第79話  天使さんの歌



ちいさな子は、めいめいに

好きなご本を持ってきて。


「よんでー」

「これ、よんでー」


(笑)



なので、ちょっといっぺんに読むのは無理。



「じゃあ、読書室にいきましょう」と


と、めぐは、小部屋になっている


読書室を、クリスタさんに奨めた。


ふつうのおうちの、リビングくらいの

広さだけど

図書館で見ると、なんとなく狭く

感じるのが不思議。



東向きで、明るい白い壁の

がらんと何もない、ちいさな子供と

絵本を読むための、スペース。

時々、お母さんが、お昼寝したりしている(笑)。


それはそれで、いいこと。



この図書館は、そういう場所。


みんなが、楽しむところなのだ。




子供たち、めぐ、クリスタさん。



そこに入ると、扉を閉じて。



図書館だから、静かにしてあげないと

本を読む人が、かわいそうだから。



それで、タイプライターを打つ人のために、最初は考えられたそう。



今は、みんなコンピュータになったから


それほど、音を気にすることもない。



それなので、子供達が騒いでも

大丈夫なように(笑)。



こういう時は、お部屋に

連れて来る。そんな感じ。




「なにして遊ぼうか?」

めぐは、楽しそうだ。


子供達も、絵本でも、なんでもよくて。


遊びたいのだ。



ちいさな子供達は、いろんなひととふれあって


いろんなことを、覚えていく。


時には、いたずらをして

叱られたりするけれど



お母さんがやさしくしてくれれば

そんな時、安心したり。


ちょっと、いたずらしてみて

お母さんの優しさに甘えるのが

嬉しくて、そんな事をしたりする。


そうして、許してくれる優しい人が


そこにいるって覚えていく。


大切な人だって、思うのだ。




恋愛も、なんとなく似ている。

優しいその人が、わたしを

許してくれる。ささえてくれる。


そんな時、その人を

忘れられなくなる。


そういう恋もあったりする。





「ゆきのひとひら」の

続きを、クリスタさんは

読みはじめた。


「ゆきうさぎさんは、おみみをぴょこ、としてから。

さくさくさく。



丘のむこうがわに、あるいていきました。


ふわふわの粉雪の上に

かわいい、あしあとがちょこ、ちょこ・・・。」



クリスタさんは、自然に

クリシェの、きれいなメロディーを

口ずさんだ。



無伴奏の、バロック音楽のように

典雅な響きを感じさせる歌は

天使さんらしい、心を惹かれるものだった。



子供達も、めぐも


すっ、と


歌声に引き込まれた。




眠ってしまう子もいたり。



時間を忘れてしまうような、ひとときだった。


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