第116話  稠密なもの


稠密なもの



「こんどはだいじょーぶ」と、めぐは

また、ペダルを漕いで。


少し、勢いをつけてからクラッチを離す。


デ・コンプレッションが働いて、シリンダーの中で

ピストンが下がる。

そして、昇る時に圧縮が掛かり、空気は圧縮される。


PV=nRTである。

nモルの空気に適当な燃料を、エンジンは吸い込むが

それは、自然にエンジンが吸い込む量を

ちいさなジェットが通すのだ。


概ね13:1。


圧力Pが上がり、容積Vが減っていけば

Rは一定なので、Tが上昇する。


Tは温度である。



そこで、発火点を越えれば爆発する。



精密な仕組み、だが

外からは分からない。



ひとの気持も、それに似ているのかもしれない。



めぐは、気丈に振舞っているが

本当は、恋の行方に悲観的であった。


なにせ、相手が3年後の自分、と言うのでは

戦いようもない(笑)。



それでも、好きな気持には変わりない。






なので、はじけそうな気持は

エンジンの爆発のように元気な振る舞いとなって。


でも、心の中は


精密なエンジンの制御のように繊細だった。

それがないと、エンジンが動かないように


めぐの気持の繊細さが、はじける若さのエネルギーのもと、だったり。



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