5月4日Ⅵ(3)

キキーッッとレース場で聞くような音を立てながら、リムジンが私の家の前でドリフトしながら停車する。

周囲を歩いていた人は目をかっぴらいて私の方を見ている。

「架那さん、お待たせして申し訳ありません」

吹き付ける風でなびく髪を片手でおさえながら、愛奈さんが車から降りてくる。

「大丈夫今来たところ」

日の光を反射して美しく輝く髪と肌、それに負けない純白のワンピースに目をとられ、私はテンプレのようなことを言うことしかできなかった。

「ならよかったです。では行きましょうか」

愛奈さんは私の手を取って車内へと入る。

おわぁ。

周りの人の好奇の目線が辛い。

これ絶対おばあちゃんの耳にも届いちゃうじゃん。

恥ずかし。


「それにしても中ひっろ!まじやば!」

感想はとにかくそれしかなかった。

やばい。

リムジンやばい。

「ごゆっくりお寛ぎくださいね」

愛奈さんが笑顔でドリンクを手渡してくる。

お金持ちの世界ってすごいな、と今更実感した私だった。

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