旅行先で目を覚ましたら村上義清になっていた私。そんな私を支えることになったのがアンチ代表の真田幸隆だった。

第344話改姓

　村上義清が上野で終わりの見えない開発に着手した丁度その頃、奥三河の諸将が……。

私（村上義清）「奥平が怒っていると聞いたが何かあったのか？」

春日虎綱「いえ。領内に問題はありません。ただ家康の件で……。」

私（村上義清）「何だ？申してみよ。」

春日虎綱「はい。家康はこの程、三河守に叙任されました。」

　この間、家康は東三河南部に進出し吉田、田原の各拠点を攻略。残った牛久保城も城主牧野氏の権益を全て返すことと引き換えに家康陣営に引き入れる事に成功。名実共に三河の第一人者に成長したのでありました。

私（村上義清）「三河守を担保に家康が奥三河へ兵を進める事を危惧しているのか？」

春日虎綱「そうではありません。」

私（村上義清）「家康が三河守になった事が気に入らないのか？」

春日虎綱「まぁ外れているわけではありません。」

私（村上義清）「奥平に三河を統一する野心を持っているって事か？」

春日虎綱「それはありません。」

私（村上義清）「では何に拘っているのだ？」

春日虎綱「その三河守になる時に家康は細工をしまして、家康のお爺さんにあたります松平清康は自分の事を清和源氏の末裔の世良田氏を称していました。真偽の程は定かではありませんが。今回、三河守就任を目指すにあたり、その世良田氏と言う項目が引っ掛かりまして、

『世良田に三河守を与えた事は無い。』

と天皇様より却下されてしまいました。」

私（村上義清）「面倒くさいな。」

春日虎綱「そこで家康は、とある人物に相談しました。その人物の名は……。」

　近衛前久。

私（村上義清）「……あいつか……。」

春日虎綱「はい。殿からたんまり金を巻き上げ、輝虎様を散々振り回したあの方であります。ただ今回は彼の力が役に立ちました。

『清和源氏に得川と言う姓がある。この得川は源氏であると同時に、三河守に必要な藤原氏の流れも継いでいる。』

ことを発見し、そこから家康が称する世良田氏に系図を繋ぎまして今回の叙任の運びとなったそうであります。」

私（村上義清）「それが気に入らないのか？それを言うなら奥平だって村上源氏を自称しているだろうに。」

春日虎綱「まぁそうではありますが、奥平はどうも家康の祖先の本当の出自を知っていまして……。」

私（村上義清）「遊行僧だろ？」

春日虎綱「『あいつは意気投合した家を乗っ取った挙句。三河を簒奪した一族の末裔だろうに。そんな奴が清和源氏を名乗る事ですら腹立たしいのに今度は藤原を名乗るのか！』

とくだを巻いておりました。」

私（村上義清）「酔ってたの！？」

春日虎綱「酔っていた事にしてあげましょう。思うところ。いろいろあることでしょうから。」