124恥目 社長!純文学ってなんですか?

「ここか・・・・・・」


 やっと来た。来てしまった。菊池さんが居るはずの、建物の前まで来れたんだ。


 立派なコンクリート建築の建物を見上げると、僕は東京を感じた。平成で言うところの、地元から新幹線で東京駅を下車。東京駅を出ると丸の内のオフィスが都会を見せて来て、圧倒されるのと似ている。

 昭和の東京に住み慣れて来たけど、やっぱり名の通った場所に来ると田舎者感を隠せない。


 きっとこの中に彼は居るに違いないんだ。株式会社と言うくらいだから本当に立派な会社。僕みたいな凡人じゃ入社できないような、頭のいい人達が沢山いるんだろうな。


 はあ、緊張する。だからこそ、きちっとしなくては。

学生服の塵を払って帽子を整える。鏡があればいいけど、僕はそんな洒落た物を持っちゃいない。他の3人に「変?」と問いかけて、おかしいところがないか見てもらった。大丈夫だと言われたら、もうあの扉を開けて行くしかない。


 死ぬほど緊張している。さっきあれだけ心臓を働かせたのに、またドッコンドッコンいっている。この緊張は不安だ。

 菊池寛という人がどんな人柄なのか、すぐに怒ったりするようなオジさんでないか――という事が気がかりなんだ。


 でも、それでも僕は行く。

 リュックの中にはお守りがわりに書いてもらった、しゅーさんの文字がある。何でもないような事だけど、それだけで一歩踏み出せる。


 しゅーさんに家を出る時に【元気で行こう。絶望するな。】と、新しい紙に書いてもらった。これはしゅーさんが紡いで来た言葉の中でいちばん好きな言葉だ。

 僕はいざという時、必ずこの人が産んだ言葉に救われてきたんだ。挫けそうになったら何度も呟いてきた、言わばお守りさ。

 彼はこの言葉になんの意味があるんだと不思議がっていたが、君が未来に綴る言葉だとは教えてやらなかった。


 このお守りがあれば、この頭の良さそうな会社に入る事も、菊池さんに会うのだって平気だ。

 平成の僕じゃあ、学歴を気にしていたから無理だろうけど。心臓が煩いのと、左膝がビクビク動いている以外は平気さ。

 両頬を両手で2度叩けば、覚悟は決まる。


「よし・・・・・・あ、この中には僕だけで行くからね」

「1人になるなって言われたろう」

「言われたけどさ。でも、此処には1人で行きたいんだ。しゅーさんに関わる事なら、僕だけで」

「・・・・・・なあ、たまには言うこと聞いてくれないか?」


 中也さんは僕を止める。自分も行くと言って聞かないし、1人では行かせてくれない。しかし僕も負けじと首を横に振った。


「もしまた攫われたらどうするのぉ・・・・・・要は可愛いんだから、中にいる狼に食べられちゃうかもよぉ」


 父さんも体を左右に揺らし、「僕も行く」と言ってきかない。しつこいようだけど、1人で行くと決めたからには、そうする。


 初代さんにバレて怒られてもいい。正直な所、僕はあまり良くない事を考えている。

 どうしても兄に芥川賞を取って欲しいから、父さんと中也さんにはそのための文章を書いて欲しくない。ライバルが増えると迷惑なんだよ。


 何故か「檀一雄」を名乗る、父さんではない父さん――。

 それから、史実と異なる道を歩めど詩人である中也さんが本気を出したら、どうなるかわからない。敵は少ない方がいい。

 父親でも、好きな人でも、この賞だけは他の誰にだって渡したくないんだ。


 心配なのはわかるけれど、何もそんなに心配されなくっていい。第一、なんだよ。中に居る狼って。男はみんな狼よ! 的なあれか。

 だとしたら見当違いもいいところ。父さんに事実を突きつけてやることにした。


「攫われるもんか。言っておくけど僕、そんなに可愛い方じゃないからね。胸もなければ声も低い、あげくに顔も傷だらけ! 女として見られるなら、とんだじゃじゃ馬だって言われて避けられるよ! しかも攫われたのって男としてだからね!? あの洋館はもう無いし――また攫われるか、ボケ!」


