第61話 おばさんの家

伯母さんの家は、駅からそれほど遠くない

線路を見下ろせる位の場所だった。


梨や、柿、果樹園が広がっていて。


「わー。自然が一杯だ。」と、友里絵。


伯母さんは「田舎だからね」と、微笑む。


割と新しい住居だ。



「建て替えたの?」と、愛紗。




「そう、台風で壊れた時に」と、伯母さん。



由香は「大変ですね」と言うと



「この辺りは普通なの。壊れて、直す。そういう感じだから。新しくなっていいわ」と

伯母さんは笑う。



友里絵は「お金持ちなんだー。」と、言うと


伯母さんは「補助金が出るの。税金控除になるし。」


「ゼーキンコージョてなに?」と、友里絵。



由香は「あのほら、給料から引かれるジャン、所得税とか、住民税とか。

あれを払わなくていいから、そのお金で家を直せるの」



「へー。いいねぇ」と、友里絵。



由香は「うちらでもそうだよ」



「そーなんだぁ。由香、良く知ってるね。」と、友里絵。



「へへ」と、由香はちょっとテレ笑い。



さ、入って、と

伯母さんの家に入る。


けっこうモダーンで綺麗な家。


壁は白くて、フローリング。

洋風の玄関。



「かっこいいね」と、友里絵。


「前は普通の木造住宅だったの」と、愛紗。



「そうそう。台風でね。壊れた時ついでに」と、伯母さん。「もう、お風呂はいいでしょ?

じゃ、お茶でも飲んで寝ましょうか」



「はーい」と、三人。



「そこが客間だから、そこに荷物置いて寝たら?、愛紗は自分のとこでいいでしょ?」


と、伯母さん。



「愛紗の部屋があるの?」と、由香。


伯母さんは頷き「よく来てたから、この子。それに、夫が居なくなってから

部屋が余るから。」と。



「なーるほど・・・じゃ、ここに越してもいいんだね」と、友里絵。



にっこり。



愛紗も「それは、楽だけど。まあ、国鉄さん次第かな」



伯母さんは「さっき電話しといたわ。そのうち返事来ると思う。

日野の親類だと言えば、まあ、入れると思うけど。現職だし。」





「そうなるといいね。」と、友里絵。



愛紗は「うん。そうだけど、ちょっと・・・野田さんたちに悪くて。」




「そんなの気にしても仕方ないよ。東山もね。ガイドは全部契約社員にするって

言う感じなんだって。これからは。」と、由香。



「そうなの?」と、愛紗。



「そうみたいよ。時給契約だと会社が損だから月給にするけど」と、友里絵。



勤務時間がとても長い(乗務前からだと5時ー21時くらい。休憩2時間でも16時間位


。なので、乗っている間だけを勤務時間とする慣行。ガイドは更に、清掃、準備があるの


で+4時間くらい。時給では払いきれないので、派遣などは使えないワケ)。



「そういう話はよく知ってるね」と、由香。「それで、あたしらはドライバーになろうかって

思ってた訳」




ドライバーも同じだが、掃除と、準備はしなくていい分楽。ただ、観光バスは

時間制限が無いので、走りっぱなし乗務も当時はあった。

(現在は規制があり、2時間交替であるが)。






バッグを持って、3人は客間に。



伯母さんはお茶を淹れに、台所へ。






「いやー、疲れたなぁ」と、由香。



「おやじギャルかい。」と、友里絵。


「ギャルって年かい。」と、由香。


「そうだねー、ははは」と、友里絵。



愛紗もにこにこ。「疲れたね。」



「さっきさぁ、駅にあったの、種ありだよね。柿。」と、友里絵。


「そうじゃない?」と、愛紗。



「あの種ってさ、割って食べられるんだよね。」と、友里絵。


「そう?」と、愛紗。


「柿の種ってお菓子はあるね」と、由香。



「ガキの種じゃないの」と、友里絵。


由香もぎゃははーと、笑う。


愛紗も面白いけど、恥かしいから、俯いて笑う。



「大岡山でさ、タマちゃん種なし疑惑があってさ。」と、友里絵。



「ああ、そういう事言いそうなの分かるね。普通、女が居ないとーって

思うもんねぇ。」と由香。



「でもさぁ、アレって種無くてもしたくなるんだってさ。」と、友里絵



「へー。それで?」と、由香。



「中で折れちゃたりするんだって」と、友里絵。



「ああ、中折れ帽子って言うもんね。ゴム被ってたら中折れ棒?」と、

由香。




また、ぎゃははは、と、ふたり。


煩い煩い(笑)JKそのまま。




「あ、そうだ!明日の宿ってさ、シーガイアだよね」と、、友里絵。



「そうだけど」と、愛紗。



「菜由のも?」と、由香。



「確認してみるね。」と。愛紗。




携帯で電話を掛けた。



「あ、はい。あの・・・明日からの予約の確認なのです・・はい。日生と申しますが・・・。

はい?はい。・・・・ないですか?確かに、組合から・・・・。はい、あ、そうですか・・・。


「どうしたの?」と、由香。



「予約を間違えたんだって、組合が。日程を。一週間先になってるって。」


と、愛紗は困っている。



由香は「空室は?あるの?」と。冷静だ。

ガイド経験からのものだろう。



そういう事はよくある。



友里絵も、慌てていない。




「どうしよう・・・・。」



伯母さんが「お茶、沸いたから。」と、ダイニングに誘った。



愛紗の顔を見て「何かあった?」と、伯母さん。



「うん、宿の予約が取れてなかった」と。



伯母さんは「なんだ、そんなこと。どうにでもなるよ。KKRだってあるし。

ちょっと聞いてあげよう。」と、居間に行って

電話を掛ける。



「あ、はいはい。庄内駅の日野。どうも、お世話になりますね。あのね。KKRって明日

泊まれるところある?うん、女の子4人。・・・・・あ、そう。あるね。ありがとう。じゃ、後で。」




客間に戻ってきて「青島、飫肥、北郷、串間、霧島、指宿。あるって。一週間だったら

そういうツアーも面白いでしょ?」と。



友里絵「いいね!面白い、それ!」


愛紗も笑顔に「ありがとう、おばさん。」


由香「あるもんですねー。びっくり。」



伯母さんは「国鉄の施設はね、調整用にあるの。幾つか。突然の出張とか

困るでしょ?職員が。ほら、指定席と同じ」と、にっこり。



由香は「なーるほど。」


友里絵は「なに?それ」


「ほら、バスでもあるじゃん。高速バスとか」と、由香。




「あーあるね。乗れなくて困った人がいたりすると」と、友里絵。



愛紗も記憶がある。


観光バスでも、数台まとめてのツアーだと、「別の号車がいい」と言う人とか。

いろいろあるので

空き席がいくつかある。




「おばさん、ありがとう、ほんとに」と、愛紗。

感謝、感謝!。






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