第551話 ミュラのダンジョン攻略

 アレンたちはA級ダンジョンにやってきた。

 これから数日かけて、A級ダンジョン5つの攻略を目指す。

 アレンとセシルの周りにはビビっているロダンとゲルダ、後ろで目がキラキラしているミュラ、そして、アレン軍の将軍の1人でオリハルコンの大盾を持ったライバックがいる。

 さらにライバックの配下の盾使いが2人で、全員で8人だ。


「ライバックさん、お忙しいところありがとうございます。盾王は慣れましたか?」


「問題ない。今スキルを鍛えている」


(ノリは完全にフォルマールだな)


 カクガリの金髪で、表情からも性格の硬そうな40過ぎのライバックは、アレン軍の中で人族部隊を指揮している。


 人族部隊は、エルフ、ダークエルフ、ドワーフ、獣人、魚人など多種多様な種族で構成されたアレン軍の中でも最後に軍に入った。

 指揮系統を含めた現状の確認もアレン軍の総帥の仕事なので、この数日間で状況を共有する予定だ。


 さらに将軍であるライバックは、少し前に星4つの盾王に転職した。

 アレンは、転職ポイントの活用先としてまずヘルミオスのパーティーやガララ提督のパーティーに使いたいと考えている。

 その次に優先するのは軍を指揮する将軍たちだ。


 軍の中において、将軍は末端の兵ほど武器を振るい、魔法を唱える機会はない。

 将は才能の星が多いほど求心力を獲得し、配下の士気を上げるが転職を優先するのはそれだけが目的ではない。


 魔王軍は将軍格の敵を優先して狙ってくる。

 指揮系統が瓦解して、攻めやすくするためだ。

 アレン軍の守りの要は盾使いの多い人族部隊だ。

 その将であるライバックの命は、アレン軍全体の生命線にもなりかねない。

 指揮系統を守るため、ライバックは他の将軍に比べても、いち早く転職を進めた。


(それでいうと転職ポイントはまだまだ足りないな)


 寡黙なライバックからアレンは1階層の長い通路に視界を移す。


「全員を浮かします。陣形を構成しつつ、攻略を進めましょう」


「うん! アレンお兄ちゃん!!」


 ロダンやゲルダと違い、Bランクの魔獣の跋扈するA級ダンジョンでもミュラに怯えは感じられない。


 クワトロを幼雛化させ、ヒヨコほどのサイズにして肩に乗せ、全員には特技「浮遊羽」を使い、空を飛べるようにする。

 さらに万里眼を常時発動させ、共有したアレンは敵を真っ先に発見できるようにする。

 ダンジョン内は移動効率からも、無用な罠を踏み抜かないためにも全て飛んで移動する。

 罠は踏まないと発動しないものしかないので、これで罠を踏むことはない。


 アレンを先頭に、少し後方にセシル、そして中央にはロダン、ゲルダ、ミュラを、最後尾にはライバック、ミュラたちの両サイドにはライバックの配下2名の盾使いを配置させる。


 攻略経路は把握しているため、すぐに移動に移る。

 直線を進んだ先の曲がり角からライオンのような異形の魔獣の頭が出てきた。

 ほんの100メートル先だ。


「マリア、サイコだ」


『はいデス! 死ぬデス!! サイコ!!』


 成長レベル9まで上げた霊Cの召喚獣をアレンの前方50メートルギリギリのところに召還すると、召喚獣は特技「サイコ」を発動させる。


 ボンッ


 Bランクの魔獣は一瞬で頭を吹き飛ばし絶命する。


(やはり、マリアが正解か)


 宙に浮き罠を踏み抜く心配もなく、発動時間の少ない遠距離攻撃の特技を持つ霊Cの召喚獣は、この状況で抜群の活躍を見せる。


「よくやったぞ。マリア」


『はいデス』


 それから何秒も経たないうちに魔獣のいた場所を通過する。


「うあ!? なんだ!!」


 通過する際ようやく気付いたようで、既に絶命した魔獣にゲルダが思わず声を上げた。




 ***


 半日程すぎて、アレンたちはA級ダンジョンの最下層にいる。

 

 目の前には巨大な竜の無残な死体がある。


(家族の安全のためにもしっかり確認してと)


