第139話  心の物理


心の物理



「モーターがブレーキになるんですか?」と

めぐは、ちょっと不思議そう


その、半疑問の表情は

なんとなく、子犬のように愛らしいと

ルーフィは思ったりするけど


でも、そんな事言うと怒るかな(笑)なんて。



微妙なお年頃。



「うん、ほら、磁石をふたつ、向かい合わせにすると押し合うでしょう?

小学校の理科の時間に実験したみたいに。



と、ルーフィ。



「うん。それで・・電気が起こるんですか?」と、めぐはまだ、半疑問。




「そう、それでね。この電車のモーターは電磁石だから。回らない方の磁石も電気で磁力が変えられる。



磁石同士が反発するように、電気磁石同士が向き合うなら、電線には電気が起きているって訳。




モペッドのヘッドライトの電気と、原理は一緒。



その電気をね、どこかで使うと・・・

抵抗になって、電気が流れにくくなるから


モーターの軸が周り難くなる。それを

ブレーキにしているのね。」と、

ルーフィは簡単に言った。」




「面白いですね。触ってないのに

力が伝わる、ブレーキになるって。」とめぐは感想を述べた。




「見えないからね。でも、力は伝わる。地球の重力もそうだし、この宇宙の空間が成立してるのも、そんな重力場のせいだし」と、ルーフィは

楽しく、物理の話をした。



元々、魔法は物理学的な側面があるのだ。


「モーターには、小さな宇宙があるんですね。」と、めぐは空想的に。



「うん、僕らの体を作っているのは、タンパク質だけど、炭素と水素だね。



その炭素にしても、原子核、それと電子が、太陽と惑星みたいな

宇宙そっくりの形で動いている。


その、電子が流れるので、電気が起こるんだね。



その、タンパク質を使って、体のあちこちが出来ていて。


神経ができて、脳が出来て。


覚えたり、考えたり。



それはもう、ひとつの宇宙だね。

重合宇宙。宇宙の中に宇宙がある。


僕らが時間旅行する、この超次元時空間によく似ているね。」



と、ルーフィも、少し空想的に

話をつないだ。




「それだと、電車さんにも心があるかもしれませんね。」と、めぐは

さっきから気になっていた、電車の心の事を尋ねて見た。





電車の運転手さんは、マスター・コントローラーを元に戻す。


計器のひとつ、針が、すっ、と左に戻った。


ブレーキハンドルを、静かに回すと

もうひとつの計器で、ふたつある針のひとつが、すっ、と左に振れた。



車輪から、軋み音がして。


「空気ブレーキだね。」と、ルーフィが言う。

ブレーキのマイナス加速度に従って、体が慣性に沿って揺れる。


その力も、触ってはいないけれど

確かに、力だとめぐは思う。




v2=v1+atである。

加速度はマイナスなので、速度が減っていく時の減速度、なのだけど。



その力に沿っていると、ルーフィ、となりに立っている愛しい存在に、めぐは、ぴったりしてしまう(笑)。


触れないのに、力が掛かってる。

触れたいって思う(笑)。



それも、変な物理学かな?って

めぐは、ちょっと恥ずかしいような

嬉しいような。



不思議な気持ちになった。




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