第102話  捜索にゃんこ


捜索にゃんこ



その頃、めぐは

自分が、どこにいるのか

よくわからなかった。

2次元の平面に自分が立っている。


そこが全てなはずで、しかし

めぐは3次元からのひとだから、その外も見回せる。



でも、その視界は限定的で


絵本の平面から見えるものが全て。


それはもちろん、地球の上から裏側が見えないのと同じである。



昔の天文学者が、地球を平面だと

思っていた頃の宇宙と

同じような、そんな感じであるけれど。


後に、ガリレオ・ガリレイが

望遠鏡を発明して


地球が球体であり、自転しながら

太陽の周りを公転していると


発見するのであるが



もしかすると、彼は

地球の外からの生物だったのではないか?などと

思いを巡らすのも楽しい。




この時のめぐに、そんな余裕が

あったかどうかは、ちょっとわからなかった(笑)。



そろそろご飯も食べたいし、もとの世界に戻りたいとも思ったけど


絵本の外の世界はなぜか揺れている。



規則的なので、誰かが本を持って歩いているのだろうかと

めぐは思った。



時々、見回してみると

野原や海、空が見えるので



海沿いにいるのかしら、と


めぐは思った。



絵本を持っているのは

幼い子供のようで、それとなく

地面が近く見える。


時折、立ち止まって

絵本の表紙を眺めて、にこにこしているので


本の好きな子みたい。



立ち止まった子に、歩み寄って


声を掛けているのは、お母さんらしい。


優しげに、微笑んでいたりする。



その様子を垣間見て、めぐは


懐かしくなった。



朧げに、そんな事があったような

気もして。




ほんとにあったか、は

わからないけれど



なんとなく、それで

ほのぼのとした気持ちになれると


それはそれで、いいものだ。


今は、結構大変なときだったりするのだけど。


でも、そういう時に


ほのぼのとしていられれば


それはいい事だ。



助けを待つより、他にないのだから。






絵本は、その子の手から離れて


どこか、平面に置かれた。



天井が見えるところを見ると、その子のお家のどこかのお部屋らしい。


机の上らしいところに、静かに置かれたので

めぐは安堵した。



放り投げられたりしたらどうしようか、と



思ってもいたのだ。





「にゅあーごぉ」


声がする。




しなやかに、机に飛び乗ったのは



茶トラ猫だった。




絵本から見ると、結構大きくて

ほんもののトラみたい。



そう、めぐは思ったけれど



絵本の中に隠れていれば・・・・



爪を立てられたりしなければ、大丈夫。



爪!(笑)。




それに気づいて、めぐは

表紙から、中のページに移ろうとした。




それがまずかったのか、猫は


絵本の中に動いているものを

見つけ、不思議そうに覗き込んだ。



鋭い爪が、ちょっと怖い(笑)。



「なやぁーーごおおぅぅう。」



猫の声が、大きく聞こえて


めぐは、急いで3ぺーじめあたりまで逃げた。

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