第107話 作戦



でも、猫なので

手で運ぶ訳にもいかない。


口でくわえて運ぶにしては

「ゆきのひとひら」は

ちょっと重い。


それに躊躇している間に

飼い主の子に気づかれてしまって


「あ、たまぁ、大事なご本、だめよ」



と、取り上げられてしまう(笑)。




猫になった身がもどかしいとは

特に思ってはいないだろうけれど

たまぁは、ちょっと不自由に感じる。



猫が、いたずらする。

そんな理由は、ひょっとすると

こんなことかもしれない。


人間にはわからない理由。





「仕方ないな」さむは、犬だし

体も大きい。



自分で運ぼうと考えた。


台所にある、コンビニでくれる

白い袋を思い浮かべ「あれなら、くわえて運べるだろう」と。



台所の、冷蔵庫の横にぶら下がっているケースに


畳まれて、いくつもそれは

保存されている。



ゴミを出したり、ちょっとしたものを

入れるのに便利なのだ。




さむは、とっとこ、とっとこ、と

台所に行って。



幸い、誰もいないので


やや、大きめのその袋を


ひとつ拝借。



もとの部屋に戻る。




遊ぶのに飽きたのか

飼い主の子は、ベッドで

眠ってしまった。





いまのうち・・・・と

思ったかどうか(笑)。


でも、犬とて手があるわけでもない。




絵本を、袋に入れるのは結構難しい。



それに、コンビニの袋は

がさがさごそと音がするので


眠っている子が起きないか?



それも心配だった。




静かに袋を広げて。



その中に、本を押し込もうとした。


けれども、つるつるとすべるし

袋の持ち手がじゃまして、入っていかない。



「ふつうのビニール袋にすればよかったな」


と、さむは

ちょっと後悔した。



でも、これでとりあえずやってみよう。



がさがさ、ごそ。


絵本は、苦労の甲斐あって

袋の中に少し、入りかけた。


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