第583話 大地の迷宮RTA⑦
20階層と30階層の亜神級の霊獣を倒した。
アレンのレベルは224から226にさらに上がり、信仰カードは60億ポイント貯まった。
ドゴラもあと2体で神技を新たに1つ獲得できる。
40階層の下に降りる階段の隣の小部屋で、アレンたちの目の前に土偶が佇んでいる。
『この階層まで攻略おめでとうございます。どなたに神技を授けますか?』
「今ある才能によって、貰える神技は異なりますか?」
『左様でございます』
「強い魔法や、攻撃のスキルは手に入りますか?」
『攻撃のスキルは手に入りますが、ガイア様は魔法が苦手です』
「精霊系の魔法は? あとはゴーレム使いの場合はどうなりますか?」
誰に神技を与えるか決め手にするための情報は欲しいと考える。
『申し訳ありません。精霊系統の神技でしたら大精霊神様に、魔法や魔導具、魔法具に係わる神技でしたら魔法神様とご相談ください』
(別の神と相談しろとは斬新な回答だな)
「ちなみに鍛冶職人でしたら?」
『強力で有用なスキルが手に入ります。武器や防具の強化に繋がるでしょう』
(攻撃スキルか、バフか、鍛冶スキルってことか)
「アレン、どうするのよ。私はバフならいいわよ」
「そうだな。バフならロザリナに覚えさせたいところだが、歌神に続いて踊神の羅神くじも手に入ったところだしな。神技が少なかったドゴラももうすぐ神技手に入るし」
あと2体の亜神級の霊獣を倒せば、ドゴラに神技を与えると火の神フレイヤは約束してくれた。
アレンたちの視線が名工ハバラクに集まる。
「また儂か。いいのか?」
「もちろんです。神技を手に入れ、オリハルコンの武器と防具を強化してください」
「ああ、分かったよ」
アレンが方針を決める中、ハバラクは土偶の下に歩み寄る。
『ハバラク様、あなたが神技を手に入れますか?』
「お願いしたい」
『では』
モコモコ
20階層の時と同様に、ハバラクの足元に土がモコモコと溢れてくる。
ハバラクを頭まで土が覆うと、カッと光ったかと思ったら、パラパラと土は剥がれた。
「ふむ、これが神技を手に入れた感覚か」
「ありがとうございます。大変かと思いますが、神技のスキル強化も、攻略と並行してお願いします」
「ああ、問題ねえぞ。攻略中は何もしてないからな。ただ、もう少しうちの鍛冶職人を呼んでくれねえか。仮設でもいいから高炉も欲しいぞ」
1日攻略して、1日休むを繰り返す攻略スケジュールの中、ハバラクには休みの間、半日でも良いので、鍛冶のスキルを鍛えるようお願いする。
1人だとスキル上げのための鍛冶に専念できないとハバラクは言う。
お弟子さんに仮設の高炉を持ってこさせたいらしい。
「分かりました。お弟子さんや必要な施設については、休んでいる間に準備しておきますね」
「ああ、すまない。それは助かる」
アレンは、ハバラクに万全の状態にすると言う。
(随分人が増えてきたな。整理してと。それにしてもギリギリだな)
時空神と交渉して100人にして良かったとアレンは考える。
【神界に入れた人リスト77人(MAX100人まで)】
・アレンのパーティー廃ゲーマー(ハク、タムタム含む)15人
アレン、クレナ、セシル、ドゴラ、キール、ソフィー、メルル、フォルマール、シア、ルーク、ペロムス、ロザリナ、イグノマス、ハク、タムタム
・ヘルミオスのパーティー「セイクリッド」10人
・ガララ提督のパーティー「スティンガー」15人
・竜王マティルドーラ1体
・ペロムスの嫁フィオナ1人
・最強の男ガトルーガ1人
・ララッパ団長と魔導技師団計10人
・ハバラクと鍛冶職人たち計10人
・十英獣10人
・ギアムート帝国の皇帝、宰相、内務大臣の3人
・エルメア教のクリンプトン枢機卿1人