 濁流のように言葉を早口で勢いよく押し出して一気に言う。父さんは体を後ろに退け反らせ、口を開けてポカンとしていたが、中也さんはまた始まったという顔。


「わかった。そこまで言うなら1人で行けばいい。でも30分経って戻ってこなかったら中に行く。いい?」

「そんなに心配ですか?」

「心配だよ。本当は離れている時間なんか欲しくないんだから」

「はあ」


 また何か言わわれると思ったら、中也さんは伏し目がちだ。とっても寂しそうな表情をしている。最近、よくこういう顔をしているのをみるようになった。僕があまり心配をかけるから、疲れているんだろうか。


「純文学が何かって聞いてくるだけですから、30分経たないですぐに戻りますよ」

「約束だよ」


 中也さんの手から、そっと撫でるように離れると、彼は何かを詰まらせように苦しそうな声で、そう言った。

 たったそれだけを聞きに行く。それだけなのに永遠のお別れみたいな雰囲気だ。

 僕は少しでも早く戻れるように、3人に背を向けて、会社の扉をノックもせずに押し開けた。


 ――。


「すみません! 菊池寛って人にご用事があって来ました!」


 社内の受付らしいカウンターに両手をついて身を乗り出す。僕は出版社のことなんか何一つ知らないが、とにかくデスクに向かう男達が一斉に僕を見た。


「菊池さん、いらっしゃいますか? あ、僕は生出要って言います」

「・・・・・・」


 僕の問いかけに誰一人返事もしない。これでも一応来客なんですけどね。全員無視。そんな事ある? この会社大丈夫ですか? 絶対に電話とか3コール以内に出ないでしょう。平成で勤めていた会社じゃ怒られたぞ。

 いやいや、でもきっと忙しくって上手く聞こえなかったんだ。もう一度声をかけてみよう。


「お忙しい所すみません。菊池寛さん、菊池さんにお会いしたいんですよ。5いや3分程時間をくださいませんか」


 カウンターから降りて僕にしては酷く丁寧に、帽子を外して頭を深々と下げた。

 心の中で30秒数えてから頭を上げると皆こちらを向いているのに目を逸らす。逸らす前に何人かと目があったんだから、僕が居ることはわかっているはずなんだ。本当に忙しいところ申し訳ないけど、少しでいいから時間をくれ。


 もしかして要件を先に言わないとダメな感じですか?


「質問変えます! 純文学って何ですか?」


 シーン。

 もしもーし。頭の良い子の皆さーん。学歴無し子のお馬鹿なご質問には答えて頂けないのでしょうか? それともお仕事が忙しくって、僕なんか見えてないのでしょうか?


 これはこのカウンター乗り越えるしかないのでは?

 最も近くのデスクに座る男に、身をもっと乗り出せば肩に手が届きそうだった。行儀は悪いが、ひんやり冷たい受付カウンターに上半身を乗せて、右手を伸ばし、男の肩を指先でトントン叩く。

 そして、なかなかご飯に来ないしゅーさんを呼ぶように大きな声で、はりきって!


「あ、の!」

「痛えっ」


 声をかけたとたん、男の体はビクンと跳ねたし、手元からはバチン! と、挟むような音がした。見なくてもわかる。痛い音だ。

 男は椅子の上で体を丸め、左足をだけを折り曲げて悶えている。あまり痛そうにするもんだから、また肩を叩いた。


「あの、なんかしました?」

「爪切ってたんだよ! お前のせいで肉挟んじまった!痛ってえ!」

「あらー・・・・・・すいません・・・・・・」


 覗き見ると左足の親指の先から、じんわりと血が出ている。自分が痛いわけじゃないのに顔が歪んだ。痛そう。

 悪い事をしたと頭を掻いて謝ったが、元はと言えば返事をしなかった其方にも落ち度があるのではないだろうか。僕も悪いけど、其方も悪い。


「それであの、なんつうか、大変申し訳ないんですが、菊池さんは・・・・・・」

「社長は忙しいんだよ! ガキなんか相手にしてる暇ないっつうの! 帰れ帰れ!」


 爪切りの男が一言そう言えば、他も同調して帰れと言ったり、クスクス笑ったりして来た。バカにされている。こっちは本気で菊池さんに会いたいと言っているのに、子供扱いして門前払い。


