第350話 重厚な

屋根に、かっこよく舞い降りためぐ。


だけど、屋根から降りる扉がある訳でもないので


結局、屋根からもう一度

地上に降りるために

飛び上がった。




カラスさんとかに、追っかけられながら(笑)。



屋根好きのルーフィさんは

どうしたのかな?

なんて

言いながら(笑)。




15番ホームの端っこが

トンネルになってるので


そこの、トンネルよりに降りて。


ガード沿いに、駅の改札に向かった。





ふるい、この駅は


2階の手摺りから、階段まで


昔のままのところは、趣のある木造。


金属の飾りは、真鍮が

ひとの手で磨かれて、ぴかぴか。



お客様の通る場所でもないのに

2階への階段は、幅広く、国会議事堂のように


立派。




たぶん、昔は偉い人たちのお部屋があったのだろう。




建国の頃、鉄道を敷設したのは

もともと、民間の人たちで



自分の財産を使って、作った私鉄だった。


でも、戦争の時に

国に取り上げられたという歴史を



社会の時間に、習った事があると


めぐは思い出す。





リサたちみたいに、やっぱり政治の都合で


人の運命って変わるのだ。




そう、めぐは思ったりしながら



階段、重厚なそれを

歩いて昇る。



踊り場のところには、駅長さんの書いた書、が

書かれていて。




「お帰りなさい、ご苦労様」と

下から昇ると、読める。



2階から下る時には「元気で行って、いらっしゃい」と、書いてある。




そんなふうに、書に心を込めている。




温かい心が伝わってくるようだ。




リサも、リサのおじいちゃんも、おじさんも



こういうところで、家族のように


心をひとつにしていたのかな、なんて

めぐは、思ったり。





2階は、職員専用の場所だけど

回廊になっていて

1階の、お客様改札のところを

見下ろすような


その、書を見ていたりすると

時代を忘れてしまう。






昇った2階は、広いエントランスで


正面は、車掌区。


右手にロッカールーム。




ちょうど、でてきた駅職員さんに


話をすると



「ああ、その列車は夜の出発なので


そろそろ、点呼に来るかな。


それまでは、客車区で


車両整備をしていると思う」と。




寝台車なので、乗務員は

シーツとか、カーテンの取り替えをしている人たちのため鍵を開けてあげたり、


電気を付けてあげたり。



そういう事をして

時間を過ごしながら


列車のそばにいる。



そういう時間であるらしい。





その客車は、ここではなくて


北隣の駅の、外れに


車庫があると



その、年配の職員さんは


のどかに教えてくれた。




その表情だけ見ていると


国の政治がどうであれ、我関せず、そういう雰囲気に見える。





悠々としているようで


それは、この駅の佇まいそのもののようにも思えて




めぐは、なんだか


とても大きな、どっしりした

ものに触れているような、


そんな気持ちになって。

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