第54話 弟子、カブトレ!を教わる

遥香が結衣に質問したこと。

それは、日数だけが進んで、画面が変わらないこと。

チャートも変化しないこと。

当然、四季報も変化しないこと。

などなど、分からないことを羅列した。



結衣は、遥香の話が終わると、まずは遥香には 確認した。


「板ってあるでしょ!?」

「板!?えーっとあった。」


遥香は慌ててDSに電源を入れて、確認して答えた。


「板を表示したままで、時間を進めてみて!」

「は~い。」


言われた通りにすると、表示されている数字がコロコロと変わった。


「あっ、変わった、変わった。」


遥香の喜ぶ声が、スマホを通して結衣の耳にも伝わって来た。

結衣も遥香に喜ばれるのが嬉しくなって、更に話を続けた。



「今までハルが見てた画面は、時間単位では変わらない画面なのよ。」

「でも、チャートも変わらなかったよ。」

「チャートは、何足って書いてある?」

「えーっと、日足って書いてある。」


遥香は、チャートに種類があるのを余り理解していなかった。

チャートは日足以外に週足や、月足があるのは知っていた。

しかし、日足が主に使われると以前に読んだ本に書いてあったので、初心者の自分は日足だけ見てれば良いと、勝手に思い込んでいた。



「日足は、1日単位でしか変わらないから、日を跨いで注意深く見てないと分からないわよ。」

「そうなんだ。」


納得する遥香。


「分足って無い?」

「えっとちょっ、あっ、ある。」

「それを表示してみて。」

「はい。」


遥香は、結衣に促された通りにボタンを押した。



カブトレには、5分足がある。

5分足は、主にデイトレーダーが使用する足だ。

日足は1日単位の値動きだが、5分足は5分単位の値動きになる。

だから、カブトレでは、5秒経つ毎に新しい足が表示される。

サクサクと変化する画面は、動かないと嘆いていた遥香にとっては、感動的ですらあった。


「あ、すごい!」


遥香は、素直に喜んだ。



「そんなことで喜んでないで、この間の帰り際に、あたしが教えたやり方覚えてる??」

「覚えてますよ。」


まだ喜びの色が残る声で、遥香は答えた。



よろずのが帰った後。

結衣は遥香に、投資法を一つ教えていた。

それは、よろずのが基本とする投資法。

つまり、三本陰線の投資法のことだ。

遥香にねだられて、よろずのが簡単に説明したのを、結衣がもう少し詳しく説明していた。



この投資法は、3本以上陰線が続いたら、次に陽線が出た時は2本以上続くだろうと言う安易な仮定の下で、よろずのが実際に使っている投資法だ。

具体的には、9時15分が過ぎたところで下落上位銘柄を検索する。

検索された上位銘柄の中で、寄りから陰線ばかりが並んでいる銘柄をピックアップする。

後は、ピックアップされた銘柄が、最初に陽線を出した時に買う。

そして、陽線が続く限り持続し、陰線が出たら売ると言うものである。



説明された時、遥香はそんな簡単なやり方で、本当に儲かるのかと思った。

その思いは、今も変わらない。

だから、丁度今、試してみようと思った。



「覚えてるなら、やってみなさい。」

「言われなくても、やってみますよ。」


首にスマホを挟みながら、遥香は言った。

空けた両手で、遥香はDSとタッチペンを持ってコマンドを探した。

まずは、下落率上位銘柄を探さなければならない。

その為には、下落率でソートすることが必要となる。

その機能を、遥香は最初に探したのだった。

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