「さて、まだ6時間以上ある。まだ先に進むぞ」
降りることを優先し、霊獣の巣窟は基本的に無視したお陰で、50階層に到着した。
「あれ、何か変ですわね」
残り2時間のところで50階層に到着し、ソフィーが異変に気付く。
階段を降りて、通路に入ると地面も壁も漆黒だ。
今まで黄色がかった土色だったのだが、黒色を基調としたダンジョンに変わったようだ。
『皆、警戒を。隊列を維持して進みましょう』
(もしかして、これは……)
上下左右の壁が漆黒に染まった通路を10分ほど経過する。
アレンたちは、新幹線の速度を超え、ジャンボジェット機並みの速度で隊列を維持して進んでいる。
しかし、いくら経っても部屋に到達することはなかった。
道は何度か分岐しており、アレンたちが選ばなかった分岐の道は、鳥Aと鳥Eの召喚獣たちが進んでいる。
しかし、曲がりくねり分岐はするものの小部屋には一向にたどり着くことはない。
『皆止まってくれ』
鳥Fの召喚獣を使って、皆に号令をかけ、アレンは隊列を止めた。
「これってもしかして、ずっと迷路なの?」
「たぶんそうだ。こんなに広い空間で階層まるごと迷宮にするなんて大地の神は頭がおかしいぞ」
神の悪口を平気で言う。
大部屋迷路とは、部屋のない通路だけで構成された迷路のことで、それだけ探索しないといけない移動量が増え、下の階層へ進む難易度が格段に上がる。
アレンは一緒に先頭を進むロゼッタを見る。
「この階層、罠がないのよ」
ここまで進んできて落とし穴どころか罠が1つもないとロゼッタは言う。
異様な状況に視線はアレンに集まる。
「道は複雑、罠がないならやることは一つだ」
アレンは店で盗んだ魔導袋から、同じく店で盗んだ銅のスコップを取り出した。
大きく振りかぶって、地面にスコップの先端をぶつける。
キンッ
パアッ
「き、消えただと!?」
甲高い音が通路の先まで鳴り響いたと思ったら、銅のスコップは光る泡となって消える。
アレンが魔導袋から、とっておきのミスリルのスコップを取り出した。
「ちょっと、私に貸しなさいよ」
引きの悪いアレンからスコップを奪い取るように手に取ると、セシルは大きく振りかぶって漆黒の床に先端を叩きつける。
キンッ
パアッ
しかし、銅のスコップ同様に、セシルの握るミスリルのスコップも光る泡となって消える。
「どうやら、この階層はこれまでとルールが違うようだな」
スコップはたとえ光る泡になっても、下の階層へつなぐ大穴は掘れた。
それはできず、ロゼッタが落とし穴を発見できないとなると下の階層へ行くには自力でこの広い階層から階段を探すしかない。
結局、残り2時間もない中、50階層の大部屋迷路に時間を取られ、24時間が過ぎてしまった。
「ああ、もっと行けると思ったのに~」
外に出るなり、タムタムから降りたメルルは残念そうだ。
「そうだな。今回は無駄に時間を使ってしまったからな。次はもっと早く下の階を目指そう」
今回はロゼッタのスキルの有用性の検証、火の神フレイヤとの神技の交渉、誰に神技を与えるかの相談に時間を使ってしまった。
全部で1時間もかけていないが、時間を消費したのは間違いない。
仲間たちが休む中、アレンはハバラクの弟子たちを呼び、必要な炉の準備などをして休んだ。
ダンジョンから出てすぐに休んだハバラクは、アレンの用意した万全の炉と弟子たちと共に神技を鍛える。
翌日になり、しっかり休みが取れた仲間たちと、迷宮入り口に集合する。
睡眠ギリギリまで創生のスキルを鍛え眠そうなアレンと、手伝って疲れたセシルに、神技を鍛え始めたが顔には出ないハバラクと、疲労具合はバラバラだ。
「今度こそ竜神様の角を頂くわ」
セシルは角が欲しいと気合を入れる。
「そうだな。皆も気合を入れていくぞ!!」
