第164話 別動隊

 学長からローゼンヘイムを救ってほしいと言われて了承した。

 それから、丸1日過ぎた。


 アレン達は、ローゼンヘイムに行くための準備を進めた。

 食料など、必要物資は既に用意していると言われたが、アレンが必要とするものは他にある。


 2年弱過ごしたこの街にもう戻って来れないかもしれないと思うと、何か感慨深いものを感じる。戦争に絶対はないと思うし、必ず勝てる保証もない。


 この街の住民のほとんどは魔王のことなど知らず、変わらない日々を送っている。

 このまま知らないままにしようと思う。


 キールは、妹のニーナや使用人に事情を話した。ニーナはかなりショックを受けていたが、戻ってきてくださいと涙ながらに言っていた。

 そのニーナと使用人達は、予定よりも1年ほど早いが、ハミルトン家にお世話になるという話になった。


 アレンとしては、短期決戦を予定しているが、敵がゲリラ的な作戦を行い戦闘が長期化する可能性は十分にある。


学長室から出たあとリフォルに事情を話し、ニーナ達を早めにハミルトン家の館に引き取ってもらうことを了承して貰った。


『僕とアレン君の仲だからね。全く問題ないよ』


 と言われ、借りを作ってしまったが、この2年間色々教えてもらったことを考えれば、それくらいの借りは構わないだろう。



 今、アレンは学園都市の郊外にいる。

 魔導書を開いて、召喚レベルが7になり召喚が可能になったBランクの召喚獣のステータスや特技、覚醒スキルの確認を行っている。


(さて、10体、いや15体くらいは応援で送りたいな)




・形状は蟻の虫Bのステータス

 【種 類】 虫

 【ランク】 B

 【名 前】 アリポン

 【体 力】 2600

 【魔 力】 1000

 【攻撃力】 2400

 【耐久力】 3000

 【素早さ】 3000

 【知 力】 2000

 【幸 運】 1800

 【加 護】 耐久力100、素早さ100

 【特 技】 ギ酸

 【覚 醒】 産卵


・形状はケルベロスの獣Bのステータス

 【種 類】 獣

 【ランク】 B

 【名 前】 ケロリン

 【体 力】 3000

 【魔 力】 1000

 【攻撃力】 3000

 【耐久力】 2700

 【素早さ】 2800

 【知 力】 2000

 【幸 運】 1400

 【加 護】 体力100、攻撃力100

 【特 技】 3連噛みつき

 【覚 醒】 9連噛み砕き


・形状はグリフォンの鳥Bのステータス

 【種 類】 鳥

 【ランク】 B

 【名 前】 グリフ

 【体 力】 2000

 【魔 力】 1000

 【攻撃力】 2000

 【耐久力】 2300

 【素早さ】 3000

 【知 力】 3000

 【幸 運】 2400

 【加 護】 素早さ100、知力100

 【特 技】 飛翔

 【覚 醒】 天駆


・形状は桃の草Bのステータス

 【種 類】 草

 【ランク】 B

 【名 前】 モモコ

 【体 力】 100

 【魔 力】 3000

 【攻撃力】 100

 【耐久力】 100

 【素早さ】 100

 【知 力】 100

 【幸 運】 3000

 【加 護】 魔力100、幸運100

 【特 技】 大地の恵み

 【覚 醒】 天の恵み


・形状はミスリル製フルプレートの石Bのステータス

 【種 類】 石

 【ランク】 B

 【名 前】 ミラー

 【体 力】 3000

 【魔 力】 1000

 【攻撃力】 2800

 【耐久力】 3000

 【素早さ】 2300

 【知 力】 2000

 【幸 運】 2500

 【加 護】 体力100、耐久100

 【特 技】 反射

 【覚 醒】 全反射


・形状は亀の海竜アーケロンの魚Bのステータス

 【種 類】 魚

 【ランク】 B

 【名 前】 ゲンブ

 【体 力】 2900

 【魔 力】 3000

 【攻撃力】 2000

 【耐久力】 2900

 【素早さ】 1000

 【知 力】 3000

 【幸 運】 2600

 【加 護】 魔力100、知力100

 【特 技】 タートルシールド

 【覚 醒】 タートルバリア


 ・形状は女性霊の霊Bのステータス

 【種 類】 霊

 【ランク】 B

 【名 前】 エリー

 【体 力】 2600

 【魔 力】 3000

 【攻撃力】 2600

 【耐久力】 3000

 【素早さ】 2600

 【知 力】 3000

 【幸 運】 1800

 【加 護】 耐久力100、知力100、物理耐性強

 【特 技】 グラビティ

 【覚 醒】 ブラックホール


 ・形状はドラゴンの竜Bのステータス

 【種 類】 竜

 【ランク】 B

 【名 前】 ドラドラ

 【体 力】 2800

 【魔 力】 1000

 【攻撃力】 3000

 【耐久力】 2900

 【素早さ】 3000

 【知 力】 1800

 【幸 運】 1600

 【加 護】 攻撃力100、素早さ100、ブレス耐性強

 【特 技】 火を吐く

 【覚 醒】 怒りの業火


『それで、私達は魔王軍と呼ばれる魔獣達をぶっ殺せばいいのデスね?』


 金髪で、年は10代前半くらいの女性がアレンに話しかける。

 体が少し透けて見えて、宙に浮いて物騒な言葉使いをしているのが、霊Bの召喚獣だ。


「そうだ。あくまでも魔獣だ。恐らくかなりの数の人間の兵士がいるが絶対に手を出さないでくれ。たとえ襲われてもだ」


『承りましたデスわ』


 アレンは、中央大陸北部にある最前線に向けて、召喚獣達を戦いに行かせようと思っている。200万体に上る魔王軍に対して少しでも力になればと思うし、中央大陸北部の戦況を知るためだ。