 僕は今日初代さんとの約束を2つ破る予定だ。

 まず、1人にならない事。そして2つ目は喧嘩はするな――である。

 申し訳ないけど、それは無理なようだ。僕は頭に血が上りやすくて、頭よりも体が先走り、気がついた時には、もう止められないでいる。


「子供じゃねぇ! 大人だ!」


 カウンターを拳で思い切り叩いたら、痛い。はずなのに、痛みは感じない。だって僕は、キレているんだもの。必然と声は荒くなる。


「じゃあその学生服はなんだ! 学生だろ、お前は!」

「学生だからなんだよ! 子供も大人と関係ないね! お願いです! 菊池さんに会わせてください!」

「うるせえ! ここは子供の来る場所じゃないんだよ!」

「うわっ!」


 何回か言葉の豪速球を投げ合うと数人の男がカウンターをくぐり抜けて、僕の体を無理矢理押さえつけて来た。何をするんだと抵抗したが、今回もやっぱり太刀打ち出来ない。

 連れ去られる事こそないものの、入って来た扉を開けられると、ゴミを捨てるように僕を投げ飛ばした。


「勢いだけは褒めてやる!」

「仕事の邪魔だ、クソ餓鬼。お家に帰って絵日記でも付けるんだな」


 砂と石が入り混じる歩道に投げ出されて、体は地面に倒れ込み、帽子は転がり落ちる。治りかけの背中の火傷に地面とぶつかった振動がジンと響いて、痛みではなく痒みが襲ってきた。


「・・・・・・要!?」


 異変に気づいた中也さんが駆け寄って来て、体を起こしてくれた。

 しかし怒りに身を任せる僕は、心配してくれる優男の彼を振り払い、絵日記を描けと笑った方の男の胸ぐらに掴みかかった。


「なんだゴラァ! 子供じゃねぇって言ってんだろ! せめて居るか居ないかぐらい言えや!」

「とことん生意気なガキだな! もう我慢ならん!」

「要! やめろって!」

「子供だ大人だってなんだよ! 来客対応もろくに出来ないような大人が、大人を語るなクソ!」

「なんだとぉ!?」


 お互いに拳を作り、殴ってやろうと思っていた。相当怒り狂っているし、話し合おうなんて言われても言葉が通じるなんて思わない。発する日本語は伝わり合わないに決まってる。それほど頭に血が上って、酷く憎たらしい。

