第374話 5大陸同盟会議③
メルルは魔岩王に転職した後、ドゴラたちとのアイアンゴーレム狩りに合流した。
ノーマルモードということもあり、レベルは1体倒した時点で60になりカンストする。
それから休日は設けているものの1日10時間を超える狩りにより職業レベルを4まで上げた。
スキルレベルが育ち切れていないため、ステータス上昇のスキルがまだ1つしかない。
しかし、それ以上の価値を各国の代表がメルルに見出す。
バウキス帝国にガララ提督と同じ才能を持った、新たな魔岩王の誕生を意味する。
バウキス帝国は、1000万人に1人の割合でドワーフの中から、魔岩将の才能のある子が生まれる。
魔王軍の侵攻によって、多くの同じ3つ星の剣聖や聖女が死んでいった。
しかし、魔岩将は頑強なゴーレムの中で守られていたため、かなりの数の魔岩将のドワーフがいる。
その数は20人を超える。
今後、その全員が転職し、魔岩王になるのか。
そもそも、ガララ提督は魔岩王よりさらに1つ上の才能を手にするのかと、各国の代表が唾を飲み込んだ。
元々ゴーレムの軍勢を持つバウキス帝国はどれだけの力を持つと言うのか。
「ほほ。メルルよ。もう転職を終えているのか。大義であるぞ」
「ありがとうございます」
メルルが深く頭を下げて、礼を言う。
円卓に座る5人の1人にバウキス帝国の皇帝ププン3世=ヴァン=バウキスがいる。
見た目がとっちゃん坊やで明らかに足のサイズが合っていない椅子に座っている。
バウキス帝国皇帝がまんざらでもない顔をするのは、それだけの羨望を各国の代表から集めることができたからだろう。
ざわつきが一段落したので、鑑定の儀を再開するのだが、その度に停まる。
クレナ、キール、セシルとここから先も星4つ以上の才能が続くからだ。
「皆、才能に溢れているではないか。クレナというものの数値も勇者ヘルミオスに引けを取らぬぞ」
「聖王、おお、エルマール教国を救いし新たな教皇か」
「これがS級ダンジョンを攻略した者たちの力か!!」
「教皇見習いです!」
星5つの才能のクレナの鑑定までが終わり、ざわつきはどんどん大きくなるなか、ギアムート帝国皇帝の顔が険しくなっていく。
クレナのステータスは2度の転職により勇者ヘルミオスに引けを取らないステータスに達していた。
どうやら、勇者ヘルミオスに対して十分な評価を得ることができなかったことが不愉快であったようだ。
キールは教皇見習いという馴染みない職ではなく教皇と呼ばれた。
大きな声で叫んだが、各国の代表はほとんど王族であるため、丁寧な言葉で話すなとアレンは思う。
そして、ドゴラが「やっと順番がきたか」と、水晶に手を当てる。
ヘルミオスからギアムート帝国皇帝に対して、アレンのパーティー全体の強さについては報告させている。
ギアムート帝国皇帝は、たしかこの男はクレナとかいう剣帝よりはそこまで力はなかったと聞いていたなと思いながら漆黒の板を見つめる。
【名 前】 ドゴラ
【年 齢】 15
【加 護】 火の神
【職 業】 破壊王
【体 力】 6329+4800
【魔 力】 2927+2400
【攻撃力】 6788+4800
【耐久力】 5835+4800
【素早さ】 4473+4800
【知 力】 2765+2400
【幸 運】 4288+4800
【スキル】 破壊王、真渾身、真爆撃破、真無双斬、真殺戮撃、全身全霊、真闘魂、斧術、双斧術、盾術
会議室全体を強い光が覆う。
そして、圧倒的なステータスが漆黒の板に銀色の文字で表示された。
「ん? どういうことだ? なんだ、このステータスは……、こ、攻撃力がとんでもないことになっておるぞ!!」
「火の神の加護だと? フレイヤ様の御力を宿しているのか!」
「なんだ。先ほどのクレナを超えるほどの力があるではないか!」
