第75話 第36.5局①

「も・・・もひゅもひゅ」


 電話越しのあの子の声は、緊張に満ち満ちていた。


「・・・そんなに緊張しなくても。」


 思わずあきれてしまう私。まあ、でも仕方がないのかもしれない。今まで、あの子からの一方的な連絡は多々あれど、私から連絡した事なんてほとんどなかったのだから。


「だ、だって・・・姉さんから電話してくれるなんて久々で・・・。」


「・・・ごめん。」


「あ、いや、責めてるわけじゃないよ。全然。」


「・・・ありがとね。」


 どうにも気まずい。以前の私って、あの子とどんなふうに話してたんだっけ?


「そ、それで、姉さん。ど、どうしたのかな?」


「ん。お礼、言っておかなきゃなって。」


「お礼?」


「そう。」


 私は、ゆっくりと深呼吸をする。改まってお礼を言う。なんてことないように思えて、案外緊張するものだ。





「私が落ち込んでた時、彼を呼んでくれてありがとね。その・・・すごく助かった。」





 ・・・・・・


 ・・・・・・


 沈黙。あの子は、今何を考えているのだろうか。どんな表情をしているのだろうか。電話越しであることを今更ながらに後悔する私。


「ね・・・」


「?」


「姉さんにありがとうって言われた~~~!!!きゃ~~~!!!」


 ・・・何この反応。

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