第568話 大地の迷宮RTA①

 人間世界のダンジョンでは、キューブ状の物体だが、ここでは土偶が案内役のようだ。


(そう言えば、土偶って女性の形を象ったものじゃなくて、植物の模倣って説があるんだってな。だからどうだって話だが)


 縄文時代に日本各地で流行ったっぽい土人形を見ながら前世の記憶を蘇らせる。


「大地の迷宮の攻略に挑戦します」


 アレンの大きさの半分くらいの大きさの土偶に、大地の迷宮への挑戦の意思を示す。


『分かりました。こちらは私の分身体です。こちらを破壊しますとお時間になる前に外に脱出できます』


「ありがとうございます」


 お腹に『24:00』と表示された小さい『ミニ土偶』を渡される。


『精霊使いと召喚士がいらっしゃいますが、顕現する精霊と召喚獣は今出している者だけにしますか?』


「少々お待ちください。ソフィー、顕現できる精霊を全て出しておいてくれ。水と光が良い」


「分かりましたわ」


『禁止事項の説明は必要ですか?』


「不要です」


『ルールを破りましたら、強制的に退去になりますがよろしいですか』


「問題ないです」


 アレンが勝手に話を進めることにセシルが反応する。


「ちょっと、ルールはちゃんと知りたいわ。私にも説明しなさいよね」


 アレンはメルルが挑戦する際、霊Aの召喚獣を通じて、大地の迷宮がどんな感じかルールを知っているのだが、セシルやフォルマールにはダンジョンの細かいルールまでは伝えていなかった。


「ああ、魔導書にルールをまとめたから、見ておいてくれ」


「貸しなさい」


 ここで土偶の説明をまた1から聞くのは時間がもったいないので、整理した魔導書を読み込んでもらう。


(ちゃんとルールの確認できて偉い)


 アレンはセシルの成長を感じる。


【大地の迷宮攻略のルール①】

・挑戦人数は最大48人まで

・人数構成は召喚獣も精霊も含めて交代は不可

・召喚獣、精霊は挑戦人数に含まれる(子ハッチなども同様)

・ゴーレム使いのゴーレムは使い手の武器や防具認定のため、制限人数に含まれない

・タムタムは生命が与えられ自走しているため、制限人数に含まれる

・転移、召喚、顕現による途中でのダンジョン挑戦は不可

・24時間過ぎると強制的に大地の迷宮から追い出される

・魔導書や魔導袋など収納アイテムの使用、回復薬の持ち込みは禁止

・ミニ土偶を破壊すると、迷宮入り口に転移(破壊した範囲1キロメートル以内の者に限る)

・大地の迷宮内で死んでも蘇生はしない


「なるほどね。だから精霊を最初に出すのね。仕舞ったら、再顕現は不可ってことかしら」


「そのとおりだ。召喚獣も精霊も、この場に出して、仕舞ってもやられても、そこで終わりだ」


(なんか俺ら対策のようだな。試練の重さが軽すぎると、報酬は出せないみたいだし、そのせいかもな)


「まあ、でしたら……」


「光の加護は優秀だからな。回復についてはダンジョン内にもあるから、そっちを使おう」


『なんじゃ! 儂は用無しかの!!』


 水の大精霊トーニスがプリプリしている。


 2体目の大精霊は時間が経過したら、顕現の維持ができない。


 トーニスは放っておいて、アレンはグラハン、マクリス、クワトロなどSランクの召喚獣を筆頭に、鳥Eと鳥Aの召喚獣を中心に48人になるように人数制限を気にしながら召喚していく。