それから24時間が過ぎ去ろうとしている。
今度こそ50階層を越えるぞと、意気込んで挑戦したが52階で終わった。
移動中に一気に視界が変わり、ミニ土偶の目がカッと光ったかと思うと、地上の大地の迷宮の入り口に強制転移する。
「ちょっと、これは厳しいんじゃないの」
もしかしたら、今回のダンジョン攻略で竜神マグラの角が手に入るかもしれないと意気込んでいたセシルが困惑している。
時間こそ攻略の鍵となるのに、攻略に圧倒的に時間を要する階層があっては、道は開けない。
(さて、どうするかな。一応得るものは得ているんだが、肝心の結果には程遠いと)
アレンは思考しながらも魔導書を確認する。
10階層、20階層、30階層、40階層と全ての亜神級の霊獣を倒した。
霊晶石は全部で7個になった。
アレンのレベルは226から230にさらに4つ上がった。
信仰カードは100億ポイント貯まった。
ドゴラも神技を新たに1つ獲得できる条件を満たしたことになる。
「う~ん、困ったね」
『困りました。さらに分散して階段を見つけますか?』
「タムタム、それだと下の階層へ集合するにも時間が掛かるよ」
メルルもタムタムと攻略方法を考えてくれている。
(試行回数を増やすか。いや、目指すは99階だからな。さて、ピヨンさんが原獣の園に到着してくれたみたいだからな。これからのことを決めないとな)
これからアレン、セシル、ソフィー、ドゴラ、キールは大地の迷宮から離れることになる。
アレン、セシル、ソフィーは原獣の園に、シアの手伝いと「獣神ガルムの尾」と「日と月のカケラ」を手に入れに行く。
ドゴラとキールは、薬神ポーションの下に、キールをエクストラモードにするため修行に行く。
戦力が落ちる中、試行回数を増やして、階段を早く見つけても、今の方法だと60階層に行けるか、せいぜい70階層くらいだと考える。
「じゃあ、霊獣を狩るのを止める? もう100億ポイント貯めたんでしょ」
霊力回復リングが2つ手に入るほどの信仰ポイントを手に入れた。
「いや、どちらにしろ、ネスティラドとの対決は避けられない。俺のレベルが順調に上がるまでは亜神級の霊獣は狩ってくれ」
鍵部屋の鍵が見つからなかったり、店の物を盗む難易度が高いのに無理して鍵を盗むことはない。
それでも、恐らくアレンのレベルは250までは亜神級の霊獣1体1レベル上がるはずなので、メルルに狩り続けるように言う。
「うん、分かった。鍵部屋の霊獣を倒しつつ、なるべく深くだね」
「そういうことだ。俺たちがいなくなっても、引き続き、大地の迷宮攻略チームのリーダーをやってくれ」
「分かったよ。えへへ、僕がリーダーだ」
大所帯になったのだが、メルルが大地の迷宮攻略メンバーをまとめるチームリーダーだ。
チームリーダー就任は初めてなので、メルルはなんだか嬉しそうだ。
「でも、どうするんだ? 解決になってないだろ」
「ドゴラ、俺に考えがある。たぶん、この方法ならいけるはずだ」
(たぶんだけど。さて、交渉に乗ってくれるかな)
アレンの言葉にセシルは胸を撫でおろした。
運に強力なマイナス補正が掛かり、引きが絶望的に弱いが、これまですべての攻略方法の道を切り開いてきたアレンが、打開策があると言う。
それだけで内容が分からなくても、問題がないと思えるほどの安心感が仲間たちにはあった。
「まじかよ。頼りになるパーティーリーダーだな。で、フレイヤ、早く神技くれよ。ほら、早く!」
『む? なんじゃ、その言い草は! 少しは懲らしめてやらねばならぬの!!』
ドゴラが背中に背負う神器カグツチが真っ白になるほど高熱を宿す。
「うわっち!?」
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