第499話 霊力と神技

 アレンは自らのステータスに載る新たな項目を見る。


(神界に行くと、霊力が備わるということか)


 数値は0だが、新たな項目が表示されている。

 皆そうなのかと魔導書で仲間たちのステータスを確認する。


 セシルがアレンの挙動に違和感を覚えたようだ。

 仲間たちが審判の門の前でまったりと広げた食事に手を付けているところ、アレンの魔導書を覗き込んだ。


「あら? 私のステータスが何か変わっているわね?」


 セシルは自らのステータスが少し前に見た時より変化していることに気付いた。


「ああ、そのとおりだ。どうやらこの神界では『霊力』と『神技』という力が手に入るらしい」


(なんか過去にもあったな。新たなエリアで新たな力が手に入るとは。これは分析する項目が少し増えたな)


 アレンは前世で健一だったころ、RPG系のゲームやネットゲームを多くやり込んできた。

 バージョンアップなどで新フィールドの実装時に、ステータス枠や装備枠の追加などはよくあったことだ。

 神界に入るだけでクエストがなく、枠が追加されたので親切設定だなと思う。


(あとは、この霊力とやらが使えるかだけだが。ん? クレナのステータスが……)


「おお! 私のステータスも変わってる!!」


 クレナが肉に掛けたソースでベタベタになった手で魔導書を触る。


「ああ、やはり俺の分析は正しかった。神技はエクストラモードで成長すると」


 アレンはセシルとクレナのステータスを見比べた。

 ついでにレベル1になったハクのステータスも確認する。


・セシル、クレナ、ハクのステータス簡易版

 【名 前】 セシル=グランヴェル

 【年 齢】 16

 【職 業】 魔導王

 【レベル】 60

 【体 力】 2470+2400

 【魔 力】 3974+2400

 【霊 力】 0

 【攻撃力】 1640

 【耐久力】 1686

 【素早さ】 3382+2400

 【知 力】 4138+2400

 【幸 運】 2541+2400

 【スキル】 魔導王〈6〉、火〈6〉、氷〈6〉、雷〈6〉、光〈6〉、深淵〈2〉、組手〈4〉

 【エクストラ】 小隕石、神技発動

 【神 技】 魔力蓄積、知力強化


 【名 前】 クレナ

 【年 齢】 16

 【職 業】 竜騎帝

 【加 護】 調停神(中)

 【レベル】 1

 【体 力】 4828+12000(真豪傑)

 【魔 力】 2766+12000

 【霊 力】 0

 【攻撃力】 11188+12000

 【耐久力】 5594+12000

 【素早さ】 4701+12000

 【知 力】 4850+6000

 【幸 運】 3310+12000

 【スキル】 竜騎帝〈1〉、真騎竜〈1〉、真斬撃〈7〉、真鳳凰破〈7〉、真快癒剣〈7〉、真覇王剣〈7〉、真豪傑〈2〉、限界突破〈6〉、神技発動、剣術〈7〉 

 【神 技】 竜気〈1〉、竜騎一体剣〈1〉、超突撃〈6〉

 【経験値】 0/100


 【名 前】 ハク

 【種 族】 亜神竜

 【形 態】 幼体

 【ランク】 亜神

 【レベル】 1

 【体 力】 15311

 【魔 力】 11212

 【神 力】 0

 【攻撃力】 19412

 【耐久力】 15314

 【素早さ】 19412

 【知 力】 10432

 【幸 運】 10437

 【特 技】 次元の息、煌めく息、業火の息、かみ砕く、切り裂く、踏みつぶす、気配察知〈6〉、ブレス無効、魔法耐性〈6〉、物理耐性〈6〉

 【覚 醒】 竜の魂、神技発動

 【神 技】 竜気〈1〉、竜騎一体撃〈1〉

 【経験値】 0/100

 【信仰値】 0/100億


 クレナとハクは竜王とアステルとの戦いに勝利した。

 メガデスからは褒美として、新たな職業、新たな種族に上げてもらいレベル1に戻っている。


 エクストラモードのクレナとノーマルモードのセシルだから違いが分かる。

 クレナの神技にはスキルレベルの表記がセシルと違ってある。


(つうか、信仰値と神力ってなんだよ)