(ドゴラはレベル80を超えて、まだ上がり続けるな。何処まで上がるんだろうな。破壊王のレベル3になった時覚えた真闘魂は、震えがくるくらいデカいな)
ドゴラはアイアンゴーレムを8000体ほど狩り、レベルを84まで上げることができた。
スキルレベルについて、破壊王の職業レベルを3まで上げることができた。
その結果、ステータス上昇することができる真闘魂のレベル1を体得することができた。
この真闘魂はスキルレベル1で、魔力と知力を2400上昇させ、それ以外のステータスを4800上げる。
なお、ノーマルモードであった時取得した闘魂は、魔力と知力のステータス上昇はなし。
スキルレベル1の時に、それ以外のステータスを2400上げる。
エクストラモードとノーマルモードでこれほど桁違いにステータス差を生むのかと思う。
そして、エクストラモードに達した際に、スキル名に「真」という表示がされたのだが、「真」のつかなかった頃よりスキルの消費魔力が5倍以上に上昇した。
この結果もあって、1カ月強という短期間であったがドゴラはスキルレベルを3まで上昇することができた。
大斧2刀流を選んだ、ドゴラは神器カグツチとアダマンタイトの大斧を装備している。
その結果、双斧術という新しいスキルを体得した。
「何だ? ドゴラって奴は中々やるじゃねえか。あとはリーダーか」
胸の前で腕組をした獣王がドゴラのステータスに感心しているようだ。
最後の鑑定はアレンかと口にする。
(また不完全な鑑定結果くるよこれ。皆震え上がって見るがよい)
鑑定の儀では職業欄が文字化けしていた。
学園の受験の時は成長速度も勘案して、能力値は全てEに表示された。
不遇の鑑定結果がまた現れるのかと、全く鑑定結果に期待をしていない。
【名 前】 アレン
【年 齢】 15
【職 業】 召喚士
【体 力】 3815+2000
【魔 力】 6060+14000
【攻撃力】 2124+2000
【耐久力】 2124+3800
【素早さ】 3951+5000
【知 力】 6070+16800
【幸 運】 3951+2000
【スキル】 召喚、生成、合成、強化、覚醒、拡張、収納、共有、高速召喚、等価交換、指揮化、王化、削除、剣術、投擲
「おおお、何だこの魔力と知力の高さは」
「なるほど、アレン軍の代表は、知略に優れているということか?」
「2万を超えた知力など見たことがないぞ」
(鑑定結果が3度目の正直でまともに表示された件について。ドゴラより騒がしくならないね。まあ、戦争は剣や槍を持って戦うってイメージだろうからな)
戦争で最も大事なことは火力だ。
なので、セシルのエクストラスキル「小隕石」は攻撃範囲がとても広く強力で、メルスの覚醒スキル「裁きの雷」は戦果で圧倒する。
だが、ここにいる王族は才能のないものがほとんどだ。
魔王軍と戦った軍役のある王族は少ないだろう。
各国の代表はアレンよりドゴラやクレナの方が、魔王軍と戦う上では強く感じているようだ。
ドゴラを筆頭に、魔岩王メルル、剣帝クレナ、聖王にして教皇見習いのキールなど優秀な仲間を持っていた。
各国の代表は知略を使って操る存在にアレンを分析する。
(落ち着いたら、話を進めたいんだけど)
騒がしくなった会議室の中、アレンは演台に手元を隠して、魔力の種を使い魔力を回復しながら、スキル経験値をさっきからずっと上げ続けている。
必要な魔力の種はメルスが生成し続けており、1日でも早く召喚レベルを上げようとしている。
効率厨であったアレンは、キュベルの策謀によって一刻も早くスキルレベルを上げる必要性に駆られている。
次に何をしてくるのか分からないので、一刻も早くSランクの召喚獣を召喚できるようになりたい。
各国の代表がざわつく中、ギアムート帝国の皇帝は我慢できずに立ち上がった。
「インブエルよ。こ、これはどうなのだ? 流石にやり過ぎだとは思わぬか? どうやってうまく匿っていたのだ?」
