第408話 boot loader

止まっている列車の個室で

ミシェルは、さっきの夢を

思い返す。


「なんで、あんな夢を見たんだろう?」



男女の愛しあい方について

生物的な興味を持って

動画を見たりした事もない少年ミシェルは



お姉さんがいつもついていたから



異性と言うものが想像でなく、実態として

そこにあった。



そして、お姉さんに躾られると言う事は


女の子の視点で、不都合のない生物に

育てられてしまうと言う事。




それは悪い事ではなく、人間は動物よりも高い知性を持っているから



いろいろ、自由に設定ができてしまうと

言う事。





コンピュータで例えれば、高性能な

エミュレートができてしまう。




ハードウェアがどうであれ、ソフトウェア上で

違うコンピュータのような振る舞いが出来てしまう、と言う事。




Linuxのソフトウェアが、DOS/V,sparc,ppcなど

様々なハードウェアに乗ったり



その上に、MicrosoftWindowsの

ソフトウェアを動かしたり、

PlayStationのソフトウェアを動かしたり。




そんなふうな様子に少し似ている。



人間は多様化ができるので、ミシェルも

お姉さん目線で不都合がないような



育てられかたをした。




お姉さんリサは、反対に


おじいちゃんソフトウェアの影響で



いわゆる旧来の女の子とは

少し変わった育てられかたをした。





でも、基本的なハードウェアは


リサは女の子、ミシェルは男の子。




その上のソフトウェアが変わっている。





そういうところへ来て、恋愛と言う


一番古いハードウェア依存のソフトウェアは

変えられない(笑)。





そこが、ミシェルにとって


ミシェル自身のオペレーティングシステム(笑)と


合わない部分になってしまっている。




と、そういう事なのだけれども



それは、ミシェルに限らず




人の生き方が多様化すると

仕方ない部分なのだ。




でも、愛の分かち合い方は

誰に学ばなくても


ミシェルは、基本的に記憶されている。




だから、夢に出てくるのだ。





ハードウェアに似合う最も基本的な

組み込みソフトウェア。




それは、変えようもない。

でもそれは、生き物としての基本プログラムで


これまで、生き延びてきたから

それが、ある。



と言うだけで、ミシェル自身が考えて、意思を持った訳では

もちろん、ない。



ミシェルは、ただ、めぐお姉さんが愛しいと思っただけで

それはたぶん、これまでミシェルが見聞きして体験した要素から


「好ましい」


と思っただけの事。





なので、少年ミシェルの体験にない、生殖への訴求は

本人をも驚かせている。



報酬系システム、と言うか


物理刺激を、センサーが拾って

信号を神経が届け、脳でイメージにつながる。


それが、たまたま特殊な生殖へのプログラムにつながり、報酬を覚えると

それだけの事。



仕掛けは単純、生き物は増殖が基本なので

それが支配的になっている(生き延びて来たので、仕方なく)。



でも、生き延びたくないと本人が思えば、それから逃れる事も自由である。


あるいは、魔法使いルーフィのように生命体でなかったり

神様や、天使さんのような存在であったりすれば


もともと、そういう増殖は必然ではなくなる。



あらゆる、人間的な争いも

元々は、個々が生き延びて



更に、増殖の中で領域を分け合う争いである。



コンピュータで言えば、複数のコンピュータ同士で

ネットワーク上の記憶領域などのリソースを分け合う、競合する争いに

似ていたりする。



なので、その解決と同じ方法で

争いはなくなるので


神様は、人々の過剰な欲望を自制するように

心の回路を変えたりした、のだけれども。



少年ミシェルのささやかな愛と欲は

夢の中で果てたり。





....でも、魔法使いめぐはそれを見てしまったり(笑)。



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