第122話 指宿温泉コント芸人

「でもさー、菜由もさ」と、友里絵。


「なに?」と、菜由。



「いいよね、いつも好きな人と一緒で」と、友里絵。



「そうかなぁ。段々普通になっちゃうけど」と、菜由。



「そうだね、たぶん」と、由香。



温泉のお湯は、なぜか緑色をしている。

あまり、見たことのない温泉だなと愛紗は思う。




「毎晩寝てたらね」と、友里絵。



「毎晩なんて・・・」と、菜由はどっきり。



「あれ?睡眠はするでしょ」と、友里絵はにこにこ。



「このーぉ・・・これ!友里絵!」と、菜由はお風呂のお湯を手で。



「来たナー!」と、友里絵もお湯を掛け返す。


「やーめろってば!」と、由香(^^)。「誰もいないからいいけどさ」




オフシーズンの日曜。温泉に来る人は稀だ。

おじいちゃん、おばあちゃん。

それか、月曜が休みの人。

郵便、鉄道、バス、交替勤務の人・・・とか。





「愛紗、静かだね」と、菜由がふと。



愛紗は「そう?いつもだけど」と、にこにこ。



友里絵は「そう。あいしゃはさ、やっぱタマちゃんと同じで、ちょっとハイソ」



愛紗は「そうかなぁ。わたしって高卒だし」と。にこにこ。



由香は「学歴じゃないよ、ホレ。友里絵は専門卒だけど、アホだし」


「アホとはなんだ、高卒女に言われたくないわい」と、友里絵も笑って。



菜由は「そうそう、深町さんも運転手さんの間でそう言われてたね。

上の人だとか。気取ってるとかそういうんじゃなくて。なんとなく」




愛紗は「そうなの?」




友里絵は「そーいう感じあるね。運転手さんでも、ほら、田村さんとか

元ダンプの運転手だけど、あの人って紳士でしょう。」



愛紗は「そっか」と、なんとなく納得。「でも、わたしはそんな・・。」




そういえば、そういうドメインが出来ていたような気はするな、と

愛紗は思う。





「なんで指宿なの?」と、菜由が尋ねると


愛紗は「たまたま。最初、ほら、宮崎にするつもりだったけど・・・・

予約が間違ってたし・・・家のそばにすると、見つかるとね。」




友里絵は「タマちゃんが指宿に行ったって聞いたから?」



愛紗は、それは知らない。「そうなの?」




友里絵は「うん。東山辞めた後ね。出雲へ行ったり、中国を旅行したり。」



菜由は「中国?」



友里絵は「出雲とか、津和野とか」



由香は「それは中国地方だろ。やっぱアホだなぁ。中卒女」


友里絵は「だーかーら。専門卒!」



菜由は「まあ、それはいいけどさ。津和野かぁ。いいなぁ。・・・それで、指宿まで?」



友里絵は「いっぺんに行ったんじゃないらしいけどね。あの人フリーだから、仕事が空くと。

お母さんが旅行好きなんで、連れて行くんだって」




菜由は「お母さんは幸せだ」



愛紗は「そうね。」



由香は「お母さんにとっては、旦那さんに似た若い人だもんね。思い出してるんだろね。

昔のこと」




友里絵は「でもさ、それだと息子の幸せを邪魔してるんでしょ」



菜由は「ああ、大岡山でもあったもんね。タマちゃんの嫁探し。細川さんとかが

あの、ほら、恵美さんはどうか、とか。

タマちゃんに言ったんだって。

森下さんも言ったらしいね。


どうも、それもキッカケだったみたいよ。大岡山を辞めたの。」




友里絵は「まあ、あの大岡山の女衆じゃなー。合わないよ。タマちゃんに。」



由香は「そうだね。愛紗くらいじゃない?。あ、菜由もそうだけどさ。でも、歳がなぁ」





由香は「いくつ違うんだっけ?」

友里絵は「あたしと同じじゃん」


由香「あ、そっか。そうすると・・・25歳か。親子だね、ほとんど。でもそういう感じないな」



菜由は「それで、森下さんの話しだと、お父さんと、お兄さんが死んじゃったから

お母さんがかわいそうなんで、一緒に居てあげようと思ってるんだって。だから・・・。」




友里絵は「そうだね、そういう感じ。あたしにも優しいし。下心じゃなくて」



由香は「だからさ、友里絵は、お返しに『あたしをあげるー』って。

でも『いらない』って。ははは。返品未開封」


菜由も笑った。「面白いね、それ」



友里絵は「返品じゃないじゃん。まだ開けてないだけで」



由香は「あ、そっかそっか。塩漬けか」



菜由は「それも面白い!、やっぱ、芸人、キミたち」


友里絵は「ユリエです、ユリエです・・・おいの人生、こんなはずじゃなかとです・・・・

塩漬け女です・・・・干物女です・・・・・。

早く食ってー、どこ見てんのよー。」



愛紗も面白い「いろいろ混じってるね」



壁の向こうの、男湯から笑い(^^)。



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