第147話 旅くらしはいいな

「あ、バス来たね」と、菜由。



「来た来た。友里絵ー、置いてくよ」と、由香。



友里絵は、まだラブラちゃんとじゃれている。

大きなラブラちゃんなので、立つとしゃがんでいる友里絵より大きい。


「それじゃ、まったねー。」と、友里絵は立ち上がって。

ラブラちゃんは、シッポぐるぐる。ついてくる。



「あ、きょうはもうおしまーい。またね」と、友里絵が言っても

くっついてきて。



「懐かれちゃったね」と、愛紗もにこにこ。



「飼い主さんいないのかな」と、菜由。



「いないはずはないと思うけど・・・」と、友里絵。

こんなに大きなラブラちゃん、綺麗だし

野良ちゃんだと言うこともなさそう。



「放し飼いかなぁ」と、菜由。



「そうでもなさそうだけど・・・・」と、友里絵。



バスが来て、ドアが開いて。機械式ブザーの音が、ツー。



愛紗、由香、菜由。乗り込む。


友里絵が乗ると、ラブラちゃんも乗ってきちゃう(^^)



「あ、ほんとにダメだって、お家帰れなくなっちゃうって」と、友里絵が

ラブラちゃんを表に出そうとすると。


ラブラちゃん、さみしそう。 しっぽをだらーん。下むいちゃって。



愛紗が「駅員さんに聞いてみよう」と、降りようとした。

マイクロバスの運転手さんが、降りてきて

「あ、この子。時々見かけますね。・・・・近所の子みたいだから。」と。

駅員さんに聞きに言った。



駅員さん、今朝のおじさん。「今度はどうしたの・・・?ああ、この犬ね。

時々、駅前で誰か待ってるね。駅で預かるよ。おいで!」と言うと


ラブラちゃんは、駅員さんに付いてった。

友里絵の方を振り返りながら。






「中犬ハチ公かな」と、友里絵。



「字が違うって」と、由香。



「あ、そーだっけ?」と、友里絵。漢字苦手だー、とかいいながら。



「犬に好かれるね、友里絵ちゃん」と、菜由。



「ホントは犬なんじゃないの?骨見つけるし」と、由香。



「あの骨が、本物だったらびっくりだねー」と、友里絵。


そこで、運転手さんが帰ってきて「安心ですね。出発します」と、にこにこ。




マイクロバスのドア・ブザーが ツー、と響いて。

ばたりとドアが閉じる。


空気シリンダーの音がしないので、すこし不思議だなと

愛紗は思った。






大岡山での研修初日。

その、空気シリンダーでドアを開ける事。そんなところから説明を受けた。


バッテリースイッチが閉じていると、シリンダーも動かないので

ドアは閉じた状態になる。


観光バスでは、それでもスイッチで動かせるが

路線だと、古い型のバスは非常コックを開けて、空気を抜いて

手でドアを開ける。


なのだけど、そのコックが結構、古いバスだと油が切れていて

重い事がある。


力任せに引っ張ると、ストッパーのピンが抜けて

非常コックのハンドルごと、取れてしまう。


出先でそういう時は、慌てずにハンドルを元に戻せば

とりあえずドアは閉じるので

車庫までそうして帰り、昼休み等で直せばいい。

ピンを刺すだけなのだ。



そう、森に教わった。


そんなこと、知らない事が一杯だった。


もう、とても昔のことのように思えた・・・・。





マイクロバスは、軽快に走る。


友里絵が「なんだか、帰りたくないなー。」



由香が「まだ、しばらくは旅だよ。」


愛紗は「そうね」



土曜 寝台特急「富士」


日曜 大分、庄内。


「ゆふいんの森」

「つばめ560号」

「快速なのはな」

KKR指宿 泊


月曜



「だもの」と。



「まだまだ、か」と、友里絵。



「でも、いつかは帰るんだ」と、由香。



「旅ってそうだけど」と、菜由。




「ずっと旅していたかったら、車掌さんになるとか」と、愛紗。



「それもいいかなー。」なんて、友里絵。




マイクロバスは、大きな通りを曲がって海岸線へ。


すぐに、KKR指宿に戻る。


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