第230話  one second,onetime



one second,onetime



おばあちゃんは、ハロウィンの魔女衣装

のまま。


黒い尖んがり帽子とマント、魔法の杖。


それなので、にゃごも

ちょっと、怪訝な顔なのかな?



めぐは、そう思ったけど


そうじゃないみたいだった。





おばあちゃんは、にゃごを

抱き上げて


よしよし、と

撫でていて。




子猫二匹が、だっこしてぇ、と



見上げて。


にゃー、にゃー。




めぐは、その二匹、ふわふわの子猫を


だっこして。



おばあちゃんみたいに


よしよし、と。



温もりが伝わって、いい気持ち。




おばあちゃんは、にゃごと

心が通じるみたいで。




その、にゃごの淋しげな表情の意味を

読み取った。






「めぐ、あのね....さむくん、って

岬のわんこが、天国へ行ったみたいなの」と。



おばあちゃんは、淋しそうに言う。





「え!?」めぐは、びっくりした。



ちょっと旅してるうちに、そんな事があったなんて。




あの、岬のお家で。



絵本に入ってしまった、あたしを助けてくれた、大きなわんこ。



老犬だったけど。



穏やかな、ゴールデンレトリバー。



「いきなり、そんな。」

めぐは、急に悲しくなった。





おばあちゃんも、淋しそう。



歳を取ると、より、そういう事に

センシティブになる。



それは仕方ない事だけど。




例えば、ピアノの詩人、フレデリック・ショパンは

病弱だったので、詩的な、音楽が好きだったとか



そんな理由を聞くように。



生命を持つ生物にとっては、大きな命題である。




いつか、天国へ行ってしまう。誰だって。





でも、最期の1秒も、最初の1秒も


物理的には同じ1秒だ。



感覚的には違う1秒だし、相対性理論的には

時間軸が変化するか、空間軸が変化する事も

有り得るので



そんな時、1秒の単位はゆらぐ事になる。







楽しい1秒なら。

短くてもいいのかもしれないけれど。




「さむくんは、幸せだったのかしら」と、めぐは思う。





たぶん、そうよね。


穏やかに、一生を終える事ができたんだもの。




みんなのために、一生懸命になって。




天国に行ったのね。


そう、めぐは思う。

でも、淋しくて


落涙してしまったりする。



人間だもん。そんな事もある。







「めぐ」おばあちゃんは、めぐを抱き寄せて。



優しい子ね、と


めぐを撫でた。




おばあちゃんんお優しさが嬉しくて、

なんとなく、めぐは安堵の涙を流す。




「さむちゃんは、きっと、生まれ変わるわ。

また、あなたに会いに。


生まれ変わって、また出会うの」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る