第61話 ふわふわ



電車が揺れても、クリスタさんは

かーるく、ゆらゆら。


わたしもダイエットしようかしら(笑)


なんて思うくらい、軽快だった。



あのくらい軽いと、ハイヒール履いても


ガイハンボシになんないわ(笑)


なーんて。



クリスタさんも、わたしも

ぺたんこの靴だけど。



もちろん、めぐは学生だから


そうだったりするけど。





階段とか、あるきづらいもん。





「あ、着きますよ」って

ルーフィは、クリスタさんをエスコートして。



2ステップの電車を下りる。




ワンコインを、料金箱に入れて。



透明なプラスチックの料金箱の入り口に

ベルベットのコンベアが、コインを


キャシュボックスに運ぶ様子を

クリスタさんは、不思議そうに

見ていた。


大きな瞳は、透明感があって。

のんびりとした表情なので


遠い、記憶の中にある

ノヴェルティな感覚、それを

思わせるような感じ。



ゆっくりとステップを降りて。



図書館の前、ペイウ゛メントは

柔らかい桜色。


街路樹が緑に生い茂る夏。


蝉の鳴き声が、そこかしこに。



木漏れ日、きらきら。




「さわやかですね」


クリスタさんは、白い夏帽子。

さらさらとしたサテン。



めぐは、ストローハット。

端っこがぱらぱらしてる、男の子みたいな。



夏、らしい。




わたしは、いつも取材で使っている

コットンの帽子。


地味だな(笑)。



でも、記者だもん。





ルーフィは、おばあちゃん特製の

パナマ帽。



すらりと背が高いので、よく似合う。





「大きな建物ですね」と

クリスタさんは図書館を見上げた。



ガラスの塔みたいに見える

図書館は

ステンドグラスがあったり、てっぺんに

太陽みたいなモニュメントがあったり。



ちょっとアート。


芸術っぽい建物だ。






シスターズ・アンリミテッド



もう、図書館は9時から開いているけれど

いつも、夏休みは自由出勤になっていて


勉強を一番にして、お手伝い程度でいいから、と

司書主任さんは、思いやりのある方。



それなので、エントランスから入る。



ひろーいフロアは、クーラーが無くてもひんやりと涼しい。


もちろん、クーラー入れればもっと涼しいけれど。



でこぼこの装飾タイルを模した床、LEDの壁面掲示板。


ステンドグラス。



凝った造形は、建築家さんがアート、として

がんばった結果だろう。




自動ドアから、第一図書室へ。



空港の金属探知機みたいなアンテナが、左右にあるのは

本についているRFIDを拾うためのもの。




正面左手に、緩やかな曲線を描いた貸借カウンター。


まだ、時間が早いので、人はほとんど居ない。




家族連れが多いこの図書館は、午後から混み始める。

夏休みは、朝から学生も来るけれど

大抵、上のフロアの学習室に直行してしまう。



家にいると、クーラーの電気代が掛かるので(笑)なんて理由だろう。


わたしも、学生の頃はクーラー好きだった。


今は、そうでもない。



年かな(笑)。




司書主任さんは、私達を見て、発見!と言う表情。




「いやぁ、3姉妹かと思った....。」と、にっこり主任さん(笑)。




めぐは「おはようございます。あの、主任、こちらはクリスタさん。わたしの...。」


そこまで言って困った(笑)わたしの天使さん、とも言えない。



「うんうん、そっくりだねぇ。いとこ?」と、主任さんは結構な誤解をしてくれて

めぐは助かった。



「それにしても、3人そっくりだね」と、それも意外なお言葉。



家族でない人から見ると、そう見えるらしい、と

初めて気づいた。





「本をご覧になるのなら、どうぞごゆっくり。」と、主任さんは

にこにこ。


めぐは、ちょっと困って「あの...主任、じつは、その....。ちょっと、

お休みを頂けないでしょうか。それで、代わりにクリスタを。」


と、主任さんに言うと、主任さんが今度はびっくり。



「えっ。...ああ、図書館は別にいいけど。そんなに忙しい訳でもないし。」



それは事実で、夏休みが終わる頃、子供たちで賑わうけど

貸借カウンターは混まない。


子供たちは、絵日記に書く天気を調べに来るのだ。



「クリスタさんを代わりに?...気を使わなくていいけども、でも、居てくれると

嬉しいね。夏休みだから、小さい子も多いし。」



児童図書のコーナーは、夏休みは子供たちで賑わうので

時々、めぐも手伝っていた。



お母さんが本を読めるように、赤ちゃんコーナーもあったりして。

絵本の読み聞かせも、人気だったりした。



「よろしくお願い致します」と、クリスタさんは澄んだ、明るい声で。




「いい声ですね。絵本を読んであげたら、ちいさい子が喜ぶかな。」



なんて、司書主任さんはにこにこ。




「めぐちゃんは、時間あるの?」と、主任さん。うなづくめぐを見て、



「それじゃ、すこーしだけ、クリスタさんにお仕事を教えてもらえると

ありがたいな」と。



「はい。ありがとうございます」と、めぐと、クリスタさん。



ならんでご挨拶すると、なんとかシスターズ、みたいな

歌手みたい(笑)。



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