第11話 敦美2

「順調だな、おい」


「そうだな。最初だし、少し早めに生ますか?」


「死んでも困るし、小さめでいいか」


私のお腹は外からでも分かるくらいに脈動していた。痛みは無いけれど、お腹の違和感だけは残っている


「その前に、回復させるにも俺のカロリーが足りねぇ、ちょっと飯をくれ」


「そう思って用意してあるぞ、おい。そこだ」


「おっ、サンキュー」


虚ろな目で蜂を見ると、その辺に転がっている肉団子みたいなものをかじりだした。あれの元がなんなのか考えたくもない


「お腹、痛……いっ」


「麻酔が切れてきてるみたいだぞ、おい」


「もうちょっと我慢してろ。もう食い終わる」


「ぐっうぅ」


「ん? これは勝手に生まれそうだぞ」


「それは予想外だな。じゃあ、強めの麻酔行くぞ」


蜂は私の腹に針を刺し、麻酔を流し込んだ。段々と私の痛みは和らぎ、下半身自体も動かなくなってきた。それと同時にお腹が外に向かって伸びる。痛くは無いけど、このままだと……


「ぎゃうっ」


「ああぁぁぁあ!」


私のお腹から赤ん坊が腹を破って出てきた。痛みは無いけれど、自分の内臓がこぼれるのを見て幻痛で吐き気がする


「すぐに回復だ、おい!」


「分かってる!」


蜂は私の破れたお腹に針を刺しつつ唾液を塗る。すると、破れた腹が嘘のように塞がっていく


「これでよし」


「次行くか、おい」


「またカロリーを補充したらな。俺の回復は老化も止めるし、永遠に生み続けることができるから安心しろ」


それを聞いて私は自分の精神が壊れて行くのを感じた。老衰することも無く、痛みはないとはいえ虫を産ませ続けるなんて。もう……死にたい……ガリッ


「こいつ、舌を噛み切りやがったぞ、おい」


「ちっ、無駄なカロリー使わせやがって。回復針」


針が刺され、私の舌は直ぐに再生した。自殺することも出来ない。もう、耐えられない……


「こいつ、急に反応が無くなったな、おい」


「あー、考えるのを止めたんじゃね? まあ、暴れるよりは都合がいいだろう。それより、産まれたやつはどうだ? なんだこりゃ、めずらしいな。虫でも人でもないな」


赤ん坊はいつの間にか3歳くらいの女の子になっていた。ただ、両手の甲にはダンゴムシのような甲殻がある。また、ところどろこもダンゴムシのような甲殻で覆われている


「お前、ちょっとそこの岩を殴って見ろ、おい」


女の子は、ダンゴムシの命令を聞いて拳を握ると、拳をガードするように甲殻が手を覆う。同時に体から湯気の様なものを出しつつ岩を殴る。女の子と同じくらいの大きさの岩が粉々に砕ける。産まれたばかりとは思えない攻撃力だ


「ほぉ、身体強化か。なかなか当たりじゃないか?」


「みたいだな、おい。これは次も楽しみだな、おい」


「まてまて、次は俺も試してみてーよ」


「寄生型と違って時間が掛かるのが難点なんだから、やるなら早くしろよ、おい」


「でも、こんだけ血の匂いが充満してるとやる気がおきねーな。一旦きれいにしようぜ?」


「俺は気にならないけどな、おい。まあいい、好きにしろ」


「とりあえずこの女を洗ってくるからお前はここの血を掃除しといてくれ」


「分かった。おい、ガキ、お前はちょっと飯でも探しに行ってこい」


女の子は、ダンゴムシに言われたまま外へ向かう。ダンゴムシは掃除というよりも地面の表面を削っていく。そして、削った地面をどこかへ捨てに行ったようだ


「よしよし、じゃあ、お前はこっちで洗ってやるよ」


私は引きずられるように蜂に風呂場へと連れて行かれた

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