第262話 driver,Lissa

電車を止めると、リサは重そうな鞄を持って

ブレーキハンドルを外し、鍵を抜いた。


金色に輝く鍵は、教官が持って行った。


そして、ビューゲルを下ろすと

電車は眠りに付く。



乗務員室の扉を開いて、運転手の制服を

着た

リサは、階段を降りて来る。



路面電車なので、地面は近い。



「それならスカートでも見えないよー」なんて

Naomiがおどけると、リサはやっと笑顔を見せたけど

少し、表情が硬い。




もちろん、制服はスラックスである。(笑)








レールが敷かれている車庫は、足元が危ないので


少し、よろけて歩くめぐたちと、しっかり


平らなところを歩いてるリサ。




慣れはそんなとこに出る。





「上手じゃない」と、れーみぃが言うと



リサは、かぶりを振って「ぜんぜんダメ。でも

試験は受かりたいし」と。




「落ちたら、どうなるの?」と

めぐが聞くと




リサは「また、試験を受けるんだけど。

1年後にね。でも、受けられるかどうか」と。


車掌の仕事をその間はするらしい。




「かわいいからいいのに。車掌さん」と

れーみぃが言うと。




リサは「うん、でも。

おじいちゃんとね、小さい頃約束したの。

運転手になるって。



だけど。わたし.....。」




リサは、視線を落とす。



Naomiは「ねえリサ、おじいちゃんは

悲しんでたの?そんなそぶりしてた?」と

言うと、リサはどっきりとしたらしく


表情が硬直した。でも、かぶりを振って。



「そんな事ない、いつものおじいちゃんだったけど。定年で国鉄を退職してから

淋しそうだったもの。それで....。」

早く、天国に行っちゃった。




リサは、それで進路を変えた。

ユニバーシティに入ってから、就職をしようと

思っていたし、国鉄に入るつもりもなかった。



でも、おじいちゃんが死んじゃってから

リサは、淋しそうなおじいちゃんの背中を

思い出して。



おじいちゃんに会えそうな、そんな気持ちで

路面電車の運転手を目指した。



その時、ハイスクールから

国鉄を受験できる

学校の推薦枠は、もう


他の生徒で埋まってしまっていて。


リサが受験しても、推薦は受けられないし

無理に割り込めば、誰かが泣く事になる。




「女の子だから、国鉄は厳しいんじゃないかって、先生も」






リサは回想した。




それで、路面電車職員へ。





「おじいちゃんの事を思うと、なんだか


緊張しちゃって。」と、リサは厳しい顔で。





「とにかくさ、お茶しよっか」と

れーみぃは言う。



「そうね。」と、Naomiも明るく。

いこいこ?って。




「白バイで行く?」ってれーみぃは

笑顔。




やっと、リサも笑顔になった。

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