「こちらで挑戦します」


『畏まりました』


 アレンたちは一辺1キロメートルにいう部屋と呼ぶには広すぎる空間の先にある一本の縦状の線を目指す。

 遠近法の関係で一本の縦線になっているが、ダンジョン開始の入り口だ。

 最初の説明部屋を抜けると、大地の迷宮が始まる。


「よし、お前ら作戦通りに行くぞ」


 戦いは始まったとガララ提督は声を上げた。


「へい」

「へい」

「へい」


「ゲララパ出てこいや!」


 【名 前】 ゲララパ

 【操縦者】 ガララ

 【ランク】 アダマンタイト

 【体 力】 50000+3000

 【魔 力】 50000+3000

 【攻撃力】 50000+3000

 【耐久力】 50000+3000

 【素早さ】 50000+3000

 【知 力】 50000+3000

 【幸 運】 50000


 ガララ提督は自ら含めた15人のパーティー構成だ。

 ドワーフたち全員がガララ提督と一緒にゴーレムを降臨させる。

 既に大型石板と超大型石板を魔導盤にはめているため、全長100メートルのモード「超身兵」だ。

 星5つの魔岩帝の才能を持つガララ提督には、アダマンタイトの石板を与えているので、これで上位魔神とも何とかやり合えるほどの力を手に入れた。


「僕らもいくよ! タムタム!!」


『はい。行きましょう!!』


(タムタムは随分口調が滑らかになってきたな。メルルもこの試練で随分成長してくれたし)

 

 【名 前】 メルル

 【年 齢】 16

 【加 護】 ディグラグニ(加護中)

 【職 業】 魔岩帝

 【レベル】 99

 【体 力】 8599+5000(加護)+12000(超合金)

 【魔 力】 8785+5000(加護)+12000

 【霊 力】 25785

 【攻撃力】 5117+5000(加護)+12000

 【耐久力】 6054+5000(加護)+12000

 【素早さ】 5686+5000(加護)+12000

 【知 力】 8785+5000(加護)+12000

 【幸 運】 6511+5000(加護)+6000

 【スキル】 真魔岩帝〈7〉、真重飛手〈7〉、真目光線〈7〉、真超光壁〈7〉、真形状記憶〈7〉、真超合金〈2〉、超電子砲〈3〉、合体(右腕)、盾術〈3〉

 【武器】クローアーム(クリスタル)

 【鎧】岩王のマント 耐久力6000、魔力3000、物理耐性(中)

・メルルの装備

 【指輪①】体力5000、体力5000

 【指輪②】魔力5000、魔力5000

 【首飾り】魔導キューブ

 【腕輪①】魔力回復1%、体力5000、魔力5000、魔力5000

 【腕輪②】魔力回復1%、体力5000、魔力5000、魔力5000

 【首飾り】魔力3000、魔力3000

 【腰帯】無属性耐性、魔力10000

 【耳飾り①】 魔力1000、魔力1000

 【耳飾り②】 魔力1000、魔力1000


 【名 前】 タムタム

 【規 格】 グランバスター

 【性 能】 B

 【操縦者】 メルル

 【ランク】 アダマンタイト

 【体 力】 50000(石板)+30000(規格)+12000(真超合金)