 さらに気になるのが、ハクのステータスだ。

 竜王たちとの戦いに勝利したハクは亜神竜となった。

 そのハクには神力と信仰値というアレンたちにはないステータスがある。


 仲間たちが審判の門の前でピクニック気分で飲んだり騒いだりしている中、1つ1つ新たな項目を確認する。

 分析が今後の神界攻略の指針になるような気がする。


「クレナ、竜気を使ってみてくれ」


 神技を発動してもらうように言う。

 「神技発動」自体にはスキル経験値という概念はないが、「竜気」や「竜騎一体撃」にはスキルレベルの表記がある。


「え? うん。竜気(ドラゴンオーラ)って、発動しない」


 クレナは片手に肉を持ったままを神技を発動しようとするができない。


「む? 発動しないと。セシルはどうなんだ?」


「私? あら、本当ね。何で発動しないのよ」


 クレナとセシルは神技を発動しようとしているが、発動しないようだ。

 クレナと違って、試しの門攻略時で、セシルは神技の発動ができていた。


「メルス、もしかして霊力がないと神技が発動しないのか?」


 この場で原因が分かりそうな者は1人しかいない。

 アレンはやり取りを傍観するメルスに尋ねることにする。


『そうだ。そもそも、霊力なしで神技は発動するものではないぞ。恐らくイシリス様の御力だろうな』


 なんと神技は霊力が必要なようだ。

 魔法神イシリスが何らかの力を使って魔力でも発動するようにしてくれていた。

 しかし、神界にたどり着き、ステータスに霊力の項目が追加されたことによって、その力も失われてしまったようだ。


「霊力を溜めるにはどうするんだ?」


『神界にいる霊獣を倒すなりして、霊石を使うなりしないといけないな』


 メルスが霊力の回復方法を教えてくれる。


(ほう、霊獣がどこにいるのか知らないが、早急に狩って検証をする必要があるな)


 魔力のように単純に時間が経てば回復するようなものでもないようだ。


「ハクだけステータスが違うな。信仰値を100億溜めるにはどうするんだ?」


 霊力や神技はこれ以上分析できないことは分かった。

 ハクのステータスにある「神力」と「信仰値」についても確認する。


『ギャウ?』


 名前を呼ばれたと思ってハクが一瞬アレンの方を見る。

 しかし、特段呼ばれたのではないと分かって魔導袋から出した大きな肉の塊にありつくことにするようだ。


『ハクには神器があり、神に至れる存在だ』


「ほうほう」


 話を続けるように催促する。

 こういった神や信仰についての話をメルスはとても嫌がる。

 人々に広く周知するような話ではないのだろう。


『……神器のあるハクは、人々から信仰を集め、神力を得る。得た神力で奇跡を起こすのだ』


 アレンの最後まで答えろという意識に、メルスは答えてくれる。


 メルスの話では、信仰値が溜まると神になれるらしい。

 アレンはガンガン魔導書に聞いた話をまとめていく。


【霊力、神力、神技、信仰値のまとめ】

・霊力は霊獣を倒したり、霊石を使うと溜まる

・霊石は霊獣を倒すと手に入る

・神技の発動には霊力が必要

・神力は信仰の器を持つ神が行使する力

・信仰値が一定量溜まると神になる

・信仰値は信者の祈りや、霊獣を倒すと溜まる


「さて、なんとなくわかってきたぞ。さて、クワトロを召喚してみるか」


 持っている聖珠を1つ聖珠ポイントに変換する。

 魚Sのマクリスの聖珠はポイントにすると15ポイントになる。


 仲間たちもようやくアレンがクワトロを召喚するのかと視線が集まっていく。


(召喚だ! 出てこい。クワトロ)


『鳥Sの召喚獣を生成しました。聖珠ポイント3ポイントを消費しました』


『クワアアアアアアアアアアアアア!!』


 大きな鳴き声を上げ、金色の鳥がアレンたちの前に現れた。


 全長は前回会った時の10メートルからさらに巨大になり、30メートルに達する。

 鳥系統では最大級の大きさだ。

 体はずんぐりむっくりだった以前と違い白鳥のように流線形で細身な姿だ。

 金色の羽に覆われており、羽は相変わらず頭の後ろと背中に1組ずつ携えている。

 眼は変わらず4つあり、翼の羽の先は虹色にキラキラと輝いている。


 神界に行きたがっていたためか、雲の上をゆっくりと回るように優雅に飛んでいる。

 アレンはクワトロのステータスを確認する。


 【種 類】 鳥

 【ランク】 S

 【名 前】 クワトロ

 【体 力】 40000

 【魔 力】 40000

 【攻撃力】 40000

 【耐久力】 40000

 【素早さ】 50000

 【知 力】 50000

 【幸 運】 40000

 【加 護】 素早さ5000、知力5000、回避率上昇

 【特 技】 万里眼、鑑定眼、追跡眼、浮遊羽、幼雛化

 【覚 醒】 不死鳥の羽、聖珠生成、〈封〉


 仲間たちも新たなSランクの召喚獣が気になるのか、魔導書を覗き見る。


「ほおおお、つおおおい!」


 クレナもワクワクが止まらない。


(よしよし、何か期待通りというか、鳥系統の特技の集大成のようなものか)