 体力が戻ったとばかり思っていたら、僕の身軽さと素早さは戻っていなかった。


 おかげで成人男性の拳をモロに右頬に食らった。脳がブゥンと揺れて視界はゆらゆら揺れる。


「へへっ、口程にもねえな!」


 挑発的な言葉に返せる余裕がない。情け無い。蹌踉めく体を受け止めてくれたのは、きっと志蓮だ。殴られた衝撃で口の中を噛んでしまった。口の中が痛い。


「何、殴ってんだよ!」

「ちよ! 中也サンまで何しとんの!」


  痛みを堪えるのに目を瞑っているから、状況は把握出来ないけど、恐らく中也さんが僕の代わりに喧嘩しているようだ。

 ボッコンバッコン、ズリ、ザリ。地面に擦れる音が荒々しい。


「この会社の人やろ! 喧嘩慣れなんかしとらんよ、中也サン、弱いものいじめはやめとき!」

「誰が弱い者いじめだって!? 元はと言えば其処のガキが――!」


 志蓮の言葉に反応したのはもう片方の男だ。彼は僕を優しい手つきで寝かせようとした。僕は素早く起き上がり、喧嘩する中也さんと一触即発の志蓮達を交互に見る。


「ガキ思うんなら手ぇ出さんと言葉で優しく嗜めてあげるのが大人ちゃいます? あ、もしかしてそれが出来ないタイプの人やろか? そりゃ大変失礼しましたわぁ」

「お前! 喧嘩売ってるだろ!」

「ふふ、ボクと喧嘩しても勝てまへんよ」


 余裕な笑顔の中に芽生える闘争心は目の色を変えた。

 祗候館看守長一番頭という肩書きを持っていただけある。待って、今更だけど肩書きめっちゃ格好いいな。

 僕に勝てない――なんて厨二病臭いと思うだろうけも、本当の事だからしょうがない。


 しゅーさんと文人が言っていたんだ。穏やかそうな顔をしてるけど、殺戮兵器みたいに人を殺すって。


「下手したら死にまっせ。ご家族がおるんならやめときぃ。要チャン投げた事を謝ってくれるだけでええんですわ。ねぇ中也サン?」

「わしの女に手を出したんじゃ、死ぬるまで殺す!」

「ブチギレてお国の言葉出てもうてるやん」


 中也さんの山口弁にキュンとしたとか、こんな状況で言えるわけねぇ。あ、なんか急に司のご飯が食いたくなってきたや。って、違う違う!

 志蓮も喧嘩を始めてしまってもう大混乱。

 ああ、初代さんの言うことちゃんと聞いとくんだった! 日を改めてとか出来たはずなのに、僕ったら、本当に救いようのない馬鹿!


 元はと言えば僕が悪い。こんな状況を何とかするには、僕じゃなくて父さんの裏側の人でなきゃ、どうしようも出来ない。


「父さん! 父さんてば! 舌噛んで! 舌!」

「ふえぇ! そんなに乱暴しないでぇえ」


 父さんの顔を無理矢理掴んで舌を噛ませようとした。「ヤメテー」とピィピィ泣く父さんが首を横に振るから上手くいかない。


 ――あーもう! 誰か止めて! 叫びかけた時だ。


「何してるんだ!」


 威厳のある大声にハッとし、僕だけでなくデスクの男達も動きをピタリと止めた。

 声のする方に顔を向けると建物の中から、それはそれは社長のオーラを放った中年男性が慌てて出来た。


「社長・・・・・・!」


 デスクの男2人が鼻血を垂らして、キチっと気を付けする。僕もゆっくり立ち上がった。すると後ろから、何処かで見た事のあるような若い太めの男が汗だくで姿を表した。


「ああ、あまくせさん! もう、あなたは本当に変わらないな。社長、この人です。社長を訪ねて来た子って言うのは」

「君か・・・・・・」


 やっぱり後ろの青年、どこかで見たことがある。

 小太りでメガネをかけたわかりやすく例えるなら、平成のオタクと呼ばれるようなその容姿――えっと、確か・・・・・・ああ、そうだ!


「あー! しゅーさんの同級生!」

「覚えててくれんだ! 驚いたよ。突然会社に入ってくるんだもの。津島絡みだと思って、下っ端なのに社長室へ行ってしまったよ」


 御家騒動と呼ばれた帝大内の事件の時、僕としゅーさんの関係性が美しいと言った学生だ。

 しゅーさんとは同級生だけど、彼はしっかり予定通りに大学を卒業したようで、今はこの会社に勤めているらしい。


 懐かしんでいると、太ももにコツンと拳を当てられる。


「要チャン、今はそっちやないでしょ」

「そ、そうだ」


 志蓮の言う通り、今話すべきはこのオタクじゃない。この中年男性の方だ。髪は短い。そしてクリンクリンとしてる。天パなのだろうか。細いフレームのメガネの真ん中に、窪んだ瞳。鼻と口の間の髭は、社長とかそういう偉い人の象徴に見える。