 竜系統の魔獣は心臓をつぶしても暫く生きているなど、生命力が強いので、アレンは魔導書で本当に倒したかログを確認する。


『ヘビードラゴンを1体倒しました。経験値160万を取得しました』


「よし、倒したっと」


「わあ、やったあ! アレンお兄ちゃん強い!!」


「うむ、だけど、お兄ちゃんがいないときに、無理にドラゴンに挑戦したら駄目だぞ」


「分かった!」


 ピョンピョンと飛び跳ねてミュラが喜ぶ。

 アレンはあまりに喜ぶのでミュラの頭をワシワシしてあげた。


「それにしても、アレン。半日でA級ダンジョンを1つ攻略してしまうなんてね」


「仕方ないぞ、セシル。転職ダンジョンも、S級ダンジョンもA級ダンジョン攻略が必要って言われたからな」


「そういう問題じゃないでしょ」


 ロダンとゲルダを才能ありにして、ミュラを転職させるべくアレンたちはA級ダンジョンへ挑戦した。


 今はもう夕方で、1日仕事になってしまった。


 朝早く出かけたのだが、3人はまだ冒険者登録すらしていなかったため、冒険者ギルドに登録することから始める結果となった。


 アレンは、神界での活動も途中だし、アレン軍や学園都市改革の推移も確認しないといけない。

 それ以上に新スキルの検証をしたい。


 あれこれ忙しいので、省略できるところは省略したいのだが、ミュラたちの転職で省略できたものとできなかったものがある。


【条件を変更できたもの】

・10歳のミュラの冒険者証発行

・C級ダンジョン、B級ダンジョンの攻略不要


【条件を変更できないもの】

・転職条件

・S級ダンジョン挑戦条件


 アレンは8歳のころ、グランヴェルの街で冒険者証を発行しようとして、12歳からだと断られたことがある。

 冒険者になるのは12歳からだという冒険者ギルドの決まりがある。

 武器を振るうための体がしっかり成長してという意味で冒険者ギルドがルールを決めているのだが、アレンはSランク冒険者だ。


 学園都市の支部長に丁寧に説明したらすぐにミュラの冒険者ギルドを発行してくれた。

 A級ダンジョンへの挑戦について、門番の冒険者ギルドの職員に止められたら面倒なので、特別許可を出している旨、支部長に書いてもらった。


 結果、朝早くロダン村を出たのだが、A級ダンジョンの攻略が午後からとなってしまった。


 アレンの権限で融通が利くのは冒険者ギルドが設けたルールまでのようで、ダンジョンマスターディグラグニが設定したと思われる転職ダンジョンやS級ダンジョンへの挑戦条件は変更できなかった。


 冒険者ギルドとしても一律のルールではなく、王族が親衛隊の騎士を帯同させるので5歳でダンジョンに挑戦させたいとか言い出したら、対応することもあるという。

 この世界はレベルが上がれば、その後の文武の理解や体得が早くなるので、ダンジョンで鍛えたい王族も多いらしい。

 アレンの家族のための行動も常識の範囲内のようだ。


 アレンの考察は他所に、最下層ボスを倒したのでキューブ状の物体が目の前に現れる。


『討伐お疲れさまでした。こちらがA級ダンジョン攻略証明書です』


 攻略証明書を新たに発行してもらったようだ。


「ほい、ミュラ。大事に持っておくんだぞ」


「うん! ありがとう!!」


 スタンプが1つ押された証明書を発行してもらった。

 S級ダンジョンへ挑戦するためには、さらに4つのA級ダンジョンの攻略が必要だ。


(ふむ、あと2日あれば、3人をS級ダンジョンへ連れていくことができるのか)


 ソフィーたちとの合流もそれくらいになりそうなので、それくらいは手伝って上げようと思う。


「ちょっと気になっているんだが、人数少ないんじゃねえのか?」


 気が緩んで余裕が出たのか、クレナの父のゲルダが思っていたことを口にする。

 ここにはライバックも含めて8人しかいない。

 10メートルを超える巨大なドラゴンが横たわり、こんな人数で挑戦する場所じゃないと肌で理解できたようだ。

 さすが、今でもロダンと30人から50人ほどで役割分担押しながらボア狩りをしているだけはある。


「人数が多いと役割が決まって、何かあった時に対処できない。8人行動を覚えてください」


 オリハルコンの装備をしているロダンとゲルダがアレンの言葉に引いている。


(大人数パーティーしかしないとプレイヤースキル低いからな。8人でも多い方だ)


 アレンは前世の健一の頃のゲームの常識で、10人、20人と大人数ででしか狩りをしないプレイヤーは総じて下手だったと記憶している。

 攻撃役は立ち位置を考えないでスキルを使えばいいし、回復役は回復魔法を連打していたらよい。


 前衛であれば、回復役を守るのか、攻めに出るのか、クールタイムの大きなスキルをいつ使用するのか、さらに立ち位置も考えて戦わなくてはならない。

 小人数はもちろんのこと、大人数での狩りもこなしてこそ、プレイヤースキルは鍛えられる。


 ロダンは村を守ると言うので、レベルや才能だけでなくプレイヤースキルも鍛えてほしいと思う。


「容赦ないわね。なんか5人でA級ダンジョンに挑戦したのが懐かしいわ」


 学園生活を思い出したセシルはアレンの言いたいことをくみ取った上でため息をついた。

 最初少人数にこだわったお陰で、後衛のセシルやキールも含めてパーティーの誰もが動きが良い。


「お腹空いた……」


 ミュラがお腹をさすっている。


「そうだな。一旦村に帰るか」


「うん!」


 その日のダンジョン攻略は終了して、ロダン村に転移して帰った。

 あと数日同行してもらうライバックたち3人も連れていくことにする。


 ゲルダは自分の家に帰り、家族で夕飯を済ませ、風呂にも入って、ミュラは眠りについた。 

 アレンは新たに手に入れた神技の検証のために村の中央の広場に向かう。

 

