第201話 人吉温泉

川沿いには堤防があって・・・わんこのお散歩に、と思いきや

意外に、そういう人は少ない。


「犬とお散歩してないね」と、友里絵。


真由美ちゃんは「あ、虫が多いから・・・。

TVでなんだか、言ってましたね。日本一蚊が多い街」と。



愛紗「じゃ、さっき、網戸開けたら大変だったわね」


友里絵「大群が押し寄せて。まっくろ」



菜由「こわ」



友里絵「まっくろくろすけでておいでー」



真由美ちゃん「あ!好きですー。トトロ。かわいいですね。まんまるで」



友里絵「ねー。その辺に居ないかなぁ」




由香「いつか、あえるかもしれないよー」と、長閑なおじさんの声で。


友里絵「おとうさーん」と、抱きつく。



由香「やめろ、きもぃ」と。「なんにでも抱きつくなぁ」




菜由「タマちゃんにも抱きついたし」



真由美ちゃん「タマちゃん・・・・って、ああ、わたし、あざらしちゃんかと思った。」


友里絵「あざらしちゃんは会ってないもん。会ったら抱きついちゃうかも。

来るときね、熊本駅で降りて、くまモンちゃんに抱きついてこよー、って思ったの」



真由美ちゃんはにこにこ「あのくまモンちゃん、おおきいですねー。2mくらい?」



菜由「ふわふわだね」



愛紗「ちいさい子がタックルしてるけど」



由香「友里絵はちっちゃいもんなぁ」




友里絵「ははは」




由香「アタマもな」



友里絵「小顔でしょ」



由香「でもなー、地図読めないし」




友里絵「まあ、なんとかなるさ。見てりゃわかるって」




菜由「ごはんの前にお風呂、言ってこよっか」


友里絵「そだね」


愛紗「真由美ちゃんも寄ってく?」



真由美ちゃん「そですね。わたしは職員なので大丈夫です」



友里絵「いーなぁ。愛紗、やっぱ国鉄にしなよ、東山辞めたら」



菜由「そーゆーことで決めていいのか?」




愛紗「いいの」



菜由が愛紗の顔を見て「へー。気が変わった?」



愛紗は「そう。わたしは変わったの。」



友里絵もちょっと驚いた。「そーなんだ。でも、いい事だよー。」




由香が「愛紗はさ、ちょっと考えすぎだもんね。頭いい子ってそーだけどさ」


友里絵「あたしなんか、頭ワリーから考えたことないもん」


由香「いいなぁ」


友里絵「いいでしょ?」



みんな、笑う。楽しいね。



真由美ちゃん「お風呂は、温泉でーす」と、にこにこ。



菜由「人吉温泉、だもんね」


愛紗は「川沿いの平らなとこに、よく出るね」



友里絵「ヨーデルね」


由香「来るか?」



友里絵「♪らーばらーばらーりほー♪」


由香「裏声がヨーデルな」


友里絵「上手い!座布団2枚。おーい山田君」


由香「♪ちゃっちゃかちゃかちゃか、ちゃっちゃ。ぱふ♪」



菜由「続くなぁ」


真由美ちゃん「よくアドリブでできますね」




愛紗は「やっぱり、芸人むきかな」




菜由は思う。愛紗は、だんだん・・・・心が解れてきていて。

旅って、やっぱりいいものだな、と思う。



前は、愛紗は「芸人むき」なんていわなかったもの。


そう・・・思う。




203号室から、みんなで出て。


部屋にあった浴衣で。

真由美ちゃんも、スペアで(^^;


隣が205号室なのに、友里絵は気づく。


「なんで204がないの?」


由香「ほら・・・4って死に読めるとか。9が苦だからとか。」



真由美ちゃん「ありますね。整理券にも4と9が無いとか」


友里絵「えーそーなの?」



菜由「そうね。特に・・・大分とか宮崎とか、あっちの方」


友里絵は両手を下げて「ひっひっひー」


由香「危ないおじさんかい」


友里絵「ちがーう。ユーレイ」



由香「そんなデブなユーレイいるかい」



友里絵「いるじゃん、Qちゃんとか」


真由美ちゃん「あー、見てました。かわいいですねー。」


友里絵は「そうそう。口がでっかくて。よく食べて。大雑把で」


由香「友里絵だ」



みんな笑う・・・・あははは。


友里絵「あたしってオバケだったの?」



由香「オバカだろ」


友里絵「たしかに」



さっきの階段じゃなくて、乙女向き(^^)階段を下りて。


フロントの裏から、廊下を通って

川の方へ、少し下る階段。

半地下みたいな感じの、岩風呂。



「良かった、丸見えじゃなくて」と、菜由。


「誰も見ないよ」と、愛紗。



「使用済みはね」と、菜由。



愛紗「そんなこといってないって」


ははは、と、みんな楽しく笑う。





塀が高いので、景観は良くないけれど

堤防沿いだから、覗かれるよりはいい(^^)。



脱衣場で、みんな浴衣を取って。

ラタンの籠に。


「これ、なつかしーね、なんか」と、友里絵。



「プラスチックが多いものね」と、菜由。


友里絵は、ラタンの籠を背中に

♪じゃんじゃかじゃかじゃーん♪と、エアギターで、ぼそぼそ。フランス語っぽい

鼻声で(^^)


足組んで。



由香「エマニエル夫人か」



菜由「ふっるー。」



愛紗「見たこと無いけど」



真由美ちゃんは、静かに浴衣を取って。


するりとした白い裸体は、柳のようで。

天使のよう。


友里絵は、ぱっ、と飛び起きて。


「かわいー」と、抱きついた。


真由美ちゃんは「きゃっ!」とびっくりして、飛びのいた。


友里絵は、傍らにあったラタンの籠の塔に、飛び込む。


由香「はははは」


真由美ちゃんは「あ、あの・・・ごめんなさい。びっくりしちゃって」


由香「いーんだよ、なんにでも飛びつくんだから、友里絵は。大丈夫かー。」



友里絵「だいじょーぶだぁ~~ぁ」突っ伏したまま。


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