5月4日Ⅵ(10)

「楠木様、神坂様ドレスの用意ができましたのでお越しになってください」

詩歌と二人でグダグダリビングで過ごしていると、汀さんではない別の女性に声をかけられた。

「貴女は?」

「申し遅れました、佐藤と申します」

佐藤さんはペコリと礼をする。

あ、思い出した。

あの時の自称下っ端さんか。


「ドレスってのは今日着るやつですか?」

「そうですね。今日の晩餐会のために愛奈様が自らお選びになったと伺っております」

佐藤さんは、私たちを一階の衣装部屋へと案内する途中に説明してくれる。

「こちらになります」

「「おおー」」

私たちが着る予定になっているドレスが、衣装部屋の中央に並べて飾られていた。

「水色のものが楠木様。赤色のものが神坂様になります」

「すごい可愛い!え、これ着れるの?」

「はいもちろんです」

詩歌が興奮気味に尋ねると、佐藤さんは笑って答える。

「楽しみだね架那ちゃん!」

「うん!」

初めて着る本格的なドレスに舞い上がっていた二人がここにいた。

と言うか私たちだが。

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