第246話  Lissa's dream








Lissa's dream



めぐは、そのまま

声を掛けられずにいた。


あんまり、真剣なので。



それなので、夜を待った。




深夜、もうLissaが眠った頃に


彼女の夢にお邪魔する事にした。




「だいいち、いまのわたしがLissaに

会っても」Lissaは混乱してしまうだろうし。



夢で逢ったら、夢だから

べつに、Lissaも困らない。






夢の中で、昔のクラスメートに逢った、

なんて言うお話は



ひょっとして、こういう感じで

過去からの旅人さんが来た事を





だと思っているのかもしれない(笑)なんて。








そんな訳で、めぐは

Lissaの夢にご挨拶。




夢の中でも、Lissaは


路面電車の運転手さんだった。




めぐは、そこに

ぽん、と出ていって。





「りーさぁ」と、ハイスクールの

時のまま。




と言うか、めぐはそのまま18歳だ(笑)。





リサは、びっくりしていたけど


それを夢だと思っているので(笑)。


すぐに笑顔になった。でも、真面目な顔になって




「めぐ、あたし.....頑張ってる。

でも、大変。くじけそう。」



リサは、そう言って


気丈な彼女らしく、崩れはせずに


立ったまま、落涙した。



めぐは、訳も聞けずに


リサを抱擁した。




「がんばってるんだね、リサ」めぐは

気持ちがわかる。







リサは「うん、でも、大変だよ。

あんなに辛いなんて。」それは、そうかも。





「そうだよね。電車の下で汚れて。

あんな事までするなんて。」と。






めぐは言った。





「めぐ、見てたんだ。あんなにまでしなくてもー。って思うでしょ?ふつー。


でも、大事なんだ。あれ。

タイヤが取れたら大変だし。」と


リサは真面目顔で言う。





電車のタイヤは、鉄。

鉄の車輪の外側に、ばーむくーへんみたいに

熱で焼き付けてあって。



なので、ブレーキの熱で

緩んだら大変なのだ、とか。




それで点検。



訳はわかった。




「電気の勉強もしないと、免許取れない」と

リサは、そんなふうに言う。




ちょっと女の子には難しい、強電や

インバータの構造。



それも、試験に出るのだそうだ。





「がんばって、としか言えないけど」と


めぐは、リサを抱擁しながら、言った。







うん、ありがと。頑張るよ。と

リサは気丈な声に戻って。




ふと、気づく。

めぐは、おばあちゃんにされたように

リサを抱きしめていた。


それが、いちばん落ち着くから。


そんな風に、優しさは

受け継がれていくのだろう....。




めぐとリサは、しばらく話した。



ハイスクールを出て、すぐに路面電車、市の交通局の

試験を受けたリサは


最初、車掌さんになった。



慣れないお客さん対応、一日立っているので

足が疲れてしまうこと、とか。


そのあと、運転手さんになる前に

免許を取らないといけないので


いま、見習いで練習。


しながら、電車の仕組みを勉強してること、とか。





「大変なんだね、運転手さんって。」と、めぐは言う。

図書館の方がずっと楽だ、と思ったりもした。



「そう。だって人を乗せるんだもん。」とリサはさっぱりとした

口調で。




路面電車はレールに乗っているし、いつもワンマン運転だから

何があっても自分で対応。

そのために、いろいろ勉強するのだとか。



道路を走るときは、自動車がぶつかってくる事、も

あるらしい。



「そんなに危ないの。」と、めぐは驚く。


どうして、そんな仕事をするのだろう?などとも思う。



でも、リサには彼女なりの意思があるのだろう。






「とにかくがんばる。また、会いに来て?」と、リサはにっこり。


その笑顔は、ハイスクールの頃、屋上で見せた表情そのまま、だった。


めぐも、同じに微笑み返す。



いつでも、会えばあの頃に戻れる。



友達っていいものだ。






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