第68話 冒険者ギルド(11)


 思ったよりも、多くの報酬を得る事が出来た。

 有難ありがた誤算ごさんである。


 僕は一階の道具屋へと急ぐ。

 『進化』に必要な<アイテム>である『精霊石』エレメンタルストーンを購入するためだ。


(ゲームと違って、在庫がない可能性もあるからな……)


 ルキフェには『闇の石』を――

 イルミナには『光の石』を購入する。


(メルクの時のように『相性が良い』といいのだけれど……)


 ――神殿に戻ったら、早速、『進化』させよう!


 けれど、その前にアリスとガネットの武器を選ぶ。

 なにを使うかは、彼女達の意思にまかせる事にした。


 結果、アリスが選んだのは『棍棒』だ。

 『骨棍棒』というモノで、原始的だけど軽くて丈夫。しかも、低予算。


 ガネットはモジモジとしていた。なので僕は、彼女をきかかえる。

 そして、優しく聞く。すると耳元で、


「ス、スコップがいいですぅ~」


 と言った。当然、武器屋には置いてはいない。

 道具屋で、一番小さなモノを購入する。


 『スコップ』は道具としても使えるので、悪い選択ではないだろう。


(後は飛び道具も欲しい所だけど……)


 彼女達の自主性に任せる事にしたのであきらめる。

 その代わり、僕は自分用に『飛来具ブーメラン』を購入した。


(後で練習しないとな……)


 弓も選択肢にはあった。

 けれど、魔法やメルクの変身能力がある。


 更にルキフェ達は飛行能力も備えていた。

 現状、必要ないと考える。


 ――そうだ!


 僕はメルクにも――武器を買ってあげる――と言ったのを思い出した。

 早速、選ぶように言ったのだけれど、


「私は大丈夫だよ!」


 と遠慮されてしまう。

 確かに<スライム>である彼女には必要なさそうだ。


 僕は武器の代わりに、装飾品アクセサリーを買ってあげる事にした。

 丁度<魔法使い>用の指輪が目に留まったからだ。


 最初は――自分用に――と思っていたのだけれど、これでいいだろう。

 見た目も女性を意識しているのか、可愛らしいモノが多かった。


 魔石をめ込んだモノもあったけれど、流石さすがに高い。


(少し等級ランクを下げよう……)


 場所を移動すると――<魔力>を上昇させる効果がある――というモノがあった。

 『上昇』と言っても少しだ。けれど予算的には問題ない。


 青く光る石など、メルクにピッタリだろう。


「ありがとう! お兄ちゃん♥」


 大事にするね!――とメルク。

 僕に抱き着いたかと思うと――CHU♥――頬に接吻キスをした。


(やれやれ、そういうのは何処どこで覚えてくるのやら……)


 しかし、流石さすがに子供の指に合うサイズのモノはない。

 けれどメルクは<スライム>だ。体内へと取り込む。


 ――器用なモノだ。


 僕は感心する。ルキフェ達がうらやましがる中、


「えへへ♥ これで、もう無くさないよ」


 とメルクは微笑ほほえむ。


(僕としては、普通に使ってくれた方が助かるのだけれど……)


 <ステータス>をのぞいてみる。

 すると<魔力>の値が上昇していた。


(どうやら、問題なさそうだ……)


 メルクも喜んでいるので『これで良し』とする事にした。


(さて、本来なら新しい依頼を受ける所だけれど……)


 手持ちの依頼がなくなってしまった。

 しかし現状、必要な<アイテム>はない。


 これなら予定通り、アリスとガネットのレベル上げに専念した方が良さそうだ。

 けれど『宵闇よいやみの森』は<魔物>モンスターが減ったため使えない。


 僕は<魔物>モンスターについて、情報収集を済ませる。


回復薬ポーションも多めに買った方がいいだろうか?)


 ――いや、<錬金術師アルケミスト>の<スキル>がある。


 まだ、お金には余裕があった。

 念のため、アリスとガネットの分も『精霊石』エレメンタルストーンを購入する事にした。



 †   †   †



(やはり、買い物は楽しい……)


 必要経費とはいえ、散財さんざいしてしまった。

 次もまとまったお金が手に入るとは限らない。


 報酬ほうしゅうのいい依頼が受けられる保証もないだろう。


(あの情報次第かな……)


 僕は<一角いっかくウサギ>が大量発生している――との情報を手に入れていた。

 『微風そよかぜ街道』の周辺だ。


 アリスを助けた場所も近い。

 あの時も<一角いっかくウサギ>ばかりだった。


 あの辺りを探索すればいいはずだ。

 ルキフェとイルミナの『進化』が終わったら、早速、行ってみる事にする。


 <一角いっかくウサギ>なら、もう僕達の敵じゃない。


(アリスとガネットのレベル上げには、丁度いい相手だ……)


 ――いや、その前にレイアの所かな?


 進化したルキフェ達を紹介する予定だったのを思い出す。

 新しい武器や<スキル>、仲間が増えると、ついつい確認したくなってしまう。


(僕の悪いくせだな……)


 自分のゲーム脳に対し、少し反省する。


「お待たせしました――アスカ君」


 とセシリアさん。

 ヨージョ神殿に戻ってきた僕達は、彼女に頼んで部屋を借りた。


 その交換条件という訳ではないけれど、彼女も『進化』する所を見たいそうだ。


(当然だよね……)


 そのため、彼女の仕事を手伝いながら、僕は待っていた。

 むしろ、お世話になっている身としては、これ位すべきだろう。


「それじゃあ、二人とも……準備をして――」


 恐らく、メルクと同じ位の大きさに成長するはずだ。

 二人には、下着姿になってもらう。


「いいでちよ!」


 とルキフェ。ヤル気満々だ。


なにも考えていない――とも言えるけど……)


「問題、ない」


 とはイルミナ。

 こちらはいつも通りだけれど、明らかにルキフェを意識していた。


 <コウモリ>には負けない!――という意気込みが感じられる。


「じゃあ、ルキフェからだね……」


 『闇の石』はすでに、彼女に渡してあった。

 僕は<魔物使い>の<スキル>【レボリューション】をルキフェに使用する。

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