第285話 da-do-ron-ron

信仰も、何かが

好ましいからひとは

、それを行う。


好ましくないことは、ふつうのひとはしない。




そういう訳で、信仰の多くは

限りある命である人間に、

終末が訪れないと、幻想を

与える事で、それを

好ましい、と


思わせる。


なので、子供で信仰深いひとは少ない。



終末、のイメージが

よく掴めないから、である。





なので、魔法使いにとって


信仰はあまり必然性がない。



時間も、空間も自由自在に

移動できるから、である。






天国や地獄、生まれ変わり、輪廻転生、


そういう概念が、ほとんど信仰にあるのは


終末への畏れを和らげるためであったりもしたが




実際に、その世界がある事は



めぐにはわかる。




何と言っても、天使さんに

護られていたのだからーーー。











めぐは、ごはんを食べている

子猫たちを

微笑んで見ている。




子猫は、ほとんど

うちの子、になりつつある。



母親猫は、美人猫なのだけれど


なぜか、子猫はにゃごに懐いていて。


お母さんの家には、時々帰るくらいらしい。





そのあたり、にゃごは


自身の人間だった頃の記憶もあって(笑)

子煩悩である。




優しい父親、として

役立っている。




そんなふうにも、

前世の記憶は役に立つのである(笑)。








「さ、行ってきまーす。」




めぐは、レモンイエローの


スイム・スーツをバッグに入れて。


裏山の、プールへむかうバスに乗って。






いつか、乗ったっけ?



と、めぐは回想するけれど。

それは、旅先の向こうの世界の話でした。





(笑)





そんなふうに、記憶は曖昧で。




複雑になってしまうと、おばあちゃんの

記憶みたいに

こんがらがってしまいそうだった。





「自分の夢に飛び込んで、記憶を

組み直さないと」なーんて

思うあたり、めぐは、魔法使いっぽく。







「あ」めぐは忘れた。



あの、坊やの事を

おばあちゃんに尋ねてみる事を。





そのあたりも、記憶が複雑になったせいだったりもして。






めぐ自身、こんがらがってしまいそうだったから


こんな時は、泳ぐのもいいかもしれないな。


リサが誘ってくれた偶然に、感謝。







緑いろのバスは、ゆらゆら揺れながら


停留所にやってきて。




ばあん、と


空気仕掛けの折り戸が開いた。






鉄の階段が、2段。

ハイデッキのバスは


どこか懐かしい匂いがして。





行く夏休みを惜しむような、ひぐらしの声に

良く似合う。





秋が近くなって、空気が澄んで来ると

この、高い声が良く似合う。



ああ、秋が来るんだな、と

めぐは思いつつ



でも、クーラーの効いている


バスの有り難さを

まだ、感じる陽気でもある。



バスは、扉を閉じ、

運転手さんの白い手袋がルームミラーを示し



左手がギアを入れる。




ふんわりと、バスは走り出すけれど



それは、人知れず難しい技術であったりもする。



坂道から、衝撃なく走り出すには

ブレーキの解放を行う時に

クラッチをつないでいないと、できない。




でも、タイミングがぴったりでなければ


揺れるか、後ろに下がるか。

前に飛び出すか。




ふわ、と

雲のような乗り心地になるには


熟練の技が必要である。



本当の技、と言うのは

そんなふうに、人知れず行うものであったりもして。


それは、めぐが

リサの知らないところで


リサの悩みを解決してあげたような


そんなものであったりもする。






バスは、快適に

山を登っていった。



ゆらゆらと、バスは揺れながら山道を登っていく。


車内は誰も乗っていない。


終点が近いので、昼間はほとんど乗る人がいないから

それはそれで快適だ。



観光気分で、車窓を眺めると

左手には、木々が青々と茂り


ドイツの黒い森のようだ。

その隣に、竹林。


パンダちゃんが居ても、食べ物に困らないだろうな、と

めぐは微笑む。




時々、雪が降ると


明け方、野うさぎさんがお散歩している跡が見える

その丘の上。



夜になると、鹿さんや猪くんが

出てきたりする、自然豊かなところ。



右手には、お茶の畑が見える。


その、向こうに


ルーフィと歩いた、坂道が見える。



.....ほんのちょっと前の事なのに。



とっても遠い日のような、記憶を


朧げに、めぐは思い出す。





それで、いいのかも。




と、めぐは、ふと

思い返すと、少しだけ思い出に

胸が痛むような、そんな気もした。





バスは、ハイウェイの高架をくぐり


温泉、流れるプールのあのリゾートへ。



振り返ると、海が見えるのは

坂道を登っているから。




道が斜めになっているから、自分が傾いているのに

それに慣れると、海がこちらに傾いているような

そんなふうに見えてきて。


水平線が、地面より高く感じたりするのは錯覚である。




地面が、斜めに海に向かっているので

行く手遙かな水平線が、それより高く見える。




3次元立体に住んでいる事がよく分かり

二次元の平面的な平衡感覚で、座標を認識できない事が

このあたりでも実感できる。



----と、めぐが思っているわけもない(笑)。








バスは、ロータリーでめぐを下ろし

薄い紫色の煙を吐いて、また戻っていった。



ディーゼルエンジンの排気は、僅かに酸を感じるが

それは、燃料に硫黄が混ざっているせいで


燃焼して酸化されると、硫黄酸化物、水分と反応すると

硫酸になる。



金属が溶けるのだけれども、そんな理由で酸の匂いがする。









プールは、リゾートホテルの裏手に入り口がある。

スポーツリゾートなので、テニスコートがあったりする


エントランスは、ホテルと分けられているのは

巧みな設計である。




ホテルは静粛に、と言っても

スポーツで高揚している気分を鎮めるのも難しいから


入り口を別にするのは良い方法である。



係員が両方に必要だが、それもおもてなし。



来る人は、気持ちよいところに来るのである。



  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る