旅行先で目を覚ましたら村上義清になっていた私。そんな私を支えることになったのがアンチ代表の真田幸隆だった。

第402話警戒

真田幸隆「しかし信長の諜報網は機能していたんだよな？」

春日虎綱「はい。」

真田幸隆「信長の妹の報告以外にも浅井の動きは入っていたんだよな？」

春日虎綱「はい。」

真田幸隆「それに対して信長はどう対処したのだ？」

春日虎綱「信じていなかったそうであります。」

真田幸隆「自前からの報告だよな？」

春日虎綱「はい。」

真田幸隆「何のための諜報機関だよ。」

春日虎綱「『あいつ（浅井長政）がそんな真似するわけが無い。もう一度調べてみよ。』と……。」

真田幸隆「本気か？」

私（村上義清）「もし妹からの報告が無かったら？」

春日虎綱「何も考えずに木ノ芽峠を越えていたかと思われます。」

私（村上義清）「退却路を確保しないまま？」

春日虎綱「うちの時もそうだったでしょう。味方の部隊が崩れそうになった瞬間に自分独りで逃げ出して。それは別に構わない事なのでありますが、逃げるために選んだ道がうちの領内の真っ只中だったのでありますから。」

真田幸隆「朝倉を舐めていた？」

春日虎綱「敦賀の制圧があまりもあっさりと成し遂げる事が出来てしまったのも影響したかと思われます。」

私（村上義清）「『朝倉恐るるに足らず。これを見て長政も義景を見限るであろう。』」

真田幸隆「『わざわざ火中の栗を。それも敵対した瞬間に集中砲火を浴びせられる立地条件にある長政が拾いに行くはずが無い。』と……。」

春日虎綱「しかし長政は動いてしまいました。」

真田幸隆「朝倉との主従関係が大きかった？」

春日虎綱「それもありますが、それ以上に将軍様のお墨付きが決断を後押ししたものと思われます。」

私（村上義清）「でもあれって……。」

春日虎綱「信長にも同じようなものを送っているあれであります。」

私（村上義清）「『勝った者を公認します。』のあれだろ？」

春日虎綱「まさにそれであります。」

私（村上義清）「信長は無事岐阜に戻る事が出来。南近江の態勢は整えられ、特に損害も無かった織田とのいくさについて将軍は？」

春日虎綱「あくまで勝った者を公認する事になります。しかも信長が生き残っている以上、表向き将軍様は信長の立場に立って行動を共にする事になります。つまり浅井長政は『賊将』と位置付けられる事になります。」

私（村上義清）「それに信長って……。」

春日虎綱「はい。二度と同じ失敗をしないよう万全の態勢を整え、長政に対峙する事になります。同じ事は我らにも言える事でありますので。」

私（村上義清）「『下手な真似はするなよ。』だろ？」

春日虎綱「左様に御座います。」