第110話 防衛作戦(2)


「『ロリライブ』――最初は意味が分かりませんでしたが……」


 とウラッカ。


 ――安心して欲しい。


 僕自身、異世界に来てまで何故なぜ、アイドルの制作プロデュースみたいな事をしているのか、意味が分からないのだ。そんな僕に代わって、


「なるほど!」


 とはヨロイ。勝手になにかを理解したようだ。


「つまり……オレ達が今、無事でいられるのは『アスカのおかげ』という訳か⁉」


 とおどろく。


 ――いやいや、お前達が『勇者召喚おひろめ』をサボったからだよね?


「おおっ! 言われてみれば……」


 とツルギ。納得の表情だ。


流石さすがはアスカ君です♥」


 ハナツに関しては、うっとりとした表情で僕を見詰めた。

 皆で『変な勘違い』をするのはめて欲しい。


「式典に『ロリス教徒』を近づけないのが目的だと聞いていましたが……」


 それは建前だったのですね――とはラニス。


(この『お姫様』は――城が破壊された――というのに……)


 ――みょうに生き生きとしていないか?


「はい、その通りです!」


 とはウラッカ。


「敵をあざむくには、まず味方から!」


 ニンジャが一度は言う台詞セリフです!――彼女は得意気に胸を張る。


ニンジャではなく、ウラッカが言ってしまっているけどね……)


 彼女が可愛かわいらしく目配めくばせをするのに対し、僕は苦笑した。

 その一方で――


「そうだったのですか?」


 とセシリアさん。


 ――いつの間にあらわれたのだろう?


「以前<ロリス教>の復興に尽力じんりょくしてくれると言ってくれていましたが……」


 国家を相手にしていたのですね!――とおどろきの表情を浮かべていた。


 ――そんな事、言っただろうか?


(『協力する』とは言ったかも知れないけれど、記憶に無い……)


「確かに<勇者>は三人とも無事でゴザル」


 とはトレビウス。あごに手を当て、


「そして、我ら『ロリス教徒』も無傷……」


 と感心する。確かに『ロリライブ』を開催した事で、結果的に『ロリス教徒』達を救う形になったのは事実だ。


「『絶望』と思えるこの状況もくつがえせますね!」


 とは人型兵器ロリガインだ。


 ――ちょっと待って欲しい!


なにやら戦う流れになっていないか?)


「これでわれらは<勇者>と共に魔王軍を倒した英雄となります!」


 人型兵器ロリガインは都合のいい解釈かいしゃくをする。


(やっぱり、戦う気なんだ……)


 実際、彼らの戦闘能力を持ってすれば、不可能ではない。

 むし何故なぜ、誰も「お城へ救助に行こう」と言わないのか不思議だった。


 一旦、冷静になった方がいいだろう。そんな時、


「おーい!」


 と声が聞こえる。声のぬしはレイアだ。

 慌てた様子で、こちらに向かってくる。


 ――なにかあったのだろうか?


「た、大変だ! 西の空が暗くなって……」


 <魔物>モンスターの群れが真っ直ぐこの都市に――と報告してくれる。

 ギルドへ連絡した所、僕へ知らせるように言われたらしい。


(僕ならなんとか出来ると思われてしまっているようだ……)


 ――しかし何故なぜ、王都ではなく神殿都市ファーヴニルに?


「やはり<魔族ヤツら>のねらいはこの都市のようじゃな……」


 唐突とうとつにアイドル衣装に身を包んだ師匠が現れ、意味深にげるのだった。

 その場の全員が彼女に注目する。


なんだろう、この引き返せない『強制イベント』感は……)


「いったい、どういう事なのでしょう?」


 ルナ様?――とセシリアさんが質問すると、


「うむっ! わしもアスカから聞かれ、調べてみたのじゃが……」


 この都市の地下には『古代迷宮ダンジョン』が存在するのじゃ――と師匠。

 ゲームだと<魔王>との戦いの前に入れるようになる『隠しダンジョン』だ。


 世界には<竜>の名前をかんする都市があって――各都市には『古代迷宮ダンジョン』が存在する――という設定らしい。


何処どこで、その情報を手に入れたのかは分からならぬが……」


 奴らのねらいは『古代迷宮ダンジョン』に眠る宝なのじゃ!――と師匠は言い切る。


「確か、古代兵器を動かす鍵があるとか……」


 とはラニス。皆の視線が集まったので、


「う、うわさですけどね……」


 あわてて付け足す。


(それ――王家に伝わる――っていう枕詞まくらことばがあるヤツだよね?)


「なるほど! 王都の爆発は陽動で――この都市を落とすのが目的だった――という訳だな」


 ヨロイはそう言って、あごに手を当てる。


「それにしてはヤリ過ぎじゃね?」


 とはツルギ。


「仕掛けたのは人間だろ?」


 と疑問を口にする。

 自分達が支配するはずの『城を爆破するのは可笑おかしな話だ』と言いたいのだろう。


「それは大臣達が捕まったからでしょう」


 とはラニス。


 彼女の推論によると――『人間側の協力者である『大臣』が失脚しっきゃくしたため、王都の制圧が不可能になった』と<魔族>は考えたのではないか――というモノだった。


「そのため、爆破という手段に出たのでしょう」


 と語る。手に入らないのなら――爆破してしまえばいい――という考えらしい。

 人間の作った『文化』や『芸術』、『学問』に<魔族>は興味がないようだ。


 文化人の僕としては悲しくなってしまう。


「もしくは、元々『大臣』をふくめ、始末するつもりだったのかも知れません」


 と続ける。

 <魔族>と一度、戦闘をした僕としては、その可能性の方が高い気する。


「少なくとも、今は調べている時間がないでゴザルな」


 とはトレビウス。その後、皆の視線が何故なぜか僕へと集中する。


(『指示をくれ!』という事だよね?)


 ――冗談じゃない! どんな無茶振むちゃぶりだ?

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る