「お騒がせしてすみません。僕、あの、生出要っていいます・・・・・・失礼ですが、菊池寛さん、でお間違いないでしょうか」

 

 喧嘩している姿を見られてるのに、今更畏まる。菊池さんだと思われる人は僕を見て「そうだ」と言った。

 怒ってるに違いないんだ。腕を組んで仁王立ちされるのは、きっと叱られるからだ。


 しゅーさん、ごめん。僕のせいで芥川賞取れないかも。

どうしよう。なんて言えばいいかなぁ。なんと言えば、その最悪な初対面から挽回できるかなぁ。ない頭で考えたって仕方ない。口の中を何度も噛んだりしながら、これ以上イメージが悪くならないように誠実に話すことにした。


「ぼ、僕、小説の事なんも知らなくて・・・・・・辞書で引いたんです。でも、芥川賞の条件である純文学の意味がわかんなくて、だから、それを聞きたくって来たんですけど、僕が短気なばっかりにこんな事になってしまって、本当にすみません」


 僕はまた深々と頭を下げて謝った。中也さんと志蓮も隣に来て頭を下げてくれたが、どうにもならない気がする。


「社長、あまくせさんを庇うわけじゃないですが、まず、来客無視したのは先輩方です。たったそれだけの事、子供だと思うなら答えてあげたらいいじゃないですか。あまくせさんはどうしても知りたい理由があるから、やむおえず、こんな野蛮な事をせざる得なかったのではないでしょうか」


 するとオタクが弁明を始める。言ってくれている事は大当たり、大正解なんだけど、果たして上手くいくもんなのか。

 デスクの男らに近づいて話を聞く菊池さんは、何を思うだろう。僕はただ、菊池さんから下されるマルかバツを待つしかなかった。


 その間に中也さん達に涙声になりながら「約束破ってごめんなさい」と謝ってみたが、事態は後の祭りすぎて、その祭りも終わった。

 もはや絶望的。純文学の意味を知るどころか、僕という荒くれ者の弟がいるイメージがついてしまえば、しゅーさんの選考に影響が出るかもしれない。


 やっちまった。どうにもできない。お先真っ暗だ。地面を指先でガリガリと引っ掻いたとて、何の罪滅ぼしにもなりゃしない。

 繰り返し、後悔のため息をついていると、菊池さんは男達を社内へ返し、僕らの前に再び立ってくれた。


「・・・・・・しかし、喧嘩は褒められたものではないね。だが、子供だからと言って相手にしなかったのも悪い。青山もこんなに弁明に必死なんだから、話を聞いてやらないのは社の信用に関わるかな」

「は・・・・・・」

「もしかしたら将来化ける新人作家かもしれないし。それに君、帝大の辺りじゃ有名な人なんでしょう」


 菊池さんを見上げると眩しい黄金の後光が差している。神。話を聞いてくれると。いや、その温かな微笑みから見るに貴方は仏ですか。


「ありがとうございます! 本当にありがとうございます! 女神だ、女神! しゅーさん、やったよぉ!」

「どう見ても女じゃないよ!」


 僕は地面に頭を打ち付けながらお礼を言いまくった。

どうみたってオッサンだけど、もう有り難すぎてだんだん聖母だとか女神に見えてくる。

 全然見えないけど。優しさを例えるならば、女性の神のような懐の深さを持っていると言いたいのだ。


「さて、ここじゃアレだ。近所に美味いコーヒー屋がある。そこへ行こう」


 菊池さんが破顔でそう言うと、僕らはすぐに返事をして立ち上がった。

 先頭を行く、後光射す社長に着いて行くのは全てを味方に付けたようで中也さんが「一発逆転だね」と笑うので、僕もつられて歯を出して笑った。


 僕はいつだって即死回避。その場でダメなんて絶対にない。そのためならなんべんも頭を下げるし、プライドだって平気で捨てられる。


 それがしゅーさんに関わる事なら尚更だ。

 だって僕はあの、太宰治の弟なんだもの。


 

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