4月30日Ⅵθ(17)

くそ。

またミスった。

今回は架那ちゃんから目を離さず、かつ睡眠剤も入れさせず、相手の動きを縛ったつもりだったのに、まさか堂々正面から来られるなんて。


ただ気になるのはやつらが言っていた、攫った目的だ。

『架那ちゃんの力を味方につけること』だと?

架那ちゃんを味方に、ではなく、架那ちゃんの力を?

どういうことだ。

架那ちゃんの頭脳が必要なのか?

それともこのループの原因は架那ちゃんにあるとでもいうのか?

だとしたら、何故彼らはその能力が欲しいんだ?

わからない。

わからないことが多すぎる。


…だがひとまずどうやってここから出よう。


「神坂詩歌だな。立て」

と思っていた矢先、一人私が入れられている個室へ入ってきたかと思うと、そう私に指示した。

なんでここに?

まあとりあえず相手の出方を探るか。

「一つ尋ねる。お前にとって楠木架那はなんだ」

「大好きな人」

即答するしかなかった。

だってそれ以外の答えを知らなかったから。

「そうか。時に貴様剣術の心得があるようだな」

「ええ、まあ」

「ならば私と戦え。それ次第で貴様をどうするか決めてやる」

誘拐犯のバイクヘルメットの下の素顔は、やはり女性だった。

「勝負は一回だ。これを持て」

彼女は私に伸縮型の警棒を投げ渡してくる。

異議は認めないってか。

いいだろう。やってやる。

「わかりました。けどやるからには勝ちますからね」

不敵な笑みと共に、私は彼女に向かい直った。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る