょっと愛紗が変わってきたかな、なんて思って。

すこし安心する菜由だった。


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