18話 全身アブト〇ニクス系お嬢様
「ところでこのにいる方達の他にも、この精神異常者の集まりに参加している方はいらっしゃるの?」
「随分な言い様だな……。まぁそうだな、他にも大勢いるぞ。三節棍のオルニールに円月輪のサルトル、ランタンシールドのケイン、ショーテルのヒッポ。これでもまだまだ会の一部だ」
「全く聞いた事ない武器の名前ばかりですわね」
「まぁまぁ、今ここにいないやつらは置いておいてさ。ロゼちゃんだっけ?ハンマー使い同士仲良くしようよ」
ガイアが馴れ馴れしく話しかけるも、第一印象がクソみたいに悪かった為かロゼの視線が冷たい。
「そうですね、ここらで一つ新メンバーのロゼさんにもハンマー愛を語らって頂きましょうか」
そういえばケルンが司会進行をしていたんだったか。忘れていた。
「いや、勝手に新メンバーにしないでくださいます?あと別にハンマーにそこまでの愛もないのですけれど。たどそこそこ重さがあって斬撃が有効ではない相手への対抗手段ってだけで使ってますので……」
「またまたぁ、そんな細い腕なのにわざわざでっかいハンマー使ってるんでしょ?多少なりとも愛が無きゃ……ってかマジで腕細くない?どうやってハンマー持ってるの?無理じゃない?物理的に無理じゃない?」
「確かに細いわねぇ。依頼の時は金属鎧着込んで大盾も持ってるんでしょう?背は平均より高いけど太ってるわけでもないし。おっぱいは大きいけど。すっごく大きいけど」
コレットがまじまじとロゼの身体を見つめる。セクハラでは?
「確かに大きいな」
「大きいですね」
セクハラだった。皆が口々に大きい大きいと連呼していると流石に恥ずかしいのか、ロゼは顔を真っ赤にしてプルプルと震えていた。
「何故訳の分からない会に参加させられた挙句に、こんな辱めを受けなければいけないんですの……?」
「ロゼの怪力についてだが、一つ仮説がある」
「ヴァンさんはヴァンさんで欠片も流れに興味無いのは助かりますけど、それはそれで腹立つような気もしますわねぇ!」
「おそらくだが、ロゼは体内の微量な魔力を用いた強化を無意識のうちに行っているんじゃないかと思う」
ロゼの主張をガン無視して話を進めると、流石に内容が気になったのかロゼも少し興味を持ち始める。
「精査はしていないが、戦闘中のロゼから極めて微量な魔力反応が漏れ出る事がある。術式を用いてないから魔術と言っていいのかはわからないが。ロゼの記憶には新しいだろう、俺が術式を介さず強化をして足がボロボロになったこと。それを極限まで魔力量を抑えたものを常時行っているのだろう。そして戦闘中はそれが僅かながら活性化して、その反応を俺が捉えた、というところだろうか」
「足がボロボロって結構な無茶をしてるのねぇ。……で、それはどの程度の痛さなのかしら?」
「ドMはちょっとお静かにね」
「あぁ!クルツ君からの言葉責めは久しぶりね!」
このままでは話が進まないと感じたのかドMにクルツが諭すも、それすら糧とする無敵人類。最近コレットのドMっぷりが増している気がするが、そもそもドMっぷりが増すってなんだ。これ以上深く考えてはいけない気がする。
「外野がクソうるさいですわね。それはともかくとして、私にも魔力があったとは驚きですわ。でもヴァンさん、貴方が先日その強化とやらを行った時と違って私の身体は痛みとか特に無いのですけれど?」
「……あぁ、違いは魔力量と慣れじゃないかと思う」
ロゼの言葉で思考の深みから抜け出し、回答を続ける。
「ロゼの体内の魔力量は極微量だ。その為効果も少ないが反動も少ないのだろう。そしてそれを常時行っていたせいか反動の痛みにも慣れた、もしくは感じなくなったと考えられるな」
「待て、ヴァン。効果が少ないとは言うが、その少ない効果で重装備のまま森で戦闘してるってのか?」
ダムダ親方がふと疑問に思った事を口にした。それについては俺も未だに確信を持てていないのだが、とりあえず仮説を述べる事にする。
「それについてはあまりはっきりとは言えないんだが……。魔力で筋繊維を破壊し、その後再生というのを繰り返すことで筋トレと同じような効果を得ていたため、素の筋力が向上していたんじゃないか」
「え?じゃあなんでこんな腕とか細いんだ?」
「それは知らん。筋肉の密度が以上に高いんだろ」
「最後だけ投げやりですわね」
わからんものはわからんのだ。真面目に考察、検証をしたわけでもないのだから仕方ないだろう。
「でもそうですわね、確かに私がまだ幼かった頃の話ですわ。初めて農具を振るった時、最初は調子よくやっていたのですが、すぐに全身が痛いと泣いてしまっていましたわね。何回か繰り返すうちに痛みも少なくなって、結局は人一倍働けるようになったのですが」
「んんん?農具?」
「ロゼちゃんって貴族の隠し子か何かだと思ってたんだけど、もしかして違うの?」
驚いた表情を見せるクルツ、ガイア、コレット。そういえばまだ言っていなかったか。自己紹介の下りが丸々無かったから仕方ないな。
「は?貴族令嬢ですが?ロザリンド・フォン・フレースベルグと申しますが?」
誤魔化し方がパワープレイすぎる。
「いやいや、あなたクリント村の村長の娘さんだってマリーさんが言ってたじゃないですか」
今まであまり興味を示さなかったケルンがここにきてブッ込んできた。
「黙らっしゃいこのロリコンめ!」
「誰がロリコンですか!私はただ小さい女の子が大きな武器を持ってるのを見るのが好きなだけです!小さい女の子単品が好きなわけではないんですよ!」
「十分ヤバい奴なのよね」
「確かにヤバい奴なのは間違いないんだが、ケルンもコレットにだけは言われたくないだろうな」
結局この後、まともな議論もできずに定期集会は終了した。いや、この集会は基本的に性癖の殴り合いだからまともな議論になる事の方が珍しいまであるから、ある意味ではいつも通りとも言えるかもしれない。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます