第117話 ツルギ(1)
――ツルギ視点――
冒険者や衛兵達の表情には
「うおぉぉぉぉーっ!」
独りの中年剣士が声を上げ突撃する。
剣士の名は『バルクス』。オレの師匠である『トレビウス』の
だが
そのため、面白い位に敵が吹っ飛んで行く。
その姿を見て、
「師匠の
思わずオレは
「
師匠はそう言って――アッハッハッハ――と笑うと馬を走らせる。
アスカの作戦では
だが、あの調子では、街に入る前に
(まぁ、そのお陰で、こうして堂々と門から出られる訳だけどな……)
走り出した師匠の後にユーリアも続く。師匠の場合は【馬術】を習得しているようだが、ユーリアの場合は『馬が
当然だが、二人のように馬に乗るのは、今のオレには無理だ。
そんな訳でラニスと一緒に馬に乗り、その背中にしがみ付く形になっていた。
(ちょっとカッコ悪い……)
一方、彼女は、
「いい、変なところ触ったらコロスから♥」
笑顔で言う所が逆に怖い。
自分から一緒に乗るような事を言っておいて、これだ。
(そんなに嫌なら、最初から言わなければいいだろうが……)
「分かってるよ……」
ましてや周囲は
こんな時、アスカだったらどう返すのだろうか?
ラニスの身体に変なところなんてないけど?――と
(
しかし、ラニスはそういう事を気にしている訳では無かった。
「残念だったわね――ユーリアじゃなくて……」
と
「ああ、胸の話か……」
気にすんなよ――とオレは返す。
オレにとっては女の子の『おっぱい』という事に価値がある。
次に誰の『おっぱい』かだ。
大きさは二の次――いや、この場合は三の次だろうか?
「ラニスは可愛いし、性格はキツイ所もあるけど……」
オレは好きだぜ!――とサムズアップする。
それよりも、今は北西の空だ。
『
街を出る前と比べ、明らかに暗くなっていた。
(急いだ方がいいかもな……)
「バ、バカじゃないのっ!」
と
それから、
照れてるのか?――と言おうとした。
だが下手に刺激して、殴られても
その程度は学習している。
こういう時、アスカだったら
――そんなの決まっている!
「今は敵に集中するぞ!」
オレの言葉に――分かっているわよ――とラニス。
どうにも<冒険者ギルド>を出てから、口が悪くなった気がする。
(オレに対してだけかも知れないが……)
気にしても仕方がない。オレは敵に集中する事にした。
前方の敵は師匠がすべて薙ぎ払ってくれているので助かる。
(それよりも……)
「ラニス、馬は止めるなよ!」
オレはそう言って、馬から飛び降りた。
同時に素早く剣を抜く。
――ガキンッ!
相手は素手の
衝撃を相殺出来ず、吹っ飛ばされるオレ。
師匠との特訓で【受け身】を覚えていなかったら、まず気を失っていただろう。
地面を転がるが、その反動を利用して起き上がった。
目の前には2メートルを超える赤い肌の<魔族>。
剣で斬った
それよりも、オレが【剣】の<勇者>でなければ、剣が折れていた。
厄介な相手だ。
(今のオレとは相性が悪いな……)
「いきなり攻撃とは――<魔族>ってぇのは
挑発するオレに対し、
「なぁに、たまたま着地した場所にお前が居ただけよ……」
とは<魔族>。空には
いや、黒焦げになり、次々に落ちて来る。
どうやら、ハナツが暴れているようだ。
(運んで
相手は【飛行】が苦手らしい。
(いや、それよりも……)
――こいつはどうみても、敵の
強いのは確かだが、頭が悪そうだ。
自慢じゃないが、オレも良い方ではないので同類は
「オレ様の相手をしろ」!
と<魔族>。どうにも、戦闘が好きなようだ。
オレは――ベーッ!――と舌を出すと、
「ツルギ、乗って!」
馬を走らせ、戻って来たラニスの手を取ると、
「テメェーの相手なら、街の広場で待ってる奴が居るぜ!」
そう言い残し、馬へと飛び乗った。
(あの魔力量――恐らく『四天王』の一人か……)
師匠からは無駄な戦闘を
前方の師匠達に追い付くため、ラニスは加速した。
やはり、相手は早く動けないようだ。追い掛けて来る様子はない。
むにゅん♥――手には柔らかな感触を感じる。
「ま、待てっ! こ、これは違う……」
しがみ付く際、ラニスの胸を
手に収まる
しかし、それよりも先に慌てて手を離してしまった。
その
「うわっ!」
(それはそれで苦しいのだが……)
「サ、サンキュ!」
助かったぜ――とオレは告げる。
「バカね……また落ちる気?」
とラニス。
「怒ってないのか?」
オレが確認すると、
「
と聞かれる。
「ああ、
オレの答えに――じゃあ、いいわ――とラニス。
どういう風の吹き回しか知らないが、助かったようだ。
アスカが言っていたが、これが『普段の行い』という奴だろうか? <魔族>の一撃を防いだ事が『おっぱい』を触った事をチャラにしてくれたようだ。
(ひょっとして<魔族>を倒すと……)
――『おっぱい』触っても許されるのか!
大変な事に気付いてしまった。
「ラニス!」
オレの呼び掛けに、
「
顔を真っ赤にして返事をする。
そんな彼女を――ちょっと可愛い――と思ってしまった。
だが今は、それよりも確認しなければいけない事がある。
「<魔族>を倒したら、また『おっぱい』触らせてくれ!」
――パシンッ!
乗馬中だというのに、オレの頬を器用に平手打ちするラニス。
「バッカじゃないの!」
急にプンスコする。
さっきまで照れていたのに、急に怒り出しやがった。
(やっぱ、女はよく分からなねぇや……)
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