「新スキルどんなのかしら」


 セシルが検証に付き合ってくれるようだ。


(ワクワクしかしないんだけど)


 アレンはやり込みたくてこの世界にやってきた。

 力を求め、神界にやってきて精霊の園で必死の思いで解放された新スキル「神技発動」はアレンの思いに叶うものなのかドキドキする。


「たしか『神技発動』って言えば、神技が使える状態になるんだよな。神技発動っと」


 仲間たちの使える人が増えてきた神技を発動させてみる。


 カッ


 アレンの周りに幾何学的な光の文字が生まれ、魔法陣となって囲む。


 ピコン


 目の前に魔導書が現れ、表紙には銀色の文字でログが流れている。


『神技の発動を確認しました。神技「創生」を獲得しました。創生スキルは一巡目のため、鳥H、草G、石F、魚E、霊D、竜C、天使B、【-】Aの召喚獣の封印が解けました』


(なんだ、これは!)


 アレンは胸のときめきのようなものを抑え、自らのステータスを確認する。


 【名 前】 アレン

 【年 齢】 16

 【職 業】 召喚士

 【レベル】 220

 【体 力】 27015+17000

 【魔 力】 43180+24000

 【霊 力】 59180

 【攻撃力】 15116+23200

 【耐久力】 15116+34000

 【素早さ】 28079+44200

 【知 力】 43190+56000

 【幸 運】 28079+10000

 【スキル】 召喚〈9〉、生成〈9〉、合成〈9〉、強化〈9〉、覚醒〈9〉、成長〈9〉、拡張〈8〉、共有、収納、高速召喚、等価交換、指揮化、王化、〈封〉、神技発動、剣術〈5〉、投擲〈3〉

 【神 技】 創生①〈1〉

 【経験値】 約1億/4000杼


・スキルレベル

 【召 喚】 9

 【生 成】 9

 【合 成】 9

 【強 化】 9

 【覚 醒】 9

 【成 長】 9

 【創生①】 1

・スキル経験値

 【生 成】 約220億/1000億

 【合 成】 約200億/1000億

 【強 化】 約300億/1000億

 【覚 醒】 約180億/1000億

 【成 長】 約100億/1000億

 【創生①】 0/10000

・取得可能召喚獣

 【 虫 】 封ABCDEFGH

 【 獣 】 封ABCDEFGH

 【 鳥 】 SABCDEFGH

 【 草 】 封ABCDEFG封

 【 石 】 封ABCDEF封封

 【 魚 】 SABCDE封封封

 【 霊 】 SABCD封封封封

 【 竜 】 封ABC封封封封封

 【天 使】 SAB封封封封封封

 【 - 】 SA封封封封封封封

・ホルダー(全90枚)

 【 虫 】 計8枚 A1、B1、C1、D1、E1、F1、G1、H1

 【 獣 】 計8枚 A1、B1、C1、D1、E1、F1、G1、H1

 【 鳥 】 計18枚 S1、A11、B1、C1、D1、E1、F1、G1

 【 草 】 計6枚  A1、B1、C1、D1、E1、F1

 【 石 】 計5枚 A1、B1、C1、D1、E1

 【 魚 】 計5枚 S1、A1、B1、C1、D1

 【 霊 】 計14枚 S1、A11、B1、C1

 【 竜 】 計25枚 A24、B1

 【天 使】 計1枚  A1

 【 - 】 


 【武器】オリハルコンの剣:攻撃力10000、攻撃力5000

 【防具①】甲竜の鎧:耐久力8000、物理攻撃ダメージ半減

 【防具②】闇竜のマント:耐久力4000、魔法攻撃ダメージ半減

 【指輪①】知力5000、知力5000

 【指輪②】知力5000、知力5000

 【腕輪①】魔力回復1パーセント、耐久力5000、知力5000、

 【腕輪②】魔力回復1パーセント、耐久力5000、知力5000、クールタイム半減

 【首飾り】知力3000、知力3000

 【耳飾り①】物理攻撃ダメージ7パーセント、知力2000

 【耳飾り②】物理攻撃ダメージ7パーセント、知力2000

 【足輪①】素早さ5000、転移、回避率20パーセント

 【足輪②】素早さ5000、転移、回避率20パーセント


 ※鳥Sと魚Sと霊Sの召喚獣は2つのステータスが10000ずつ上昇

 ※指輪、首飾り、耳飾りの追加ステータスは魔法具師カサゴマの神技

 ※グラハンを仲間にしたことによって、魔法具は知力系に変更


「召喚できる召喚獣の枠が一気に増えたぞ!」


(なんだなんだ!! なんなんだこのやり込み要素は!?)


 こんな感情はいつぶりだろうか、気持ちの高揚が止まらない。


 アレンは神技「創生」を獲得したのであった。



  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る