4月30日Ⅵ(24)

「単刀直入に申しますと、架那さんの力を私にお貸しいただきたいのです

 こんな手荒な真似をしてまで、貴女をお呼びしてしまったこと深くお詫び申し

 上げます」

三和さんはそう言って再度頭を下げる。

「私の力ってどう言うことですか?

 私の頭脳が借りたいと言うことでしょうか?」

「いえ、そうではありません。

 不躾ではありますが、架那さんの御父様の事故のことについて覚えていらっ

 しゃいますか?」

「ええ、まあ朧げなから。それと何か関係が?」

話の筋がわからない。

私の父がどう関係するのだろうか。

「実はあの事故は、事故ではなく事件だったのです」

「っ!?どう言うこと!?」

「あの日、貴女が12歳の頃、貴女はお父様と共に、日本科学協会の授賞式へと出

 向きました。

 題目は『カンフルによる蘇生効果』

 そこで貴女は弱冠12歳にして、日本科学協会賞を受賞しました。

 ちなみにその時、言葉は交わしてはいないものの、私もあの場にいたんです

 よ。

 話を戻しましょうか。

 その後祝賀パーティーへとあなた方は向かった。

 そこで事件は起こったのです」

そうだ、思い出した。

そこで、お父さんが–

「パーティーの途中、お手洗いに立った貴女のお父様がしばらく経っても戻って

 こなかったため、貴女はお父様を探しに行きました。

 そこで貴女が目にしたのは、血塗れで階段の下で横たわる貴女のお父様でし

 た。

 そこで貴女は気を失って倒れてしまった、そうですよね?」

そうだ。

そこまでは何も異論はない。

「そしてその後、病院へ運ばれた貴女は、お父様の死亡の知らせを聞きます。

 死亡理由は、酩酊状態での意識混濁による転落。

 ですが、これが事実とは異なるのです」

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