 召喚獣にはそれぞれの系統で役割がある。

 獣系統なら攻撃で、魚系統ならバフなどだ。

 鳥系統の召喚獣は偵察などの主な役割がある。


 ゆったりと空を飛ぶクワトロに特技「万里眼」を使ってもらう。


「おお! めっちゃ遠くまで見える!! つうか神界って広すぎだな!!」


 共有したアレンの視界には1000キロメートル先まで見える。


 この審判の門から回廊のように真っ直ぐ雲の道が続いている。

 その先に巨大な雲の大陸があるようだ。

 大陸の全容は分からないが、鳥Eの召喚獣の10倍先まで見渡すことができた。


『ふふふ。私はどうやら聖鳥の時以上の力を得たようです。私はアレン様の目となります。全てを見回しましょう』


 アレンの驚きにクワトロは自慢げだ。

 聖魚であったときのマクリスと同様に、見た目以上にステータスが向上しているようだ。


 次に、特技「鑑定眼」を使ってみる。


「ドゴラ、鑑定眼を使ってみるぞ」


「ん? ああ」


「ふむ、ステータスが分かるぞ」


 アレンはドゴラのステータスが分かる。

 鑑定という言葉から身体をスケスケにする能力ではないようだ。


『はは。念願のステータス解析が手に入ったね』


 雲の上に並べられた料理をワシャワシャと食べる精霊神ローゼンが念願が叶って良かったねと言う。


「そうですね。って、おお! 結構なステータスだ」


 【名 前】 ローゼン(幼精霊化)

 【種 族】 精霊

 【年 齢】 5023

 【体 力】 50000

 【魔 力】 70000

 【神 力】 45000

 【攻撃力】 40000

 【耐久力】 40000

 【素早さ】 60000

 【知 力】 70000

 【幸 運】 50000

 【攻撃属性】 木

 【耐久属性】 木


 アレンはローゼンを鑑定してみる。

 すると、精霊神のステータスがクワトロと共有したアレンの頭の中に流れていく。


(なるほど、神に至ったと言われるローゼンは、現在は亜神状態であると)


 年齢など思ったより色々な情報が分かる。


『はは。黙って鑑定するのは感心しないね』


「すみません」


 注意されたので、素直に謝っておく。

 二度とやらないとは言っていない。


(これは便利だ。ステータスだけでなく攻撃や耐久属性が分かるのも大きいぞ)


 戦術の幅は広がっていくような気がする。

 初見で相手の耐性が分かると戦いを有利にすることができる。

 出来ればスキルや特技も分かった方が良かったがそこまでの親切設定ではないようだ。


「じゃあ、えっと。次は浮遊羽っと」


『畏まりました。アレン様、皆に自由なる翼を!!』


 天に舞うクワトロが大きく羽ばたいた。

 虹色の輝くクワトロの羽が仲間たちの下に降りてくる。


「おお! なんだこりゃ!!」


 キールが雲の上でバヨンバヨンと飛び跳ねた。


「ちょっと、これ空を飛べるわよ!!」


 セシルも感動している。


(勇者やガララ提督のパーティーにも影響があると。範囲系の特技か。ん? 素早さが上がっているぞ)


 どうやら一定範囲内の仲間たちが空を飛ぶようにできるようだ。

 ロゼッタやガララ提督の仲間たちもびっくりしている。


 仲間たちの素早さが1万上昇している。

 特技「浮遊羽」は空を飛べるようにして素早さを上げるようだ。


(これは助かるな。素早さを上昇させるのもこれからの課題だったからな)


 アレンたちのパーティーで前衛は攻撃力を上げる装備を多く持っている。

 1万の素早さ上昇は助かると考える。


 さらに、これまで上空を移動する鳥Bの召喚獣を後衛のために召喚してきた。

 特技「浮遊羽」があればこれまでの鳥Bの召喚獣の召喚枠を減らすことができそうだ。


「なんか、アレンがますます化物じみてくるわね」


 空を飛ぶロゼッタが片手に酒の入ったジョッキを持ったまま驚いている。


(解除も思いのままか)


 特技「浮遊羽」の状態を解除すると仲間たちはゆっくりと雲の上に着地した。


 そのまま他の特技なども分析しようとする。


「ん? あれ?」


 そんな中、アレンは自らのステータスに違和感を覚えた。

 これまで当たり前のように回復するアレンのステータスが減ったままなことに気付く。


「アレンどうしたのよ」


「セシル、神界では魔力が回復しないぞ」


 アレンは分析の中で衝撃の事実を知るのであった。

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