第21話 第15.5局①

 夢を見た。


 姉さんが姉さんでなくなったあの日の夢。師匠が怒り、私は泣き、姉さんは無表情。三者三様という言葉がこれほどまでに当てはまる場面もそうないだろう。


 暑い。2時間のタイマーを設定していたエアコンが切れてしまっている。眠気で重い体を起こし、エアコンのスイッチを入れる。ふと、時計を見ると、時間は4時を指していた。まだ眠れる。昨日の対局が長引いてしまったせいだろうか。いつもより疲労が取れていないように感じた。いや、単にこんな時間に起きてしまったせいか。


 昨日の時点で5敗。もう今期の昇給は絶望。だが、諦めるわけにはいかない。私は決めたのだ。私が、姉さんの代わりに4段になってやると。


 ベッドに横になり、睡眠用の音楽をかけるためにスマートフォンの電源を入れる。その時だった。


「!!!」


 声にならない叫び声をあげ、私はベッドから跳ね起きた。スマートフォンに、ラインのメッセージが表示されていたからだ。急いでラインのアプリを開く。そこには、このようにあった。


『頑張りなさい。(返信不要)』


 私は、スマートフォンをぎゅっと胸に押し付けた。

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