 【魔 力】 50000+30000+12000

 【攻撃力】 50000+30000+12000

 【耐久力】 50000+30000+12000

 【素早さ】 50000+30000+12000

 【知 力】 50000+30000+12000

 【幸 運】 50000+30000+6000

 【機 能】 強化〈7〉、出力〈7)、加速〈7〉、光弾〈7〉、重力砲〈7〉、予備動力〈7〉、追跡弾〈7〉、収納〈7〉

 【規格値】 約80億/100億


 ガララ提督たちのゴーレム使い、タムタムで16体のゴーレムを降臨させたことになる。

 ゲララパとタムタム以外の14人のドワーフは、それぞれヒヒイロカネゴーレムを降臨させている。


 メルルとガララ提督は星5つの魔岩帝で、そのほか14人のゴーレム使いは星4つの魔岩王の才能だ。


 用意が整ったところで説明が行われる部屋から出る。

 アレンはセシルとソフィーと共に特技「浮遊羽」で空を飛ぶ。

 なお、メルス、マクリス、クワトロは空が飛べる。

 皆が床石から浮き上がっていく状況にグラハンが気付いた。


『ぬ? 儂はどうするのだ?』


 実は浮遊羽はパーティーに使えるのだが、召喚獣には使えない。

 なんかステータスの設定が人と違うかららしいのだが、こんな時に不便だ。


「グラハンはマクリスの背中に乗っていてくれ。ここから先には罠があるからな。地面を走るって選択肢はないからな。ハバラクさんはグラハンが守ってやってくれ」


『乗るのら~』


『かたじけない。ハバラク殿は儂が守ろう』


「うむ、助かる」


 100メートルのマクリスの上に全長15メートルのグラハンが乗り込んだ。

 非戦闘員のハバラクを特技「浮遊羽」で自由に飛ばしてもしょうがないのでグラハンの前に座り、マクリスとグラハンのペアに守ってもらうことにする。


 横幅数百メートル、縦幅10キロメートルほどになる天井まで達した出口を進むと、直線が100キロメートル先まで続いていた。

 まっすぐ伸びた先が遠近法の視界の先が米粒になるほど遥か先まで通路は続いている。

 なお、通路と言っているが、その幅は数キロメートルにも達する。


「何よ。むちゃくちゃ広いじゃない!!」


「ああ、外から見ただろ。各階層は大地の神ガイアの神域と同じ広さだからな」


 大地の迷宮は一辺1000キロメートルの立方体をふんだんに使った構造をしている。

 そのため、1階層の広さ縦横1000キロメートルで高さは10キロメートルの広さのダンジョンとなっている。


「はぁ?」


「ここには1階層ごとに100の部屋があって、下に降りる階段はそれぞれ階層に1つしかない。それが99階層まで続く構造だと思う」


「え? それを24時間で降りないといけないの?」


「そうだ。というより20分過ぎたから残り23時間40分だな」


 ミニ土偶のお腹には時計が表示されており、時間の経過を教えてくれる。

 土偶に挑戦を宣告した時点で、カウントダウンが始まっている。


「じゃあ、急がないといけないわね」


 一度入れば丸一日、不眠不休で下の階層目指して降りて、時間が来たら外に追い出されて、意識を失うように眠りにつく。

 この1ヶ月の間、メルルがどれだけ頑張ってきたかを知り、セシルも覚悟が表情に溢れてくる。


「そうだ。ツバメンとホークたちは宝箱を探してくれ」


『ピィー!』

『ピピッ!』


 鳥Aと鳥Eの召喚獣をペアにして5組ほど、先行させる。

 成長レベル9まで上げており、勢いよく返事をした召喚獣たちは、遥か先まで飛んでいく。


(さて、召喚し直しが利かないのがデメリットだな。前世で鍛えたRTAの力を見せてくれる)


「あれ? 階段じゃなくて、宝箱を探すのっていうか宝箱があるのね」


「宝箱は各階層に最低10個ある。20階層に行くなら魔力回復薬とスコップは必須だからな」


 大地の迷宮の中盤以降の攻略方法は分からないが、メルルのお陰で序盤をどう切り抜けるか、アレンの頭にあった。


 アレンは魔導書に大地の迷宮の分析混じりの構造のメモを確認する。


【大地の迷宮の構造】

・各階層が1辺1000キロメートル、高さ10キロメートルの巨大な岩石で出来ている

・一度出るとダンジョンの構造は変わる

・一辺数キロメートルから100キロメートルのサイズの部屋が階層ごとに100個ある

・数キロメートルから数百キロメートルの通路が各部屋を繋いでいる

・下に降りる階段は1階層ごとに1つしかない

・宝箱は各階層に最低10個ある

・地面や壁の岩石はアダマンタイトほどの硬さがある


 ゴーレムたちとともに移動しながら最初の説明部屋を抜け、T字路を左折しまっすぐ行ったところは別の部屋に通じているようだ。

 アレンたちがやってくるなり、青白い炎を纏う巨大な大蛇が首を持ち上げている。


「部屋ねって、霊獣が襲ってくるわ!!」


『シャアアア!!』


 5体ほどの霊獣がアレンたち目掛けて、口を開き、向かってきたのであった。

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