5月5日Ⅶθ(22)
「神坂、向かって2時の方向にある船だ!」
師範に指示された方を覗き込むと、予想通りの大型船が確認できた。
「今からあの船の頭上に向かってそこでホバリングをする。その間に愛奈様の後に続いて飛び降りろ」
「了解しました」
まさかの初スカイダイビング?
普通なら緊張しそうなものだが、今はなぜか心が落ち着いて静かだった。
ちなみに師範の指示で、飛行中に私たちはドレスからライダースーツへと着替えている。
なんだかスパイみたいな光景だ。
「詩歌さん。甲板に降り立ったら私の一歩後ろで待機していてください。私が話を付けます」
「わかった」
三和さんはこんな状況にも動揺する素振りが全く無い。
お嬢様なのに、こんなアクロバティックな状況を何度も経験してきているのだろうか。
「頭上につきました、愛奈様。いつでも大丈夫です」
師範が三和さんにピンマイクで告げる。
「了解しました。では先に私、その5秒後に詩歌さんが飛びます」
「お気をつけて」
三和さんと愛奈さんはお互いの顔を見ずとも、息のあった連携を見せる。
羨ましい関係だ。
「では行きます!!」
ガラガラッと、ヘリのドアを勢いよく開けて三和さんがヘリから飛び降りた。
「神坂いけ!愛奈様を任せたぞ!」
「はい!」
師範の言葉を背中に受けながら、その直後に私も勢いよく大空へと飛び立った。
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