ギアムート帝国皇帝の口調は明らかに怒りを押し殺している。
そして、各国の代表が座る中でも最前列に座らされているラターシュ王国の国王インブエル=フォン=ラターシュを睨みつける。
せっかく転職して英雄王になった勇者ヘルミオスのレベルとスキルレベルがカンストし、とんでもないステータスになったぞと自慢をしたかったのかもしれない。
そして、ヘルミオスを超える者は現れないと確信していたのかもしれない。
各国の代表はアレン軍の主要メンバーである彼ら彼女らの話でもちきりになってしまったことが我慢ならないようだ。
「か、匿うなどと……」
「ほう。違うのか?」
「いえ……」
(何か責められているな)
ラターシュ王国は5大陸同盟に加盟している。
当然、現国王であるインブエル=フォン=ラターシュもこの場にいる。
アレンは気付いていたのだが、一切目を合わそうとしないため、触れることはなかった。
ラターシュ王国の生まれがとても多いアレンのパーティーにおいて、このような力が世界に露見し始めたのはここ1年くらいの話だ。
世界100カ国に達する各国の代表が集まる中、結構辛辣な言葉でラターシュ王国の国王に対して攻め続ける。
「5大陸同盟への考えに協調できないというのであれば、脱退してもらっても構わぬのだぞ!!」
覇権主義のギアムート帝国が同じ中央大陸の各国を攻めないのは、5大陸同盟に加盟して協力を惜しまないからとも言われている。
「と、とんでもありませぬ。この数十年、ラターシュ王国は同盟の理念に協調しております」
「王国派と呼ばれておるではないか。何を言う!」
アレンは勇者ヘルミオスとの学園での対決、ローゼンヘイムでの戦争への参加、S級ダンジョンを攻略し20年ぶりのSランク冒険者となる。
全てにおいて、5大陸同盟への情報が遅かった。
そして、今回のとんでもない鑑定結果だ。
とうとう、ギアムート帝国の皇帝の怒りの全てがラターシュ王国の国王に向く。
大国でありラターシュ王国にも接しており、鮮血帝の異名のあるギアムート帝国の皇帝は、ラターシュ王国の国王に反論することを許さない。
あまり気分を害さずにこの場を乗り切りたいという表情が前面に出ている。
各国の代表も、これからも協調していこうというところで、そこまで言わなくてもと思う。
獣王は腕組をして「うるせえな」という顔を前面に出して目をつぶっている。
早く話が終わらないかなと興味がないようだ。
ローゼンヘイムの女王は、この場でこれ以上大国の盟主が感情を出すのはよろしくないと思ったようだ。
そろそろ口に出し止めようとした時だった。
「申し訳ありません。ギアムート帝国の皇帝陛下」
「む? アレンよ。どうした」
アレンは皇帝の言葉を遮るように間に割って入る。
意識が自らからアレンに移りラターシュ王国の国王がホッとする。
「お怒りは大変分かるのですが、ラターシュ王国の国王も魔王軍との戦いに勝ち抜くことを何よりも大事にしております」
「何の話だ?」
この言葉はギアムート帝国の皇帝の言葉だが、ラターシュ王国の国王も同じことを考える。
「いえ、ラターシュ王国の王女レイラーナ姫もアレン軍の拠点で活動しております」
(フォローしてあげるんだからね)
「ぶ!? あ、アレン。なぜ今それを言うのだ!!」
今一番それを言ってはいけないことだとラターシュ王国の国王が叫んだ。
なるほどそういう仲なのかと各国の代表の視線がラターシュ王国の国王に集まっていく。
「ほう、それは真か?」
ギアムート帝国の皇帝の額に血管が浮き出てくる。
そんな中、ラターシュ王国の国王は魂が口から飛び出るのではと思うほど、大いに噴き出した。
各国の思惑が入り乱れる中、5大陸同盟会議は続いていくのであった。
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