 もし、ギアムート帝国が敗れようものなら、次に戦うのは我らが王国だ。


 10数体の召喚獣で戦況を変えられるとは思わないが、戦況を知ればその後の対応が早くなる。今回のように話を聞いた翌日にローゼンヘイムに行くような準備不足は避けたい。


『ギチギチ』


「アリポンすまない。大陸北部の戦場は遠すぎるんだ。だから、移動だけで1ヵ月が過ぎてしまうから行かせてあげられない。ローゼンヘイムでは活躍してもらうから頑張ってくれ」


 虫Bの召喚獣が凹んでいる。アレンは頭をポンポン叩いて宥めてあげる。


 召喚獣は連続して1ヵ月召喚していられる。ダンジョン内に留まったり、連絡役としてグランヴェルの街にいったり、ロダン村の開拓を手伝ったりと1ヵ月あればできることは多い。しかし、今回は、広大な帝国を南から最北まで移動しないといけない。


 空を飛べて、移動速度がある程度見込める召喚獣に行ってもらう。


・鳥Eの召喚獣2体

・鳥Dの召喚獣2体

・霊Bの召喚獣5体

・竜Bの召喚獣5体


(索敵に、戦闘、情報収集を含めてこんなものか。回復薬も持たせてと)


「ああ、魔神や魔族が出てきたら、なるべく情報が欲しい」


(調べたけどほとんど情報ないしな。せめてどの程度の強さかだけでも知りたいぞ)


『相分かった。情報が得られるように立ち回るとしよう』


 竜Bの召喚獣が代表して答える。


 学長や担任から得た情報だが、魔王軍側にも大将となる敵がいる。


 この作戦は、アレンの仲間達は知っているが学長は知らない。必要以上の情報を伝える必要がないことが一番の理由だ。それに、エルフの回復部隊の撤退をすぐに教えてくれなかった学長を全面的に信用するわけにはいかなかった。


「じゃあ、行ってきてくれ。戦場の様子が分かったら応援を送るかもしれないがあまり期待をしないでくれ」


『ぶっ殺してきますデスわ』


『おう、焼き尽くしてくれるわ』


 言葉が話せる霊Bと竜Bの召喚獣が返事をしてくれる。そして、視界を共有したまま一塊になって飛行し中央大陸の北上を開始する。




「おまたせ」


「アレン、もういいの?」


「ああ、クレナ。行ってもらった」


 アレン達は100メートル級の高速魔導船の前にいる。


 数百人の転入してきたエルフ達も帰還命令が出たため一か所に固まっており不安そうだ。

 ソフィーが「不安はない、我々にはアレン様がいる」とよく分からない励ましの声を掛けて回っている。


 キールを見ると、ニーナや使用人と最後のお別れをするところだが、一番年長の使用人と何か揉めているようだ。

  

 どうやらダンジョンで稼いだ結構な額のお金を託そうとして、「受け取れ」、「受け取れません」の応酬を行っている。昨晩拠点でもやっていたなと思っていたら、「ニーナ様のために使わせていただきます」と使用人側が折れたようだ。


「いいのか?」


「あ? 何がだよ」


 アレンはドゴラに話しかける。今回の戦いで一番危険なのはドゴラだと思っている。


(まあ、Bランクの召喚獣に比べてもはるかに強いんだけどね)


 仲間に有って、召喚獣にないものがある。

 それは、武器と防具だ。アダマンタイトの武器と防具を身に纏っている。

 だから、そうそう負けることも死ぬこともないと思っている。


 しかし、今回の戦いにはドラゴン以上の敵がいると思われる。


「このまま、付き合わなくてもいいんだぞ?」


 アレンはこのまま流されるように戦場に行っていいのかとドゴラに問う。


「何言ってやがる。国王陛下は俺の名前もしっかり命令書に書いたんだ。断る理由がどこにある。戦場で活躍してしっかり褒美をもらわねえとな」


 ドゴラはにやりと笑い、どこかアレンが言いそうな言葉で返す。


「ああ、そうだな。クレナと一緒に最前線にやるからな」


「当り前だろ、リーダー」


 そう言ってドゴラは肩に担いだ斧を強く握りしめた。


(まずは、ネストの街か)


 これからアレン達は魔導船に乗り込む。降りる先は魔導船で4日ほど行ったところにある、ローゼンヘイム最南端のネストという大きな街だそうだ。


「もう乗っていいみたいだな。じゃあ、皆行くぞ」


「「「おう!」」」


 戦場に出発するアレン達であった。

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