第96話 試練の洞窟(2)
昼食を終えた僕達は、
ゲームと違って
また、気付かない内に疲労が
メルク達を疲れさせる訳にもいかない。
(色々と思い通りにはいかないな……)
――まぁ、最大の理由は<勇者>だ。
肝心の彼らが
そのため<ザマスール教>の
無理に探索を続ける理由が無くなってしまったのだ。
(状況を報告する
ツルギ達<勇者>も『勇者召喚』の日までは大人しくしている必要がある。
危険な行動をさせる訳にはいかない。
(ユーリアについては……)
――『ヨージョ神殿』で
「その
僕は後方を歩くユーリアに視線を向けると苦笑する。
ツルギの
「確かに、
とラニスが同意してくれた。
<魔族>である彼女もまた<魔素>を吸収する事が出来るらしい。
その
「えーっ! 今の
とはツルギ。
しかし次の瞬間、ラニスの裏拳を顔面に食らう事になる。
「うぎゃっ!」
ダメージを受けつつも、レベルが上がっているお陰か――回復が早い。
ただ『痛みを感じない』という訳ではないだろう。
赤くなった鼻の頭を
(学習しないな……)
一方、当事者であるユーリア。
彼女は意味が分かっていないのか――キョトン?――としていた。
メルクと手を
現在、先頭はルキフェとアリスに任せていた。
来る途中ですべて片付けてしまったので、比較的安全な
「気になっていたんだけど……」
聞いてもいいかな?――僕はユーリアに質問する。
「
可愛らしく首を
「『おっぱい』だな!」
とはツルギ。
ラニスに拳を振り上げられ、慌てて
一方、ユーリアは自分の胸を見ていた。
変な誤解をされてしまったようだ。
「ユーリアが現れた時の魔法についてだよ」
と僕は訂正する。突如として空中に現れた光の魔法陣。
あの手の『転移魔法』は、いくらレベルを上げても習得は出来ないだろう。
「『召喚魔法』の一種なのかな?」
もし<魔族>が使えるのなら
「それは大丈夫です」
ユーリアはニコリと笑う。
「あの魔法は、神殿同士を結ぶ『時空魔法』です」
と答えた。
どうやら<魔族>の世界にも似たような神殿があるらしい。
「特殊な条件下でしか発動しません」
と語る。
聞き耳を立てていたラニスは――ホッ!――と胸を
当然の反応だろう。
あんな魔法があるのなら<魔族>がいつ総攻撃を仕掛けてきても
「『時空魔法』?」
僕は首を
――もしかして、元の世界に帰れるのかも知れない⁉
別に今
時間の流れはどうなっているのだろうか?
(せめてメールや手紙ぐらいは、送る事が出来れば……)
――いや、そんなに都合よくはいかないだろう。
「つまり、僕達も<魔族>の世界に行けるのかな?」
僕は軽い気持ちで聞いてみた。
その問いに、ユーリアは静かに首を横に振る。
「あれは神々が作った装置です」
と答えた。
やはり、そう上手くは行かないらしい。
「ですので『
と教えてくれる。僕は、
「つまり<勇者>が現れた時にのみ『使える』という事なのかな?」
タイミング的にも、ツルギが『勇者の証』を手に入れた時だった。
――<勇者>の元に<巫女>が現れる
そう考えれば、色々と
本来この世界は『もっと自由に行き来が出来た』のか知れない。
どうやら現状では、都合よく利用するのは難しそうだ。
「出口でちよ!」
とルキフェ。
その言葉に、暗い場所が苦手なイルミナは少し安心した様子だ。
「<
とはアリス。
お腹が空いているのか、
「やっと出られるぜ!」
そう言って、ツルギは走って行ってしまう。
やれやれ、彼には僕達の話は退屈だったようだ。
† † †
「
無事に洞窟の外へ出た僕達だけど、油断は出来ない。
森の奥には<魔族>が
目を
(少し休憩した方がいいだろう……)
僕は【魔物感知】を使用する。
安全である事が確認出来たので、メルク達に出てくるように指示した。
先に出たルキフェとアリスは落ち着きなく駆け回っている。
(元気だな……)
ツルギは身体を伸ばすと体操を始めた。
面白そうだと思ったのか、ルキフェとアリスも
「少し休んだら、場所を移動しよう」
この辺りはまだ、木々が
目を
「これが<
とはユーリア。感動しているようだ。
僕とラニスは困った顔をする。
<
(<人間界>ではないのか……)
――いや、今はそこはどうでもいい。
確かゲームでは<魔界>は夜みたいな場所だった。
僕は気を取り
「青い空は珍しいのかい?」
ユーリアに質問すると、
「はい!」
と返事をして、彼女はメルクを抱きかかえた。
「メルクちゃんと一緒ですね!」
とっても綺麗です♥――とユーリアは喜ぶ。
(メルクの属性は<水>なんだけど……)
今は黙っていた方が良さそうだ。
「そうか――色々な世界があるんだったな……」
僕は『この世界』の事を考える。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます